花粉は春だけでなく、1年を通して飛散しアレルギー症状を発症させます。
とくに秋は私たちの生活圏に生息する、身近な植物の花粉が飛散する時季なので注意が必要です。
この記事では秋の花粉症の症状や原因、春の花粉症の違いから対処法までわかりやすく解説します。
秋に目のかゆみや鼻水、咳などの症状が出やすい方は、記事をご覧になり耳鼻咽喉科へ早めに受診しましょう。
目次
秋の花粉症とは?
花粉症と聞くと、冬から春にかけて発症するスギ花粉症をイメージしがちです。
でも実は、日本で確認されている花粉症は約50種類もあり、その中には夏から秋にかけて発症するものもあります。
ここからは、秋に発症する花粉症の原因植物や症状、発症時期について見ていきます。
秋の花粉症の原因
環境省が2022年3月に改訂し公開した、【花粉症環境保健マニュアル】によると、2019年のスギ花粉以外の花粉症の有病率は約25%と報告されています。
また、スギ花粉以外の花粉症の有病率は年々増えておりその中でも、次の植物の花粉症が著しく増加しています。
- ブタクサ
- イネ科
- ヨモギ
- カナムグラ
秋の花粉症の原因となるこれらの植物の花粉は遠くまで飛ぶことはありません。
飛散範囲は広くても数十メートル、最大200kmまで飛散するスギ花粉と比べて狭いのが特徴です。
しかしながら、秋の花粉症の原因となる植物は歩道の端や空地、草地、河川敷など身近な場所に広く分布しています。
また、いずれも繁殖力が強く雑草駆除をしてもすぐに生えてきてしまうため、地域によっては避けるのが難しいところもあるかもしれません。
秋の花粉症の症状
秋の花粉症の症状は、春のスギ花粉症の症状とほぼ同じです。
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻づまり
- 目のかゆみ・充血
- 頭痛
ただブタクサやイネ科の花粉は、スギ花粉のサイズよりも小さい特徴があります。
そのため花粉が鼻の粘膜を通り過ぎ、気管支にまで入り込み喘息のような咳が出ることもあります。
元々喘息を持っている方は、症状が悪化する恐れがあるため注意が必要です。
またブタクサ・ヨモギ花粉症の方の中には、ウリ科の食物を喫食したときに口腔アレルギー症候群を発症することがあります。
メロン・スイカ・セロリなどウリ科の植物を口にしたときに、食物アレルギーのような症状が出たら、すみやかに耳鼻咽喉科の受診をうけましょう。
また、ヨモギ花粉症の既往歴がある人はニンジンでも口腔アレルギー症候群の発症事例があるため注意が必要です。
口腔アレルギー症候群については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
秋の花粉症はいつからいつまで?
花粉症の主な原因植物の花粉飛散時季は次の通りです。
原因植物 | 花粉飛散時季 |
---|---|
ブタクサ | 8月から飛散し9月にピーク、11月まで。 |
イネ科 | 4月下旬から飛散、初夏と秋に飛散ピークを迎え10月まで。 |
ヨモギ | 8月から飛散し9月にピーク、10月まで。 |
カナムグラ | 8月から飛散し9月にピーク、11月まで。 |
イネ科の植物の花粉は、ピークは初夏から秋と共通していますが、地域によってほぼ1年中飛散しています。
そのため、イネ科の花粉症の患者さんは、花粉飛散のピークを過ぎても症状が続くことも珍しくありません。
それぞれの花粉飛散ピーク時期を知っておくと、日常生活でこれら植物を避けるなどの対応ができ、花粉症状とうまく付き合いながら生活できるでしょう。
秋の花粉症と春の花粉症の違い
秋の花粉症と春の花粉症の基本的な症状や発症のメカニズムは同じですが、発症原因となる植物が異なるため、次のような違いがあります。
春の花粉症 | 秋の花粉症 | |
---|---|---|
花粉のサイズ | 粒子が大きく鼻粘膜に付きやすい | 粒子が小さいので気管に入り込みやすい |
花粉の飛散 | 数10km~200km | 数10m |
症状 | くしゃみや鼻水などの鼻を中心とした症状 | 咳や喉の痛みなどの喉や気管を中心とした症状 |
2つの花粉症の大きな違いは、原因となる花粉のサイズと飛散範囲です。
秋の花粉症の場合、花粉の飛散範囲が狭く量も少ないため春の花粉症に比べて症状が軽い傾向があります。
ただ秋花粉症の場合、喉の痛みや咳など風邪とよく似た症状があらわれるため、夏風邪だと勘違いしてそのまま放置してしまいがちです。
