2024年春から8年ぶりにマイコプラズマ肺炎が流行しています。
とくに免疫力の弱い子どもは感染しやすく、長引く咳に苦しむ我が子を見て心を痛むパパやママは多いでしょう。
多くの場合、発熱や倦怠感など風邪に似た症状と乾いた咳のみの軽症で済むため、過度な心配は不要です。
しかしながら、稀に重症化したり合併症を引き起こしたりするため、注意が必要です。
この記事では、マイコプラズマ肺炎とはどのような病気か、感染経路や受診の目安、治療法を解説します。
また、子どもが感染したときに、いつから登園・登校できるかについてもまとめましたので、ぜひご覧ください。
目次
マイコプラズマ肺炎とはどのような病気か?
マイコプラズマ肺炎とは、「肺マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae」という細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。
大人よりも小児が発症しやすく、厚生労働省の報告の報告によると、患者のうち約80%は14歳以下となっています。
マイコプラズマ肺炎の症状
マイコプラズマ肺炎に感染すると、発熱・倦怠感・頭痛など風邪症状によく似た症状があらわれます。
マイコプラズマ肺炎による咳症状は、感染後すぐにはあらわれません。
咳はマイコプラズマ肺炎の感染から3~5日後に徐々に強くなり、3~4週間と長期にわたって咳が続きます。
また、通常の感冒症状と同様にのどの痛みや鼻水を伴うことも多いです。
重症化・合併症のリスクあり
マイコプラズマ感染症に感染した人は咳症状をきたしやすく、通常のかぜによる症状と比較すると、長期間続きます。
とくに抗生剤による治療が適切に行われていない場合、数週間咳が続く場合もあります。
また、一部の感染者は、肺炎となり重症化することもあるため注意が必要です。
また厚生労働省の報告では、マイコプラズマ肺炎を発症した約5~10%の患者に以下の合併症が引き起こされたと公表しています。
- 中耳炎
- 心筋炎
- 髄膜炎
マイコプラズマ肺炎は、稀に合併症を発症するリスクがあります。
子どもが発症し、看病中に「いつもと様子が違う」など気になることがあれば、早めに受診しましょう。
マイコプラズマ肺炎の感染経路
マイコプラズマ肺炎の感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
感染した人の咳やくしゃみなどを吸い込んだり、感染した人と接触したりすると感染します。
マイコプラズマ肺炎は、季節性の感染症ではなく1年を通して発症しますが、空気が乾燥する秋・冬に患者が増加する傾向があるため注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎の受診目安
マイコプラズマ肺炎の初期症状は風邪の症状によく似ています。
またマイコプラズマ肺炎に感染した人の多くは軽症なので、風邪症状が強くでなければ、そのまま自宅で療養すると良いでしょう。
しかしながら、次のケースに該当する場合は、早めの受診がおすすめです。
- 咳が1週間以上続く
- 発熱が1週間以上続く
- 息切れがする
- 子どもが咳によって眠れなかったり食事がとれなかったりする
上記に該当する場合は、マイコプラズマ肺炎の疑いが強いだけでなく、いつもの風邪とは異なる病気の可能性があります。
マイコプラズマ肺炎が8年ぶりに流行している理由
国立感染症研究所の統計によると、2024年第1週~35週の定点当たりのマイコプラズマ感染症の累積報告数は、5,934人。
過去の統計と比較すると、2016年(累計報告数:10,376人)に次いで累計報告者数が多いとのことで、約8年ぶりにマイコプラズマ肺炎が流行しています。
マイコプラズマ肺炎が流行しているのには2つの理由があります。
- マイコプラズマ肺炎は3~5年のサイクルで流行する
- 新型コロナウイルス感染症の感染予防の規制緩和
まず、マイコプラズマ肺炎は世界的にも3~5年のサイクルで流行期を向かえます。
前回の流行が2016年でしたので、本来ならば、2019~2021年の間に流行するはずでした。
しかしながら2020年~2022年まで、新型コロナウイルス感染症が流行したことから、多くの人が外出自粛をしたり、マスクや手洗いを徹底したりするなど感染症予防対策が実施されました。
新型コロナウイルス感染症とマイコプラズマ肺炎はどちらも飛沫接触・接触感染により感染拡大します。
結果的に、新型コロナウイルス感染症の予防がマイコプラズマ肺炎の予防にもつながったのです。
しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が落ち着き、2023年に「2類感染症」から「5類感染症」になったことから、感染症対策も緩和されることになりました。その結果、人と人の接触が増え、2024年春以降のマイコプラズマ肺炎の流行につながったのではないかと考えられています。
マイコプラズマ肺炎はなぜ子どもが感染しやすいのか
マイコプラズマ肺炎が子どもに感染しやすい理由は、子どもが大人よりも免疫力が弱いためです。
マイコプラズマ肺炎の原因菌である「肺マイコプラズマ」の感染力はそれほど強くありません。
しかしながら、子どもが通う保育園や幼稚園、学校などの施設は、集団生活で飛沫感染や接触感染を防ぎにくい環境となっています。
そのため、幼児や学童の中に感染者がいると、すぐに感染拡大してしまうのです。
しかし子どもが肺マイコプラズマに感染しても、多くの場合は肺炎にならず軽症で済みます。
子どもだけでなく大人も感染する
マイコプラズマ肺炎は子どもがかかりやすい感染症ですが、大人も感染するため注意が必要です。
とくに子どもがマイコプラズマ肺炎に感染し、その看病をするパパやママは、看病疲れでいつもより免疫力が低くなっています。
そのため、子どもからマイコプラズマ肺炎に感染する可能性が高いので、感染しないようマスク着用や手洗いを徹底するなど予防に努めましょう。
マイコプラズマ肺炎の診断方法
マイコプラズマ肺炎の診断方法は3種類あります。
- 採血による診断:採血により、抗体を検出する方法。判明まで数日間と時間がかかります。
- 咽頭ぬぐい液による方法:口腔内から咽頭を綿棒でぬぐうことで検査する方法。菌量が多ければ検出可能ですが、一般的には精度が低いとされています。
- 遺伝子増幅法(PCR検査):30分以内に診断可能で、菌量が少なくても検出可能です。当院にあるスポットファイア検査は本検査法になります。
ただ、実際には遺伝子増幅法を用いない場合、診断がつかないことも多く、症状や周囲の流行状況から推測して、治療を行うことも少なくありません。
マイコプラズマ肺炎の治療法
マイコプラズマ肺炎は感染しても軽症の場合は、患者本人が気づかないこともあるため、自然治癒で治ります。
発熱や咳などが長引く場合は、抗菌薬による服薬治療を実施します。
しかしながら、近年では抗菌薬が効きにくい、耐性菌による感染拡大が広がっているため抗菌薬を服用したからと言って安心してはいけません。
医師から処方された抗菌薬を決められた期間、服用しても症状が治まらない場合は、耐性菌が検出される可能性があるため、最寄りの病院に再受診しましょう。
子どもがマイコプラズマ肺炎に感染したらいつから登校・登園できる?
マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法で「その他感染症」に分類されている感染症です。
出席停止の期間は定められていませんが、症状により「感染の恐れがない」と認めるまで登校・登園はできません。
幼稚園や保育園によっては、子どもがマイコプラズマ肺炎に感染した後、再び登園するには、登園許可証を医師に発行してもらう必要があるケースもあります。
なおマイコプラズマ肺炎の治療期間は1週間程度ですが、症状がある間は周囲にうつす可能性があります。
子どもの登校・登園は、発熱、咳などの症状が落ち着くことを目安にすると良いでしょう。
マイコプラズマ肺炎にかかったときのホームケア
子どもも大人もマイコプラズマ肺炎にかかったら、まず処方された抗菌薬をすべて飲み切りましょう。
そのうえで、解熱するまではしっかりと休養を取ること、咳があるときは家庭内感染を防ぐためマスクをすることが大事です。
また、マスクは感染を防ぐだけでなく、喉粘膜の乾燥も防ぐため咳を抑えられる効果も期待できます。
咳がひどいときは、上半身を少し起こして休むとラクになります。
加湿器を使い、室内の湿度を60~70%に保つと喉粘膜が潤い、咳が抑えられるでしょう。
マイコプラズマ肺炎の予防法
マイコプラズマ肺炎の予防は新型コロナウイルス感染症と同じく、手洗い・うがい・マスク着用が基本になります。
どちらも飛沫感染・接触感染により感染が拡大するためです。
また接触感染を防ぐため、以下の感染予防対策も有効です。
- タオルの強要を避ける
- 流水・石けんによる手洗い
- マスク着用
- 咳症状がある場合は咳エチケット
なお、マイコプラズマ肺炎はインフルエンザと異なり、ワクチンでの予防はできません。
教えて院長先生!マイコプラズマ肺炎でよくある質問とその回答
マイコプラズマ肺炎でよくある質問とその回答を院長先生にお答えいただきます。
マイコプラズマ肺炎は、発症後しばらくしてから咳症状が強くなりますが、咳症状のピークはいつですか?
割と早い段階から、昼夜問わず咳が出るという印象ですが、中には咳症状が出ない人もいます。
ピーク等についてはそれぞれ病状の悪化度により個人差があると思います。
マイコプラズマ肺炎にかかるとどのような咳がでますか?
人それぞれです。乾いた咳の人もいれば、鼻水がある場合、痰がからんだ湿性の咳が出る場合もあります。
ただ、症状が進行するとかなり重篤な咳になることもあります。
まとめ
マイコプラズマ肺炎は通常3~5年のサイクルで流行します。
マイコプラズマ肺炎が前回の流行から、8年間空いたのは、新型コロナウイルス感染症拡大により、マスク着用や手洗いうがい、外出自粛により飛沫感染や接触感染が抑えられたためです。
しかし、2023年に感染症分類が引き上げられ、外出自粛やマスク着用、手洗い、消毒の感染予防が緩和されました。
その結果、人と人との接触が増え、8年ぶりにマイコプラズマ肺炎が感染拡大しています。
- マイコプラズマ肺炎は免疫力が弱い子どもがかかりやすい
- マイコプラズマ肺炎のほとんどは軽症
- マイコプラズマ肺炎は大人もかかるので注意
マイコプラズマ肺炎の初期症状は、風邪症状とよく似ているため、軽症の場合は気づかず、そのまま自然治癒に任せることも少なくありません。
マイコプラズマ肺炎に感染しても多くの場合は、軽症なのでそれでも問題ないでしょう。
しかし、小さい子どもの場合、咳をするだけでも体力が奪われるため、食事や水が取れない場合は脱水症を防ぐためにも早めに最寄りの病院への受診をおすすめします。
福岡市東区名島にお住まいで、子どもの長引く咳にお悩みの方は、あだち耳鼻咽喉科へお越しください。
あだち耳鼻咽喉科では、マイコプラズマ肺炎の検査や治療ができます。
症状は軽症でも、子どもにとって長引く咳は、食べられなかったり眠れなかったりと日常生活に大きな影響が出ます。
咳症状が少しでも緩和できるようなアドバイスもいたしますので、お気軽にご相談ください。