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みみ

外リンパ瘻(ろう)とは?発症のきっかけや放置のリスクを解説

外リンパ瘻(ろう)は、メニエール病や突発性難聴と比較すると世間ではあまり病名が知られていない内耳の病気の1つです。

しかしながら、外リンパろうは日常生活の何気ない動作や思いがけないことで発症するため、耳鼻咽喉科ではありふれた病気の1つとなっています。

この記事では誰でも発症しうる可能性がある外リンパろうの症状や原因、検査方法や治療方法を解説します。

外リンパろうの症状は人によって程度が異なり、さらに他の内耳疾患と共通する症状もあるため、誤診されやすい病気です。

めまいや耳鳴りの症状でお悩みの方は、外リンパろうの可能性もあるので、この記事を読んで耳鼻咽喉科に相談してみましょう。

外リンパ瘻(ろう)とは

外リンパ瘻(ろう)とは、耳の奥である内耳の一部がなんらかの原因で損傷し、リンパ液が漏れ出してしまう病気です。

まず外リンパろうがどのような病気か理解するためにも、内耳の仕組みを見てみましょう。

内耳の仕組み

内耳のしくみ

耳には外耳・中耳・内耳という3つの部位があります。

外耳は外からの音を集め、中耳は音を増幅し振動エネルギーに変える働きをします。

そして、耳の一番奥にある内耳は、振動エネルギーとして伝わった音を電気信号に変換し、脳に伝える大事な器官です。

内耳の外側は外リンパ液、内側は内リンパ液で満たされています。

外から入ってきた音の振動が内耳に伝わると、リンパ液に波が生じます。

リンパ液に波が生じると、内耳にある蝸牛によって波が電気信号に変換され、脳に伝達され、私たちは音を認識できるのです。

また内耳には身体の平衡感覚を司る働きもあります。

内耳が身体の平衡感覚を保つメカニズム
  1. 身体が動く
  2. 内耳のリンパ液が揺れる
  3. リンパ液の揺れを三半規管・耳石器が受け取る
  4. 三半規管・耳石器の中にある有毛細胞が揺れ(身体の傾き)を感知し脳の中枢に伝わる

内耳が正常に動くことにより、私たちは音を聞き分けたり、身体の平衡感覚を保てたりすることができます。

外リンパろうを発症しやすい部位

通常、内耳は硬い骨に覆われており、多少の振動や圧がかかってもリンパ液が漏れることはありません。

しかしながら、内耳には圧力や衝撃に弱い箇所が主に2か所あります。

外リンパろうを発症しやすい主な部位
  • アブミ骨
    アブミ骨は中耳と内耳をつなぐ骨です。鼓膜でとらえた音の振動を増幅して内耳に伝える役割をしています。アブミ骨は内耳の薄い膜(卵円窓)にふたのように張り付いています。内側から圧力がかかると、卵円窓が破れ、アブミ骨の隙間から外リンパ液が漏れ出すことがあります。
  • 正円窓
    正円窓とは、リンパ液で満たされた蝸牛と中耳の間にある膜に覆われた小さな開口部です。リンパ液が振動しやすいよう、骨ではなく薄い膜で覆われています。内側または外側から強い圧力がかかると、膜が割けたり破れたりしてリンパ液が漏れ出します。

これら2か所やfissula ante fenestram(FAF)といった場所から外リンパ液が内耳から中耳に漏れ出すことで、めまいや難聴、耳鳴り、耳閉感などの症状があらわれるのです。

fissula ante fenestram(FAF)とは、中耳にあるアブミ骨と内耳にある前庭が接する場所にある軟骨のことを指します。

外リンパろうの症状

外リンパろうの症状はリンパ液の漏れ出す程度により、音の振動が伝わりにくくなったり、身体のバランス感覚が保ちにくくなったりします。

外リンパろうの主な症状
  • 難聴:進行性難聴・変動性難聴
  • めまい
  • 水の流れるような耳鳴り
  • 発症時のパチッという破裂音(POP音)
  • 頭痛