夏から秋にかけての長引く咳や喉の痛みは、風邪ではなく秋の花粉症の疑いがあるため、早めに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
秋の花粉症の治療法
秋の花粉症の主な治療法は、春の花粉症の治療と同じく症状を抑える薬物療法が中心です。
花粉症の詳しい治療法は以下の記事をごらんください。
秋の花粉症の薬物療法は病院で処方された薬でおこなわれます。
忙しいとつい市販薬に頼ってしまいがちですが、市販薬はあくまでも一時的な症状の緩和にしかなりません。
市販薬を常用してしまうと、症状が長引いたり別の症状を引き起こしたりする恐れもあります。
秋にアレルギー症状がみられたら、市販薬に頼らず耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
また秋の花粉症はスギ花粉ではないので、免疫舌下療法はできません。
秋は花粉症だけでない!気を付けたいハウスダスト
秋は花粉症だけでなく、ハウスダストによるアレルギー症状も増えるので注意が必要です。
ハウスダストとは家の中のほこりやチリ、ダニ(死骸も含む)、ペットの毛など1mm以下の目に見えにくいものを指します。
ハウスダストの1つであるダニは、梅雨から夏にかけて繁殖し気温が下がる秋になると死滅します。
そのダニの死骸が空気の流れや風により舞い上がり、鼻や気管支に入り込アレルギー症状を引き起こすのです。
ハウスダストによるアレルギー症状の特徴は、秋の花粉と同じく鼻水や目のかゆみとともに咳が出やすくなります。
さらにハウスダストの場合、治療せずそのままにしてしまうと気管支炎が悪化し喘息を引き起こすリスクが高まります。
ハウスダストと秋の花粉症の症状は似ており、どちらを発症しているのかは素人ではわかりません。
夏から秋にかけて、長引く咳症状があらわれたら早めに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
日常生活で気を付けるべき秋の花粉症対策
日常生活で気を付けるべき秋の花粉症対策にはどのようなものがあるのでしょうか。
春の花粉症対策との違いを比較しながら見ていきましょう。
原因植物に近づかない
飛散範囲が最大200キロメートルと広い春のスギ花粉と異なり、秋の花粉症の原因植物は花粉の飛散範囲が数十メートルと狭いのが特徴です。
秋の花粉症の原因となる植物に近づかないだけでも、花粉症の症状が和らぎます。
秋の花粉症の原因植物は、空地や川辺、土手などに生息する雑草がほとんどです。
夏から秋にかけてはこれらの場所に近寄らないようにしましょう。
ただ地域によっては、原因植物が広く生息しており花粉が避けられないこともあります。
そのときは春の花粉症と同じように、マスクや眼鏡を着用し花粉が鼻や口、目に入らないようにしましょう。
部屋の掃除をこまめにする
秋の花粉症の原因植物は、花粉の飛散範囲が狭いものの、衣類や持ち物に付着してしまうのは避けられません。
家に入る前に花粉を落とすのはもちろんのこと、風乗って家の中に入り込んだ花粉を除去するためにも部屋の掃除をこまめにしましょう。
部屋の掃除は、ハウスダストのアレルギー予防にも効果が期待できます。
洗濯物は室内に干す
秋の花粉症の原因となる植物は、身近な場所に生えているため外に洗濯物を干すと、風に乗って飛んできた花粉が洗濯物についてしまうこともあります。
花粉を家の中に持ち込まないよう、原因植物の花粉飛散の時季は洗濯物を室内で干すようにしましょう。
まとめ
秋の花粉は春のスギ花粉に比べて、飛散距離も短く量も少ないため、症状はそれほど重くなりません。
しかしながら、秋の花粉症の原因植物の花粉はサイズが小さいため、気管支まで入り込みます。
その結果、咳や喉の痛みを引き起こすので、喘息持ちの方は注意が必要です。
- 秋の花粉症の原因植物は私たちの生活圏内に生息している
- 秋はハウスダストによるアレルギー症状も発症しやすい
- 秋の花粉症は原因植物に近づかないだけでも症状緩和に効果あり
秋は花粉症だけでなく、ハウスダストによるアレルギー症状も発症しやすくなります。
また日中と夜の寒暖差によって風邪を引きやすくなる時季でもあります。
これら花粉症やハウスダストによるアレルギー症状や風邪は症状が似ているため、自分がどの疾病にかかっているかは判断できません。
秋に鼻水や咳などの症状が出たら、早めに病院受診しどの疾病にかかっているのか、診断してもらうのがおすすめです
早期発見・治療で秋のアレルギー症状を乗り切り、行楽シーズンを楽しみましょう。