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新型コロナ後遺症とは?耳鼻咽喉科で治療できる症状も紹介

近年流行しているオミクロン株新型コロナウイルス感染症は、感染力が強いものの重症化リスクが低く、発症しても軽症であることがほとんどです。

そのため、政府は2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げることを決定しました。

新型コロナウイルス感染症から怯える日々から解放されつつありますが、まだ安心するのは早いでしょう。

なぜなら、新型コロナウイルスに感染した人の中には療養期間後、後遺症に悩まされている人も少なくないからです。

今回は、新型コロナ後遺症とは何か、主な症状や問題点、耳鼻咽喉科で治療できる症状をご紹介します。

新型コロナ後遺症の定義

世界保健機関(WHO)は新型コロナ後遺症を次のように定義しています。

新型コロナ後遺症の症状は、新型コロナ感染後に発症したものをいう。少なくとも2ヶ月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないものである。
参照:新型コロナウイルス感染症診療の手引き 別冊|厚生労働省

症状の詳細は後ほど詳しく解説しますが、新型コロナ後遺症の中には、日常生活に影響するものも少なくありません。

新型コロナ後遺症は、罹患中には出なかった症状が療養期間を経て回復後に新たに出現するケースと罹患中から出現している症状が持続するケースがあります。

新型コロナ後遺症の症状

新型コロナ後遺症の症状は、個人差があり多種多様です。

代表的な症状である味覚障害や嗅覚障害の他にも次のような症状が確認されています。

  • 倦怠感・疲労感
  • 関節痛
  • 筋肉痛
  • 喀痰
  • 息切れ
  • 胸痛
  • 脱毛
  • 記憶障害
  • 集中力低下
  • 頭痛
  • 抑うつ
  • 嗅覚障害
  • 味覚障害
  • 動悸
  • 下痢
  • 腹痛
  • 睡眠障害
  • 筋力低下
引用:新型コロナウイルス感染症診療の手引き 別冊|厚生労働省

新型コロナウイルス感染症と診断され、入院歴のある患者さん1,066人の追跡調査をしたところ、全体の30%程度の患者さんに発症後1年経っても1つ以上の後遺症の症状が認められていることがわかりました。

また、新型コロナウイルス感染症の診断後3ヶ月時点でのコロナ後遺症の出現率を3世代別に見てみた結果は次の通りです。

診断後3ヶ月時点でのコロナ後遺症の出現率
  • 若年者(40歳以下)…43.6%
  • 中年者(41~64歳)…51.9%
  • 高齢者(65歳以上)…40.1%

中年者が若干多いものの、若い人も4割近くの人が新型コロナ後遺症を発症しています。

若い人は新型コロナウイルス感染症に感染しても、無症状あるいは軽症で済むことが多いです。

しかし、症状が軽くても後遺症を発症する可能性もあるため、安心できるわけではないことがこの調査結果からわかります。

無症状感染・軽症でも発症例あり

新型コロナ後遺症では、無症状感染や軽症でも発症例が報告されています。

新型コロナウイルス感染症でほとんど症状が出なくても、新型コロナ後遺症も軽症とは限りません。

時として重篤な症状に陥ることがあるので注意が必要です。

また新型コロナ後遺症は、発症のタイミングもさまざまです。

新型コロナウイルス感染症の療養期間を過ぎてからすぐに症状が表れることもあれば、発症後2~3ヶ月後に突然症状が表れることもあります。

新型コロナ後遺症とは気づかず苦しむ人もいる

後遺症を発症した患者さんの中には、新型コロナウイルス感染症が無症状で、罹患したことに気づかなかった人もいます。

後遺症の症状が出て初めて、病院受診し新型コロナウイルス感染症に罹患したことに気付くケースもあるのです。

そのため、病院受診しても原因がわからず、病院をはしごしてしまうケースも少なくありません。

その結果、症状が長引いたり悪化したりして日常生活に支障が出てしまうこともあります。

2023年3月21日時点で新型コロナウイルス感染症と診断された人の累計は、33,385,591人となっており、これは日本の全人口の約26.7%に相当します。

つまり、誰がいつ感染してもおかしくない状況です。

もし、いつもと違う原因不明の症状に見舞われたら、コロナ後遺症を疑い専門の医療機関で受診をしてみましょう。

耳鼻咽喉科で治療できる後遺症の症状と治療法

新型コロナ後遺症の症状は多岐にわたります。

その中でも次の症状は耳鼻咽喉科で治療が可能です。

耳鼻咽喉科で治療できる後遺症の症状
  • 味覚障害(副鼻腔炎)
  • 嗅覚障害
  • 咳(喉頭炎、咽頭炎)

ここからはそれぞれの症状の詳細と耳鼻咽喉科での治療法をご紹介します。

味覚障害(副鼻腔炎)・嗅覚障害

新型コロナウイルス感染後、味覚障害や嗅覚障害だけでなく「鼻水が止まらない」「粘り気のある鼻水が出る」など鼻の症状が出ている場合、副鼻腔炎を発症している恐れがあります。

急性副鼻腔炎の場合、ウイルスや細菌感染でり患することが多いからです。

急性副鼻腔炎になると、鼻づまりや後鼻漏の症状が見られるため、味覚障害や嗅覚障害にも関係します。

耳鼻咽喉科では、薬物療法や鼻吸引・鼻洗浄などの治療や処置をおこない多くの場合、症状が改善します。

副鼻腔炎については以下の記事をご覧ください。

副鼻腔炎の原因とは?治療法や放置するリスクを解説この記事では副鼻腔炎の原因から治療法まで解説します。副鼻腔炎は放置してしまうと慢性化し治療が長引いたり、合併症を引き起こしたりする恐れがあるので注意が必要です。...