外リンパろうは、他の内耳の病気と共通している症状が多いため、自覚症状だけの診断が難しいのが特徴です。

また、これらの症状は常にあらわれるものではなく、良くなったり悪くなったりします。

さらに外リンパろうの症状は人によって大きく異なり、ひどいめまいや耳鳴り、難聴を伴う人もいれば、まったく自覚症状がない人もいるのです。

そのため、外リンパろうであっても「大したことない」と、そのまま放置してしまうことも少なくありません。

外リンパろうは悪化してしまうと、治療しても耳鳴り・難聴・めまいが後遺症として残ることがあります。

日常生活に支障がでてしまうため、早期発見・治療が重要です。

外リンパろうの耳鳴りの特徴

外リンパろうの耳鳴りは、内耳の疾患でよくある耳鳴り(キーン、ジーン、ザーなど)とは異なります。

「シャー・サー」といったような水の流れるような音や「ゴポゴポ・プツプツ」など水中で聞こえるような音の耳鳴りがあらわれるのが特徴です。

外リンパろうの検査・診断基準

まずは、問診を行い外リンパろうのような症状や発症を疑うエピソードを患者から聞き取ります。

そして、外リンパろうが疑われる場合は補助的診断として、聴力検査・平衡機能検査による瘻孔(ろうこう)現象の有無の確認を行います。

瘻孔現象とは、耳の入口を指で圧迫したり離したりするなど外耳道を加圧・減圧したときに起こるめまいのことです。

内耳または中耳に瘻孔があると瘻孔現象が生じます。

実際の診察では、ポリッツエル球と呼ばれる器具で耳に空気を送り、めまいや眼振が起こるかを確認します。

上記の検査から外リンパろうの可能性が高いと判断されたら、確定診断としてcochlin-tomoprotein(CTP)検査がおこなわれます。

CTPとは外リンパに特異的に存在するタンパク質のことです。

鼓膜を切開し、中耳に生理食塩水を入れて洗浄。洗浄後に耳から排出した水にCTPが含まれているかどうかで、外リンパろうを診断します。

また顕微鏡や内視鏡検査で内耳と中耳をつなぐ管状に、キズや穴(瘻孔)があるのを確認することで診断することもあります。

その他、以下の検査がおこなわれることもあります。

  • CTスキャン
  • 仰臥位聴力検査

外リンパろう発症の原因

内耳の器官を満たすリンパ液が中耳に漏れ出すことは、重大なトラブルであり、そう起こるものではないと思われがちです。

しかしながら外リンパろうは、日常生活のちょっとした衝撃や外傷、何気ない動作で発症することもあります。

耳の病気や怪我から発症

耳かきによる耳小骨外傷や真珠腫性中耳炎、手術による侵襲など耳の病気や怪我が原因で発症することがあります。

外から圧力がかかって発症

外からの圧力が原因で瘻孔ができ、発症することがあります。

  • 交通事故や転倒による頭部外傷
  • 耳付近への平手打ち
  • 飛行機の離着陸
  • 水中ダイビングの耳抜き
  • プールの飛び込みなど

体内から圧力がかかって発症

脳脊髄圧の上昇により外リンパ液の漏出が起こることも珍しくありません。

  • くしゃみや咳
  • 鼻を強くかみすぎる
  • 出産時の力み
  • 吹奏楽の楽器演奏
  • 重たい荷物を持ちあげたりするなど

なお脳脊髄圧の上昇による外リンパ液の漏出は、特発性外リンパと呼ばれます。

これら以外にも、先天性の耳の奇形や明らかな原因がわからずに外リンパろうを発症することもあります。

外リンパろうの治療

外リンパろうの治療法は保存的治療と手術的治療の2種類が一般的です。

保存的治療

外リンパ液の漏れは、軽度なものだと自然にふさがることもあります。

保存的治療では、まず安静を心がけ、脳脊髄圧が上昇しないよう鼻かみや怒責を禁止し、経過観察をおこないます。

めまいがひどい場合には抗めまい薬が処方されるときもあるでしょう。

難聴の症状がある場合は、リンパ液が漏れださないよう脳脊髄圧を下げる目的で頭を30°挙げた状態で、安静を保ちながらステロイド薬を使用し、治療をおこないます。

手術治療

約1週間程度保存的治療をおこなっても改善が見られず、めまい症状が悪化したり急激な難聴の進行が見られたりした場合は、手術が検討されます。

外リンパろうでは、内耳窓閉鎖術という手術がおこなわれるのが一般的です。

外リンパ液が漏れ出している可能性があるアブミ骨や正円窓を確認し、破れや割けのある箇所を閉鎖して液漏れを塞ぎます。

手術に要する時間はおよそ1.5~2時間で、入院でおこなうのが一般的です。

手術後は2週間程度で元の生活に戻れますが、飛行機の搭乗やダイビング、重い荷物を持つ作業など脳脊髄圧を上昇するような行動は2~3ヵ月間控える必要があります。

外リンパろうのよくある質問

外リンパろうのよくある質問とその回答をご紹介します。

外リンパろうになりやすい人の特徴は?

外リンパろうを発症しやすい年齢や性別はありません。

老若男女だれでも発症することがあるので注意が必要です。

ただ、水中ダイビングや飛行機での移動など、気圧変化が圧力起こる環境下にいると外リンパろうの発症リスクが高まります。

外リンパろうは再発する?

外リンパろうは、手術で外リンパ液の漏れを塞いでも再発する可能性があります。

再発ではなく手術後もめまいやふらつき、難聴の症状が後遺症として残る場合もあります。

また治療までの経過が長いと聴力改善の可能性が低下するので注意が必要です。

まとめ

外リンパろうの症状は他の内耳疾患と共通しているため、誤診されやすい病気です。

しかし、外リンパ液が漏れ出す前の破裂音(POP音)や水の流れるような耳鳴りは外リンパろう特有の症状なので、これらの自覚症状がある場合は耳鼻咽喉科の受診時に医師に申告しましょう。

また、外リンパろう特有の症状が出現する前には、何らかのきっかけを認めることも多いため、問診では病歴を詳しく記憶し説明することも重要です。

まとめ
  • 外リンパろうは内耳の外リンパ液が中耳に漏れ出す病気
  • 外リンパろうの症状は人によって異なるため誤診されやすい
  • 外リンパろうは放置すると後遺症が残る場合がある

外リンパろうは世間であまり知られていない病気ですが、日常生活の何気ない動作や思いがけない事故で発症することがあります。

そのため、誰でもなる可能性のある病気です。

長引くめまいや耳鳴り、難聴は外リンパろうの可能性があるため、耳鼻咽喉科へ受診した方も再診を検討してみましょう。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師