小児は、単に大人を小さくした存在ではありません。
生まれてから、だいたい体重が25kgくらいになるまでの小児期は、成人と比較すると、体の機能にかなりの差異があります。
子どもの耳・鼻・喉の管は短かったり、耳管の傾斜がほぼ水平だったりするため、大人以上に器官同士の相互関係が深いのが特徴です。鼻水が出るから鼻だけを診るだけではなく、小児の成長を考慮した診療、小児に特有の疾患の診療が必要になります。
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- 口蓋扁桃、咽頭扁桃が大きい
- 口を開けて両側に見える口蓋扁桃は、5~7歳ごろにその肥大がピークとなり、年齢とともに縮小します。鼻の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)は、4~6歳ごろに肥大がピークとなり、12歳ごろから自然に退化していきます。
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- 耳管が未発達
- 鼻の奥と中耳をつなぐ耳管(じかん)が未発達で十分な長さがなく、また角度も水平に近く、細菌などが侵入しやすいと考えられています。このため、風邪をひいたとき、鼻や喉(のど)に病気が起こったときなどは、特に中耳炎にかかりやすいとされます。
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- 鼻が詰まりやすい
- 鼻腔が細く、粘膜が敏感なため、ちょっとした空気の乾燥、気温の変化などの刺激で鼻の粘膜が腫れ易く、また分泌物・鼻水も出易く、すぐ鼻づまりを起こしやすいです。
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- ミルクを頻回に飲む
- 赤ちゃんは2~3時間ごとにおっぱいやミルクを飲むため、ゲップのときに鼻腔の方におっぱいやミルクが流れ込むことがあります。
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- 鼻をかめない
- 3歳ぐらいまでは、上手に鼻をかむのが難しく、鼻水や鼻づまりを起こしても自分自身で取り除くことができません。
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- 感染しやすい
- 免疫機構が発達途上にあり、感染しやすいとされています。乳児などは床を這い、手に触れるものを舐めるので、注意が必要です。また、同世代の子供たちと濃厚に接触しながら長時間一緒に生活することも感染しやすくなる要因となることもあります。
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- インフルエンザの注意点
- 小児・未成年者において、インフルエンザ発症後に薬の服用の有無にかかわらず、急に走り出す「異常行動」などの精神・神経症状が発現することが知られております。これは、発熱後数日に起こりやすいとされております。このため、診断後、少なくとも2日間は小児・未成年者を就寝中も含め1人きりにさせないようにしてください。
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- 風邪
- ◆症状
こどものかぜの原因は一般的にはウイルス感染症です。ですので、治療は基本的には対症療法になりますが、それに伴う発熱や鼻水やのどの痛み、咳といった症状をお薬で抑えることは可能です。
◆検査
血液検査など
◆治療
症状、合併症に応じた対処療法となります
- 咽頭異物(魚骨異物)
- ◆症状
魚をたべたあとに骨が刺さることで、小児の場合ほとんど口蓋扁桃に刺さることが多いです。ご家庭ではお箸などで取り出せればよいですが、ご飯の丸呑みなどは奥に刺さることもあるため、行うべきではありません。改善しない場合は医療機関を受診してください。
◆検査
口や鼻から内視鏡を入れて異物を探します
◆治療
摘出術
- 小児結節
- ◆症状
声帯にできるマメのようなもので、特に小学生などの学童期に起こるものを小児結節といいます。基本的には声の使い過ぎによるものですが、生活習慣の改善が困難だったり、年齢的にも手術治療などの適応となりにくい面がありますので、経過をみることが多いです。
◆検査
内視鏡による検査 ◆治療
経過観察
- 急性中耳炎
- ◆症状
かぜにより鼻炎や上気道炎をきたした場合、それに伴い炎症が中耳に波及することで、腫れや痛み、耳だれといった症状が出ます。乳幼児のお子さんではずっと機嫌が悪かったり、耳を押さえて泣いたりすることもあります。
◆検査
細菌検査
◆治療
治療は抗生物質などのお薬の治療が中心となりますが、必要があれば鼓膜切開(鼓膜に穴をあけ、膿を吸い出してあげる治療)を行います。耳だれが続く場合には耳の中を洗浄し、耳栓をして皮膚の炎症を予防することもあります。
- 滲出性中耳炎
- ◆症状
鼓膜の向こう側(中耳)に滲出液がたまる疾患で、難聴が主な症状であり、通常は痛みなどは伴いません。
原因としては慢性的な鼻炎、アデノイドの肥大、それと何よりよくないのは鼻すすりの習慣があります。
◆検査
鼓膜の観察
聴力検査
ティンパノメトリー(鼓膜の動きを評価する検査)
◆治療
薬(抗生物質など)の内服
鼻の吸引(掃除)、鼻の吸入(ネブライザー)
耳管通気(鼻から中耳に向かって空気を通す)治療
治りにくい場合は鼓膜切開やチューブを留置(鼓膜チュービング)
- 小児の難聴
- ◆症状
小児の場合は中耳炎が原因であることが多いのですが、他の原因としては遺伝が原因でおこるものや、ストレスが原因でおこるもの、もちろん耳垢が原因ということもあります。言葉の発達に影響がでることもあります。
