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鼻骨骨折とは?治療法や放置するリスクを解説

子どもは遊びやスポーツの思わぬ事故で、鼻や顔面を強く打ちつけてしまうことがあります。

このようなとき、子どもがひどく痛がっていなくても「鼻骨骨折」の可能性を疑うことが大事です。

小児の鼻骨骨折は、早期治療しないと鼻が変形したり、呼吸器に影響が出たりする可能性が高まります。

今回は鼻骨骨折とは何か、治療法や放置するリスクについてわかりやすく解説します。

鼻骨骨折とは?

鼻骨骨折は、顔面骨折の中で最も多い骨折です。

鼻は、額に近い前頭骨鼻骨から始まり、前下方向に向かって屋根のように形作られています。

鼻骨の構成

頭蓋骨の穴の空いている部分は、軟骨部分です。

額に近い鼻骨の根本は固く骨折することは稀ですが、屋根のようになっている部分の骨は薄いため、転倒や衝撃で折れてしまいます。

鼻骨骨折では、この屋根の部分を整復するために治療を行います。

しかし骨折してから2週間以上経つと、折れたままの骨同士がくっつき始めて固まってしまい整復が難しくなるため注意が必要です。

また鼻骨骨折だけでなく顔面外傷を伴うことも少なくありません。

病院受診したときには、鼻だけでなくその他の顔面外傷についても診てもらうようにしましょう。

鼻骨骨折の主な原因

鼻骨は額から離れていくうちに徐々に薄くなるため、外力が加わると簡単に折れてしまいます。

そのため、鼻骨骨折の原因はさまざまですが、大人と小児では原因が異なるため確認しておきましょう。

▼小児の鼻骨骨折の原因
原因 具体例
転倒・転落 乳幼児や小さな子どもの場合、歩き始めたばかりで転びやすかったり、遊具から落ちたりする
スポーツ外傷 年齢が上がるにつれて、スポーツ中の事故が増えてくる。
ケンカ 小学校高学年から中学生くらいになると、男児は友達同士のケンカで鼻を打つ
▼大人の鼻骨骨折の原因
原因 具体例
交通事故 車だけでなく自転車や歩行中の事故も含まれる
飲酒後の事故 お酒に酔って転倒したり、何かにぶつかることで骨折
転倒 とくに高齢者の場合、バランスを崩しやすいため注意が必要
スポーツ外傷 ボクシングや野球中の事故

