ある日突然、耳に違和感をおぼえたら誰しも驚き、どうしたのだろうと疑問を持つでしょう。
しかし、耳の閉そく感がそれほど気にならなかったり、痛みや痒みなどが伴わなかったりしたら「耳の調子が悪いな」とそのままにしておく方もいるかもしれません。
でも、もしかしたらそれは突発性難聴で、気づいたら取り返しのつかないことになってしまう可能性があります。
この記事では早期発見・治療が重要な突発性難聴の症状や治療法を解説します。
耳に違和感がある方は、今後の聴力に関わる病気の可能性があるので、早めに耳鼻科へ受診しましょう。
目次
突発性難聴とは
突発性難聴とは、病気ではなく症候群の1つです。
突然発症する難聴のうち、原因不明で感音性難聴が疑われるものを突発性難聴といいます。
突然発症する難聴でも原因が明らかなものは、突発性難聴とは言いません。
感音性難聴とは、耳に集められた音を脳で認識するまでの機能になんらかの問題が生じる難聴です。
感音性難聴は内耳や聴神経、大脳の異常で起こりやすいといわれています。
突発性難聴は幅広い年代で発症しますが、患者さんの多くは30歳から60歳代の方でとくに50歳代に多く見られます。
男女差や左右差はありません。
突発性難聴の症状
突発性難聴の主な症状は片耳に起こる難聴です。
前触れもなく突然、音が聞こえにくくなるため、患者さんの中には発症した日時をはっきりと覚えている方もいます。
また難聴だけでなく、耳鳴りや耳の閉塞、めまいの症状が出ることもあります。
- 耳が突然聞こえにくくなる
- 耳閉感(耳が詰まった感じ)がする
- 音が二重に聞こえる、響く、エコーがかかる
- 耳鳴りが止まない
- めまいや吐き気が起こる
聞こえづらさを感じたらすぐに病院受診
突発性難聴は、発症から治療までの期間が長いと聴力が元に戻りにくくなるため注意が必要です。
聞こえづらさを感じてそのままにしてしまうと、約1か月で聴力が固定されてしまい回復が望めなくなります。
突然片耳が聞こえづらくなったり、耳鳴りやめまいを伴うようになったりしたら、すぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
早期受診・治療をすることで、元の聴力に戻る可能性が高まります。
突発性難聴の原因
突発性難聴は内耳の異常で起こっていることはわかっていますが、原因や発症のメカニズムははっきりとわかっていません。
今のところ、蝸牛の循環障害またはウイルス性内耳炎が突発性難聴の原因ではないかと考えられています。
まず蝸牛の循環障害について詳しく見てみましょう。
蝸牛には音を感じ取る感覚細胞や聴神経があります。
そして蝸牛の内壁には、感覚細胞や聴神経が正常に機能できるよう酸素を供給する毛細血管が集まっています。
この毛細血管の血液循環が血栓や塞栓などにより滞ってしまい、感覚細胞や聴神経に十分な酸素が供給されなくなると、突発性難聴が発症してしまうのではないかと考えられています。
次にウイルス性内耳炎について詳しく見ていきましょう。
内耳にある聴神経は、音を感じ取る重要な器官の1つです。
免疫力の低下により、外部から侵入したウイルスまたは体内に潜伏していたウイルスが聴神経に炎症を引き起こすと、突発性難聴が発生してしまうと考えられています。
実際に、突発性難聴の一部はおたふくかぜの副作用として発症しているという報告もでています。
しかしながら、これまで紹介した突発性難聴の原因はあくまでも仮説でまだ明らかとなっていません。
突発性難聴の治療
突発性難聴は発症後1週間以内の治療が望ましいとされています。
なぜなら、突発性難聴は発症後から治療までの期間が長引けば長引くほど、治療後の聴力回復が望めないからです。
突発性難聴の検査
突発性難聴が疑われた際には、まず問診や検査を行い診断を確定します。
