インフルエンザワクチンといえば、接種時に腕の痛みが伴う皮下注射が一般的です。
大人は理性で我慢できるものの、子どもは痛い注射に泣き叫び、毎年嫌がる子どもも多いのではないでしょうか。
嫌がる子どもをなだめながら、病院へ連れていくのはママもパパも大変です。
2024年から多くの病院で、新しいインフルエンザワクチン「フルミスト」の接種が始まっています。鼻から接種する生ワクチンで痛みのないワクチンとして今、注目されているインフルエンザワクチンです。
あだち耳鼻咽喉科でも9月からフルミストの予防接種を開始しています。2026年は例年より早いペースでインフルエンザの流行が広がっています。
この記事では、今シーズンの流行状況を踏まえながら、フルミストとは何か、効果や副作用、従来の不活化インフルエンザワクチンとの違いについて解説します。
目次
インフルエンザは2026年9月時点で流行拡大中
インフルエンザの予防接種を検討するにあたって、まず気になるのが今シーズンの流行状況ではないでしょうか。
ここでは、2026年9月時点の全国と福岡県内のインフルエンザの報告数をご紹介します。
全国のインフルエンザ最新報告数
2026年9月7日から13日(第37週)の全国のインフルエンザ定点当たり報告数は5.54人でした※。
前の週(3.29人)から大きく上昇しており、昨年の同じ時期(0.72人)と比べても大幅に増加しました。
全国では学級閉鎖が661件、学年閉鎖が165件、休校が16件(いずれも累計)にのぼり、学校生活にも影響が出始めています。
福岡県内でもインフルエンザが増加傾向
福岡県内でも同様の傾向がみられます。
県内の定点当たり報告数は第36週の2.65人から第37週には4.43人まで上昇しました※。
全国的な流行拡大の波は地域を問わず広がっており、例年よりも早い時期から対策を検討しておくことが安心につながるでしょう。
※ 参考:厚生労働省・国立感染症研究所「感染症発生動向調査」(2026年9月18日公表、第37週:2026年9月7日〜13日)
フルミストとは薬事承認された経鼻弱毒生ワクチン
フルミストは、2023年に薬事承認され、2024年に日本で新しく使えるようになったインフルエンザワクチンです。
正式な名称や特徴、承認された経緯について解説します。
フルミストの正式名称と特徴
フルミストの正式名称は「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(けいびじゃくどくせいインフルエンザワクチン)」で、製品名は「フルミスト点鼻液」です。
生きたインフルエンザウイルスの毒性を弱めたものを鼻の中に噴霧するタイプのワクチンで、両鼻に合計0.2mL(片側0.1mLずつ)の薬液を噴霧するだけで接種が完了します。
注射のような痛みがないことが大きな特徴です。
フルミストが薬事承認された経緯
フルミストは2023年3月27日に、2歳から19歳未満への使用について日本で薬事承認されました※。
国内では長年にわたり未承認のワクチンでしたが、痛みを伴わない経鼻接種のワクチンとして期待され、実際の接種は2024年のシーズンから本格的に始まっています。
参考:厚生労働省 第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料「小児に対するインフルエンザワクチンについて」(2024年5月23日)
フルミストと従来のワクチンの違いを比較
フルミストと従来のインフルエンザワクチンの違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | フルミスト | 従来のインフルエンザワクチン |
|---|---|---|
| ワクチンの種類 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
| 接種方法 | 鼻腔噴霧 | 皮下注射 |
| 予防効果 | 不活化ワクチンとの間に明確な違いはないとされている※ | 生ワクチンとの間に明確な違いはないとされている※ |
| 主な副反応 | 鼻閉・鼻漏、咳嗽、咽頭痛 | 発熱、注射部位の痛み |
| 接種対象年齢 | 2歳以上19歳未満 | 6ヶ月以上 |
| 費用(目安) | 医療機関により異なります | 医療機関により異なります |
フルミストと従来のワクチンの大きな違いは接種方法です。
注射のような痛みがなく、鼻に噴霧するだけで接種が完了するため、注射を嫌がるお子さんの負担軽減につながるでしょう。
一方で、効果や安全性に大きな差があるわけではないため、どちらを選ぶべきかは症状やお子さんの状況によって変わります。
※参考:日本小児科学会「経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方」(2024年9月2日)
フルミストの効果は不活化ワクチンと同等
フルミストにはどのくらいの予防効果があるのでしょうか。
国内で実施された治験の結果と、日本小児科学会の見解をもとに解説します。
国内治験で示された有効率