小児の鼻骨骨折は、年齢に応じた注意が必要です。

小さな子どもは転倒や転落に注意し、小学生以降はスポーツ時の安全対策を心がけるようにするとよいでしょう。

しかし、どんなに日常生活で気を付けても鼻を打つことがあります。

鼻を強く打った場合は、すぐに病院へ行き診てもらいましょう。

鼻骨骨折は早期に適切な治療を受ければ、変形などの後遺症なく戻ります。

鼻骨骨折の症状

鼻骨骨折が起きると、次のような症状が現れます。我が子が鼻や顔面を強く打ったときに冷静に対処できるよう、確認しておきましょう。

鼻出血

鼻骨骨折すると多くの場合、鼻血が出ます。

転倒や衝突により鼻骨が折れると、鼻の内側を覆う鼻粘膜が破れてしまうためです。

鼻粘膜には多くの毛細血管が通っており、破れると出血します。

鼻血の程度は、軽度から重度までさまざまで、骨折の状態や受けた衝撃によって異なります。

また鼻や顔面に強い衝撃を受けた場合、鼻骨骨折だけでなく頭蓋骨骨折や顔面骨骨折、出血を伴う可能性があるため注意が必要です。

顔面骨骨折を認める場合、頬部がへこんだり、肉眼的変化を伴う場合があります。

頭蓋骨骨折をすると、記憶障害や鼻血だけでなくさらさらとした鼻水のような脳髄液が鼻から出てくることがあります。

衝撃を受けた直後は大したことがなくても、後から意識障害など重篤な症状になる可能性があるため、すぐに病院受診しましょう。

骨折した部分の腫れや痛み

鼻骨骨折をすると、折れた部分に腫れや痛みの症状が出ます。

鼻骨骨折により周囲の組織が損傷を受けると、損傷部分を修復しようと免疫系が活発化され炎症するためです。

腫れは通常、骨折後3~5日間続きます。

また鼻粘膜は痛みに敏感なため、折れた部分を触ると強い痛みを生じます。

鼻骨骨折が疑われるときの応急処置方法

鼻や顏に強い衝撃を受けたときは、すぐに病院受診するのがベストですが、適切な応急処置をしておけば病院でスムーズに受診・治療ができます。

鼻骨骨折が疑われたら、以下の順序で処置をしましょう。

鼻骨骨折が疑われるときの応急処置の手順
  1. 鼻出血の確認と止血
  2. 腫れと痛みの対処法
  3. 医療機関への受診

それぞれ詳しく見ていきましょう。

鼻出血の確認と止血

鼻骨骨折をすると多くの場合、鼻血が出ます。

衝突や転倒によっては、鼻血が多量に出てくることもありますがまずは落ち着いて鼻血を確認しましょう。

このとき、鼻血がさらさらとした水様液に混ざっている場合は、頭蓋底骨折の可能性があるため大変危険です。

この場合は止血作業をせず、そのままにしてすぐに救急車を呼びましょう。

通常の鼻血と同じ場合は、座った状態で少し前かがみになり、血液がのどに流れ込まないようにします。

そこで小鼻をつまんで圧迫するのですが、鼻骨骨折の場合、強く押さえすぎると痛みや変形を悪化させる恐れがあります。

適度な力で圧迫して止血を試みましょう。

また鼻血が止まらないからといって、脱脂綿やガーゼを鼻に詰めるのはNGです。

鼻腔内に脱脂綿やガーゼを詰めると、骨折部分や損傷した鼻粘膜を傷つける可能性があります。

また頭蓋底骨折が疑われる場合、脱脂綿やガーゼの使用により感染リスクが高まるため注意が必要です。

腫れや痛みを軽減

鼻骨骨折すると、骨折部やその周りに腫れや痛みが生じます。

腫れや痛みを緩和させる方法として、有効なのが冷却療法です。

氷嚢や冷やしたタオルを用意し、次の手順で行いましょう。

  • 2時間ごと15分間患部を冷やすことを約2日間継続
  • 冷却時は氷嚢が直接肌に触れないよう、布やタオルで包んだ状態で行う

病院受診がすぐできず、痛みが我慢できないときは、市販の鎮痛薬を服薬するのも1つの方法です。

病院受診

鼻骨骨折が疑われたら、止血や冷却をしながら早めに病院受診しましょう。

これらの処置の間に、意識喪失や記憶障害が見られたり、鼻血だけでなく鼻水のようなさらさらの液が出てきた場合、脳に影響が出ている可能性があります。

この場合、医師に鼻血の様子や記憶障害の症状を伝え、耳鼻咽喉科だけでなく、脳神経外科の受診も医師に依頼しましょう。

鼻骨骨折の治療法

鼻骨骨折の治療は、すぐに行わず骨折の腫れが引く3~5日後に行うのが一般的です。

鼻の状態を確認し、外観や機能に問題がある場合は、鼻の形を元に戻す整復術を行います。

小児の場合は、骨の修復が早いため1週間以内に施術を行う必要があります。

整復術の手順は次の通りです。

鼻骨骨折時の整復術の手順
  1. CT検査を実施し整復術の適否や骨折の様子を確認
  2. 麻酔薬を染み込ませたガーゼを鼻腔内に挿入し鼻の中に局所麻酔をかける
  3. 専用の器具で折れた骨を持ち上げて正しい位置に戻す
  4. 鼻の中にガーゼを詰めて外側にプレートをあてて固定