問診では症状を詳しく聞かれるのはもちろんのこと、生活スタイルやストレスの有無、糖尿病や生活習慣病の既往歴を確認されます。
突発性難聴の検査は次の通りです。
- 純音聴力検査
- 平衡機能検査
- MRI検査
突発性難聴は、めまいや耳鳴などメニエール病の発作と症状が似ているため、区別しにくいとされています。
しかしながら、突発性難聴は1回きりでメニエールの発作のように治ったり、発症したりを繰り返さないという特徴があるため、検査や問診の結果により診断されます。
ただ、急性期には厳密な診断より早期に治療を開始することが重要と思われます。
まれに聴神経腫瘍といった、頭蓋内の異常が原因となることがあるため、MRIによる検査をおこなっておいてもよいでしょう。
突発性難聴の治療方法
突発性難聴の主な治療方法は薬物療法です。
突発性難聴では主に以下の薬を点滴または服用します。
- 副腎皮質ステロイド
- 循環改善薬
- 末梢神経循環改善薬/li>
その他ビタミンB12製剤や代謝促進薬が使われることもあります。
治療期間は、1~2週間です。多くの場合、1週間程度で効果が現れます。
通院でも治療可能ですが、薬物の副作用への対応や治療期間中の安静を保つために入院治療をすすめられることもあります。
通院治療であっても、治療期間中はできるだけ安静にし、ストレスや疲労を溜めないようにしましょう。
突発性難聴の予後
突発性難聴を発症した人の約30%は治療により完全治癒します。
約30%は完全ではないものの、生活に支障が出ないくらい聴力が改善すると言われています。
しかしながら、残りの約30%は治療しても改善が見られず、難聴や耳鳴りなどの症状が残るとされています。
なお突発性難聴の症状が改善されない場合は、日常生活に支障がないよう補聴器などで聴力のサポートや耳鳴りの改善を行います。

突発性難聴になりやすい人は?
突発性難聴の原因は明らかになっていませんが、過去の発症者の年齢や持っている疾患からなりやすい人には次の特徴があるので確認しておきましょう。
- 30歳~60歳代である
- ストレスや過労
- 睡眠不足
- 糖尿病を患っている
- 生活習慣病または生活習慣病予備軍の人
精神的なストレスや肉体的な疲労を感じている方や糖尿病の方は、血液循環が滞りやすい傾向があります。
その結果、蝸牛への酸素供給が少なくなるため、突発性難聴が発症しやすくなるのです。
また過労やストレスは免疫力も低下も招くため、ウイルス性内耳炎が発症し、突発性難聴になるリスクも高まるため注意が必要です。
突発性難聴にならないためにやるべきこと
おたふくかぜや感染症の罹患による免疫力低下は避けられません。
しかしながら、ストレスや過労、睡眠不足は生活習慣の改善により回避することが可能です。
30歳~60歳代は、働き盛りで体力もあるため、プライベートも仕事もつい無理をしがちです。
また、食生活も疎かになり外食やコンビニなどで済ませてしまう人も少なくないでしょう。
規則正しい生活とこまめな休養を意識することが、突発性難聴の発症リスクを減らします。
まとめ
突発性難聴は、突然起こる原因不明の感音性難聴の総称です。
突発性難聴の耳の聞こえの程度や症状は個人差が大きいため、症状の軽い方は違和感があっても病院受診せず、そのままにしてしまうかもしれません。
しかしながら、突発性難聴は早期治療で予後が大きく変わるため、耳の違和感がある方はすぐに病院受診をしましょう。
- 突発性難聴は発症後早期に治療を行う必要がある
- 突発性難聴の原因やメカニズムははっきりしていない
- ストレスや糖尿病などを抱えている人は突発性難聴のリスクが高い
病院受診で突発性難聴だと診断されなくても、耳の違和感から別の病気がわかることも少なくありません。
「耳の違和感があるくらいで大げさな…」と考えず、なるべく早く耳鼻科を受診することをおすすめします。