◆検査
聴力検査(当院では新生児より検査できる機器での検査も可能です)
ティンパノメトリー(鼓膜の動きを評価する検査)
◆治療
難聴の原因により治療法は異なります
中耳炎が原因であればお薬や外来での処置(鼓膜切開など)が中心となりますが、きこえの神経に問題がある場合は補聴器の使用や人工内耳の埋め込み手術を行う場合もあります。
- 副鼻腔炎(ちくのう症)
- ◆症状
副鼻腔に炎症がおこる状態を副鼻腔炎(ちくのう症)といいます。
症状は鼻づまり、あおばな、のどに鼻水が流れる、頬の痛み、頭痛、長く続く咳なども原因の事が多いです。
風邪の時に起こりやすく、冬に多い病気です。
◆検査
鼻の中の所見や細菌検査
顔のレントゲン撮影やCTスキャン
◆治療
抗生物質を中心としたお薬の内服
鼻の吸引(掃除)
鼻の吸入(ネブライザー)を行います。
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- アレルギー性鼻炎
- ◆症状
季節性(花粉症)と通年性(ハウスダストやダニ)のものがあります。症状としては透明の鼻水がでたり、くしゃみや鼻づまりなどがありますが、鼻のかゆみのため、鼻を上下にこすったり、それによって鼻血がでたりすることもあります。
◆検査
鼻の粘膜の所見や鼻水の検査(鼻汁抗酸菌検査)
血液検査(血中好酸球、特異的IgE抗体、血清総IgE値)
◆治療
抗原(原因物質)を避ける生活
抗アレルギー剤など服用
レーザー治療(鼻の麻酔が可能な年齢)
舌下免疫療法(体質改善治療) ※ 12歳以上
- 扁桃肥大
- ◆症状
特に口蓋扁桃が大きい状態を扁桃肥大といいます。それに伴い睡眠時無呼吸や偏食などが生じる場合は扁桃腺を摘出すべきと考えます。ただ、成長に伴い口蓋扁桃は縮小しますので、状況により手術の適応を決めることとなります。
◆検査
喉の中を見て扁桃腺の大きさを見ます
◆治療
手術(症状や段階によります)
- アデノイド
- ◆症状
扁桃腺の一つで鼻の裏側にあり、咽頭扁桃とも言われます。いびきや睡眠時無呼吸、鼻炎や中耳炎の原因になり得ますので、アデノイドの肥大に伴い症状を認める場合は手術が必要となることもあります。
◆検査
レントゲン検査
◆治療
手術(症状や段階によります)
- 慢性扁桃炎
- ◆症状
のどに扁桃組織は多数存在いたしますが、特に口蓋扁桃を中心に腫れるものを扁桃腺炎といい、それを繰り返す状態を慢性扁桃炎と言います。その頻度が高い場合は手術にて口蓋扁桃を摘出する必要があります。
◆検査
扁桃腺の観察
◆治療
手術(症状や段階によります)
- 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
- ◆症状
ムンプスウイルスによる感染症です。
発熱
耳下腺(耳の前下)や顎下腺(下あごの下)の腫れ
飲み込み時の痛み
◆検査
血液検査
◆治療
症状、合併症に応じた対処療法を行う
※潜伏期間 2週間~3週間
発症後5日後に全身の状態がよければ登校可
- インフルエンザ
- ◆症状
突然の発熱
咳
のどの痛み、頭痛、関節痛
◆検査
迅速診断キットによる検査
発症早期(約12時間以内)では偽陰性の可能性が高いので注意が必要です
◆治療
抗インフルエンザ薬の服用
潜伏期間 1~4日(平均2日)
出席停止期間 発症後5日を経過しかつ解熱した日を0日として解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで。
- 溶連菌(A郡レンサ球菌)感染
- ◆症状
溶血性連鎖球菌の感染に伴い主にのどに感染しておこる病気です
発熱(38~39℃)
のどの痛み
舌に赤いぶつぶつができる(イチゴ舌)
体や手足に小さくて赤いぶつぶつ
頭痛、腹痛、首筋のリンパの腫れ
◆検査
のどの細菌の検査
◆治療
抗生物質の服用
※休む日数など
潜伏期間 2~10日
出席停止期間 適正な抗菌剤治療開始後24時間を経て全身状態が良ければ登校可能
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- アデノウイルス感染症(咽頭結膜熱、流行性角結膜炎)
- ◆症状
咽頭結膜熱(プール熱) 急な発熱、食欲不振、全身の倦怠感、咽頭炎、結膜炎
プールの水を介して発症するのでプール熱とも呼ばれています。
流行性角結膜炎(はやり目) 目やに、充血、腫れ、痛み
◆検査
のどの粘膜の検査
便検査
◆治療
現在有効なウイルス薬はなく、対処療法が中心です。
※休む日数など
咽頭結膜熱 潜伏期間2~14日 出席停止期間 主要症状が消失した後、2日を経過するまで
流行性角結膜炎 潜伏期間 8~14日 出席停止期間 学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで
- 手足口病
- ◆症状
夏から秋に流行するウイルス感染症です
ぶつぶつや小さい水ぶくれができる
部位:手のひら・足の裏・おしり・ひざ裏・足の付け根・口の中・喉
胃腸症状(嘔吐・下痢)
発熱(発熱しない事もある)
◆検査
症状による(ぶつぶつの状態など)診断
◆治療
症状に応じた対処療法を行う
※休む日数など
潜伏期間 3~6日
出席停止期間
発熱や咽頭・口腔の水泡・潰瘍を伴う急性期は出席停止、治癒期は全身状態が改善すれば登校可
- ヘルパンギーナ
- ◆症状
夏から秋に流行するウイルス感染症です
突然の高熱(39~40℃)
口の中、喉の奥に水泡(ぶつぶつ)ができる
喉の痛みのため唾が飲み込めない、よだれがくなる
◆検査
症状による(ぶつぶつの状態など)診断
◆治療
症状に応じた対処療法を行う
※休む日数など
潜伏期間
3~6日
出席停止期間
発熱や咽頭・口腔の水泡・潰瘍を伴う急性期は出席停止、治癒期は全身状態が改善すれば登校可