局所麻酔の場合、鼻の粘膜に麻酔薬が触れるため強い痛みを生じることがあります。

また局所麻酔はしているものの、施術中も鼻に違和感や痛みが出ることも。

小児は痛みに敏感なため、局所麻酔ではなく全身麻酔で整復術を実施します。

一方、鼻骨骨折でも、鼻の外観や機能に問題がなければ整復術を実施せず、そのまま様子を見ることもあります。

鼻骨骨折を放置したときのリスク

鼻や顔面を強く打っても、患者さん自身が痛みに強かったり、鼻の変形が外観からわかりにくかったりすると、鼻骨骨折であっても放置されてしまうことがあります。

軽度の鼻骨骨折であれば、問題ないこともありますが次のようなリスクが高まるため、鼻や顔面を強く打ったら念のため病院受診しましょう。

変形が残る

鼻骨骨折は適切な治療を早く受ければ、鼻の形・機能ともに元に戻ります。

しかし、鼻骨骨折から2週間以上経った場合、変形が残ったり鼻の機能に問題が生じたりする可能性が高くなるため注意が必要です。

骨折から2週間以上経つと、折れたままの骨や組織が癒着してしまい、固まってしまうためです。

また局所麻酔で戻そうとしても、痛みが強く全身麻酔での整復術になります。

さらに1カ月以上経った鼻骨骨折では、変形した骨を切り出して手術する必要が出てくるため、術後の痛みや治療が長引きます。

鼻の機能障害・呼吸への影響

鼻骨骨折すると、臭いを感知する部分が閉鎖されて臭いの分子が嗅細胞に到達できなくなることがあります。

鼻骨骨折で臭いを感知する部分が閉鎖されたまま、骨が固まると臭いを感知する機能が衰えてしまうためです。

そのため、施術により鼻の変形が元に戻ったとしても、衰えた嗅覚機能が戻らない可能性があります。

また鼻骨骨折を放置して 鼻が変形したままでいると、空気の通り道が狭くなったり塞がれたりするため呼吸機能が低下する恐れがあります。

その結果、脳に酸素が行き渡りにくくなり、集中力低下や運動障害など全身症状が現れるリスクが高まるためQOLが低下するでしょう。

さらに鼻骨骨折の放置で血種が形成されると、鼻軟骨の壊死や鞍鼻変形を引き起こす恐れがあります。

感染症リスク

鼻骨骨折を放置すると、重篤な感染症を引き起こすリスクが高まります。

鼻骨骨折で鼻に強い力が加わると、鼻以外にも頭蓋骨や頬骨に損傷が見られることは少なくありません。

鼻骨と頭蓋骨をつなぐ骨が損傷した場合、鼻の粘膜に付着している細菌が脳や脊髄の周りの空間に入り込み、髄膜炎など重篤な感染症を引き起こす可能性があります。

なお、細菌性髄膜炎は未治療の場合、致死率は50%に達する非常に危険な病気です。

顔面を強く打ったときに、鼻血とともにさらさらとした鼻水のような髄液が流れたときは頭蓋骨損傷の可能性があります。

すぐに救急車を呼び適切な処置をしてもらいましょう。

鼻骨骨折に関するよくある質問とその回答

鼻骨骨折に関するよくある質問とその回答を院長先生にお答えいただきます!

Q1:鼻を強く打ったけれども、鼻血がない場合は病院受診しなくても大丈夫?

変形の有無が最もわかりやすいとおもいます。

腫れがひどい場合、腫れがひいたあとに変形が疑われる場合、明らかに骨折した感覚がある場合などは受診をおすすめします。

Q2:子どもが鼻骨折したかどうかの見分け方はある?

肉眼的所見しかないですが、一般的に成人よりは骨折しにくいです。

Q3:鼻骨折の手術後に気をつけるべきことはある?

しっかりと1週間程度固定することです。

まとめ

鼻骨は屋根のような形になっており、前下方向に向かうにつれて徐々に骨が薄くなります。

そのため、場所によっては少しの衝撃で鼻骨が折れてしまうことも。

遊びやスポーツ、ケンカの多い子どもの鼻骨骨折は珍しいことではありません。

まとめ
  • 鼻骨骨折すると衝撃により鼻血が出ることが多いので止血法を覚えておく
  • 鼻骨骨折が疑われるときは痛みがそれほど強くなくても病院受診する
  • 鼻骨骨折を放置すると折れた状態で骨が固まり、元に戻すのに時間がかかる

鼻骨骨折が疑われる時は、頬骨や頭蓋骨も損傷している可能性があります。

とくに頭蓋骨の損傷を放置してしまうと、髄膜炎など重篤な感染症にかかるリスクが高まるため、鼻や顔面を強く打ちつけたら早めに病院受診しましょう。

福岡市東区名島にお住まいで、我が子が顔面や鼻を強く打ちつけるようなことがあったら、早めにあだち耳鼻咽喉科へお越しください。

あだち耳鼻咽喉科では、鼻骨骨折の整復術は対応しておりませんが鼻骨骨折の有無を判断し、信頼できる病院へ紹介させていただきます。

鼻骨骨折だけでなく、他の骨折についても診察しますので、「大した事ないかも」と思わずに当院へお越しください。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師