インフルエンザワクチンといえば、接種時に腕の痛みが伴う筋肉注射が一般的です。
大人は理性で我慢できるものの、子どもは痛い注射に泣き叫び、毎年嫌がる子どもも多いのではないでしょうか。
嫌がる子どもをなだめながら、病院へ連れていくのはママもパパも大変です。
2024年から多くの病院で、新しいインフルエンザワクチン「フルミスト」の接種が始まっています。
鼻から接種する生ワクチンで痛みのないワクチンとして今、注目されているインフルエンザワクチンです。
この記事では、フルミストとは何か、効果や副作用、従来の不活化インフルエンザワクチンとの違いについて解説します。
目次
フルミストとは?
フルミストとは2023年に国内で薬事承認された経鼻弱毒生インフルエンザワクチンです。
フルミストは、従来の注射でのインフルエンザワクチンと異なり、鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチンになります。
フルミストは、両鼻に0.1mlずつ生ワクチンの入った薬液を注入するだけなので、接種時の痛みがないのも特徴の1つです。
毎年、嫌がる子どもを押さえつけながら、インフルエンザ接種をしていたパパやママの負担も今年から大幅に軽減することでしょう。
フルミストの効果
フルミストは、生きたインフルエンザウイルスを鼻の粘膜に付着させ、免疫を誘導します。
インフルエンザの感染経路である鼻や咽頭で免疫がつくられるため、高い発症予防効果があるのが特徴です。
また、鼻粘膜から血液内にも免疫を誘導するため、従来のインフルエンザワクチンと同じく、感染してしまった場合の重症化も防ぐことができます。
フルミストのインフルエンザ予防効果は1年間持続し、海外では小児での予防効果が高いという報告が出ています。
フルミストの接種対象年齢と回数
フルミストが接種できるのは、2歳以上19歳未満までで、接種回数は年1回となっています。
その理由は3つです。
- 成人を対象とした臨床試験データが不足しており安全性や有効性が確立できていない
- 小児は免疫系が未熟で生ワクチンのフルミストによる免疫獲得効果が高いた
- 小児は鼻粘膜からウイルス感染・増殖しやすい環境が整っているためフルミストの効果が期待できる
これら3つの理由から、接種年齢が小児に限られています。
今後、成人を対象とした研究が進み、安全性と有効性が確立されれば、接種対象が拡大される可能性もあるでしょう。
また、経鼻生ワクチンであるフルミストは、他のワクチンに影響を与えることはありません。
そのため、他のワクチンの接種歴・接種予定に左右されずいつでも接種することができます。
フルミストの副作用
フルミストは両鼻に薬液を注入するため、接種後にくしゃみや鼻水が出ることがあります。
また、喉に薬剤が垂れることもありますが、飲み込んでも問題はないのでご安心ください。
生ワクチンであることから、接種した人の約10%程度で、発熱および約30%程度で鼻水咳などのインフルエンザ様症状が出ることがあります。
また約2%程度の確率で周りにインフルエンザをうつす可能性があります。
また従来の注射のインフルエンザワクチンと同じく、まれにアナフィラキシーショックが出てくる可能性があります。
アナフィラキシーショックは、接種してから30分以内で起こることが多いので、接種後はお子さんの様子を観察し何か気になることがあればかかりつけ医に申し出ましょう。
フルミストが免疫を獲得するまでのメカニズム
フルミストを接種すると私たちの身体の中でどのような変化が起こり、インフルエンザに対する免疫が獲得されるのか、メカニズムを見てみましょう。
- フルミストを両鼻腔に噴霧。
- 弱毒化された生きたインフルエンザウイルスが鼻の粘膜に接触
- 鼻の粘膜内にいる免疫細胞がインフルエンザワクチンを感知
- 免疫細胞がインフルエンザに対する抗体を多量に産出
- インフルエンザに対する免疫が獲得される
フルミストは鼻粘膜から咽頭に免疫が獲得できるのはもちろんのこと、血液内にも免疫を獲得できるので、重症化を防ぐことも可能です。
フルミストの接種ができない人
痛みも少なく、感染発症の予防効果も高いフルミストですが、以下に該当する人は、フルミストの接種ができません。
- 2歳未満19歳以上の人
- 5歳未満で喘息の治療をしている人