また味覚障害が出ている場合、血液中の亜鉛濃度が低い可能性もあります。

亜鉛が不足すると味覚障害が起きるからです。

新型コロナウイルス感染症にかかると、身体の免疫機能が活発化し体内の亜鉛が多く消費されます。

その結果、り患後に亜鉛不足となり味覚障害が起きやすくなるのです。

亜鉛は食事で補うこともできますが、耳鼻咽喉科では症状を早期改善させるため低亜鉛血症治療薬が処方されることもあります。

嗅覚障害

新型コロナウイルス感染症から回復した後、鼻水や鼻づまりとともに嗅覚障害が持続または出現している場合、まず副鼻腔炎が疑われます。

しかし新型コロナ後遺症の中には、鼻水などの症状がなく嗅覚障害が出現することもあります。

この場合、副鼻腔炎ではなく嗅神経性嗅覚障害が疑われます。

新型コロナウイルスは体内の粘膜に感染・結合しやすく、空気の出入りの多い鼻内の嗅粘膜に感染する可能性が高いからです。

新型コロナウイルスが嗅粘膜に感染すると、嗅神経細胞にダメージを与えるためにおいを感じる機能が一時的に低下します。

嗅粘膜や嗅神経細胞は傷ついても再生するため、細胞のターンオーバー期間が過ぎる約1か月以降、少しずつ改善する割合は増加し、最終的には90%以上で回復を認めるとされています。

しかし稀に2年以上経過しても、嗅覚障害が改善しないケースもあるので注意が必要です。

この場合、脳ににおいの情報を伝える中枢神経に何らかの障害が起きていることが考えられます。

新型コロナ後遺症の長引く嗅覚障害は、まだ症例が少なくこれと言った治療法が確立していません。

耳鼻咽喉科では、長引く嗅覚障害に対してさまざまなにおいをかいで、においを嗅ぐ機会を増やす「嗅覚トレーニング」や投薬治療をおこなうこともあります。

咳(喉頭炎、咽頭炎)

新型コロナ後遺症の中でも、多くの人が悩まされている症状の1つが咳や喉の痛みです。

新型コロナウイルスも風邪の菌の一種なので、罹患後も咳や喉の痛みが継続するのは仕方のないことかもしれません。

また現在、感染拡大している新型コロナウイルスのオミクロン株は、ウイルスが咽頭に感染しやすいことがわかっています。

その結果、新型コロナウイルス感染症の療養期間を経ても喉頭や咽頭の炎症が治まらず、長引く咳や喉の痛みを出現させているようです。

耳鼻咽喉科では、喉頭炎や咽頭炎に対して、薬物療法やネブライザー治療をおこないます。

EAT(上咽頭擦過療法)

EAT(上咽頭擦過療法)

EAT(上咽頭擦過療法)とは、消炎剤を染み込ませた綿棒を上咽頭に擦りつける治療法です。

上咽頭には多くの神経が通っており、この部分が炎症を起こすとめまいや倦怠感、咳などの症状が表れます。

EAT(上咽頭擦過療法)で、炎症を抑えることでこれらの症状が改善したというケースが少なくないそうです。

しかしめまいや倦怠感、咳などの症状が必ずしも上咽頭炎が原因とは限りません。

よって、EAT(上咽頭擦過療法)をおこなっても改善がみられないこともあります。

またEAT(上咽頭擦過療法)をおこなっている耳鼻咽喉科は限られているので、治療をご希望の方は、事前に確認しましょう。

まとめ

新型コロナ後遺症の症状は多岐にわたります。

またやっかいなことに、新型コロナウイルス感染症が無症状でも後遺症が出現するケースも多いので注意が必要です。

後遺症のみ出現して病院受診した場合、新型コロナウイルスに罹患したかどうか、患者さん自身も医師もわからないため、コロナ後遺症だと診断できないこともあります。

そのため症状が改善せず、病院をはしごしてしまうことも少なくありません。

まとめ
  • 新型コロナウイルスが軽症または無症状でも後遺症が発症する可能性がある
  • 新型コロナ後遺症は症状だけで診断しにくく患者さんが病院をはしごしてしまう恐れもある
  • オミクロン株新型コロナウイルスでは、副鼻腔炎や咽頭炎など喉や鼻に症状が表れる後遺症が出やすい

原因不明の辛い症状や体調不良に悩んでいる方は、新型コロナ後遺症の専門機関に診てもらうとよいでしょう。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師