- 1年以内に喘息発作があった人
- 心疾患、肺疾患、喘息、肝疾患、糖尿病、神経性疾患など慢性疾患を持つ人
- 免疫不全者と接触を持つ人
- アスピリン内服中の人
- 妊婦・妊娠の可能性のある人
- 重度の卵アレルギーを持つ人
他にも接種できるけれども気を付けたほうが良い人もいます。
詳しくはフルミストの接種を導入している病院へお尋ねください。
フルミストと従来のインフルエンザワクチンの比較
フルミストと従来のインフルエンザワクチンの違いを以下の表にまとめました。
フルミスト | 従来のインフルエンザワクチン | |
---|---|---|
ワクチンの種類 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
接種方法 | 鼻腔噴霧 | 筋肉注射 |
予防効果 | 高い・感染発症も防ぐ | 高い |
副反応 | 鼻水・発熱 | 発熱・腕の痛み |
接種対象年齢 | 2歳以上19歳未満 | 6ヵ月以上 |
フルミストと従来のインフルエンザワクチンの大きな違いは、接種方法でしょう。
接種時に痛みを伴う従来のインフルエンザワクチンに対し、フルミストは痛みを伴わず、鼻腔に薬を注入するだけで接種が完了します。
注射を嫌がるお子さんの接種への負担が減るのは大きなメリットです。
一方で、フルミストは従来のインフルエンザワクチンよりも費用が高額になりがちです。
予防接種を受ける病院によって異なりますが、従来のインフルエンザ予防接種は1回あたり3,500円~5,500円であるのに対し、フルミストは1回あたり8,000円~10,000円となっています。
フルミストと従来のインフルエンザワクチンはどちらを接種した方がよいか?
フルミストという新しいインフルエンザワクチンが出ましたが、今後も注射の不活化ワクチンがなくなることはありません。
フルミストは2歳~19歳未満で接種可能なため、今年はどちらの予防接種を受ければよいのか迷っているママもパパもいるのではないでしょうか。
フルミストの最大の特徴は接種時の痛みがないことでしょう。
インフルエンザワクチンの注射の痛みが怖いお子さんに対してはフルミストがおすすめです。
また、1回の接種で免疫が獲得できるため、通院回数が少なくできるのも嬉しいポイントです。
ただ、一方でフルミストの流通量は少ないため、予約が取りづらく注射のインフルエンザワクチンよりも高額になるのがデメリットといえるでしょう。
従来のインフルエンザワクチンは、接種時の痛みはありますが次のようなメリットがあります。
- 日本国内でこれまで何十年の接種実績があるため副作用に対するデータも豊富
- 大人も子どももまとめて家族で同時接種できる
- フルミストよりも安価で受けることができる
なお、フルミストも従来のインフルエンザワクチンも効果に差はありません。
フルミストに関するよくある質問とその回答
フルミストに関するよくある質問とその回答を院長先生にお答えいただきました。接種当日に鼻水や鼻づまりがあってもフルミストを接種できますか?
鼻をよく吸引した上で接種することが可能です
フルミスト接種後、どれくらいで免疫が獲得できますか?不活化ワクチンと比べて免疫獲得期間は短いですか?
約2週間で免疫を獲得できるとされています。また、期間も約1年と従来の不活化ワクチンより長いとされています。
まとめ
フルミストは、両鼻に少量スプレーするだけでインフルエンザを予防できます。
痛みがなくインフルエンザを予防できるのが、フルミストの大きな特徴です。
- フルミストが接種できる対象年齢は2歳以上19歳未満
- フルミストの流通量が少ないため価格が高額で予約が困難
- フルミストも注射のインフルエンザワクチンも効果は変わらない
フルミストは接種回数が1回で、免疫を獲得できるため、通院の負担を減らすこともできるでしょう。
ただ、フルミストの流通量が少ないためフルミストを導入していない病院もあり、導入している病院も数量が限られていることがあるため注意が必要です。
フルミストの接種を検討している方は、最寄りの小児科や耳鼻咽喉科に問い合わせてみましょう。
福岡県東区名島にお住まいの方は、あだち耳鼻咽喉科へお越しください。
あだち耳鼻咽喉科では、フルミストの接種に対応しています。
フルミストについて、ご不明な点や不安な点がある方はお気軽にお尋ねください。