日本人の小児(2歳以上19歳未満)を対象とした国内治験では、フルミストを接種したグループとプラセボ(効果のない薬)を接種したグループを比較した結果、フルミストの有効率は28.8%でした※。
とくに、その年に流行していたウイルス型のA/H3N2に対しては28.0%、ワクチンの型と実際に流行した型が一致していた株に対しては36.6%の有効率が確認されています。
不活化ワクチンとの優劣は確認されていない
フルミストと従来の不活化ワクチンを直接比較した国内の治験は実施されていません※。
海外で実施された市販後の調査では、両者の間にA/H3N2型に対する効果の明確な違いはみられなかったとの報告があります。
日本小児科学会も、フルミストと不活化ワクチンの間にインフルエンザにかかることを防ぐ効果の明確な優位性は確認されていないとしています※。
※参考:厚生労働省 第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料「小児に対するインフルエンザワクチンについて」(2024年5月23日)
※参考:日本小児科学会「経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方」(2024年9月2日)
フルミストの接種対象年齢と回数は2歳から19歳未満で年1回
フルミストは、誰でも何回でも接種できるわけではありません。
対象年齢と接種回数について解説します。
フルミストに年齢制限がある理由
フルミストの接種対象年齢が2歳以上19歳未満とされているのには理由があります。
2歳未満の子どもについては、海外の臨床試験で接種後に入院や喘鳴(ぜんめい、ぜいぜいとした呼吸)のリスクが高まったとの報告があり、現時点では接種の対象に含まれていません。
また、国内で実施された治験の対象は2歳から18歳までの日本人であり、承認された年齢範囲もこの結果を踏まえたものです。
海外では49歳まで対象としている国もありますが、国内の承認範囲は19歳未満までとなっています。
海外との接種回数の違い
米国では、過去に2回以上インフルエンザワクチンを接種したことがない8歳までの子どもに対して、同一シーズン中に少なくとも4週間あけて2回接種することを推奨しています。
一方、国内では接種対象となるすべての年齢(2歳〜19歳未満)において、1シーズンにおける接種回数は1回のみです。
フルミストの副作用は接種者の7割弱にみられる
フルミストにも、他のワクチンと同じように副作用(医学的には副反応と呼びます)が起こることがあります。
頻度の高いものと、まれに起こる重い副反応について解説します。
フルミストで頻度の高い副反応
フルミストの臨床試験では接種を受けた人の67.9%に何らかの副反応がみられました。
もっとも多かったのは鼻づまりや鼻水(鼻閉・鼻漏)で59.2%、次いで咳(せき)が27.8%、のどの痛みが17.9%、頭痛が11.2%と続きます。
いずれも数日のうちに回復することが多いとされています。
※参考:KEGG MEDICUS医薬品情報「フルミスト点鼻液」添付文書情報
まれに起こる重い副反応
まれではありますが、重い副反応としてショックやアナフィラキシー(急激なアレルギー反応)が起こる可能性があります。
また、接種後数日でインフルエンザのような症状が出た場合、ワクチン由来のウイルスが検出され、インフルエンザと診断されるケースも報告されています。
国内の治験では、この症状が接種を受けた人の1.8%にみられましたが、いずれも軽度から中等度で、重症化せずに回復した例がほとんどです。
市販後の副反応疑い報告の状況
フルミストの接種が始まってからの状況も公表されています。
厚生労働省の副反応検討部会の資料によると、2025年10月1日から2026年3月31日に接種された分のうち、医療機関からの副反応疑いの報告は20件(報告頻度0.0019%)、製造販売業者からの報告は10件(報告頻度0.0010%)でした。
医療機関からの報告のうち16件が重篤とされ、1件の死亡が報告されていますが、この死亡例については因果関係の評価が「評価不能」とされており、フルミストとの明確な関連は確認されていません。
報告数自体は接種数全体からみるとごくわずかであり、接種を受けた多くの人に大きな副反応がみられていないことがうかがえます。
フルミストが免疫を獲得するまでのメカニズム
フルミストを接種すると、体の中でどのような変化が起こり、インフルエンザに対する免疫が獲得されるのでしょうか。
仕組みを順番に見ていきましょう。
- フルミストを両方の鼻腔(びくう、鼻の中の空間)に噴霧する
- 弱毒化された生きたインフルエンザウイルスが鼻の粘膜に触れる
- 鼻の粘膜にある免疫細胞がウイルスを感知する
- 免疫細胞がインフルエンザに対する抗体を多く作り出す
- インフルエンザに対する免疫が獲得される
フルミストは、鼻や喉の粘膜だけでなく、血液の中にも免疫を作り出すことができるとされています。
そのため、重症化を防ぐ効果も期待できます。
フルミストの接種ができない人と注意が必要な人
フルミストは多くの人が安全に接種できるワクチンですが、体質や持病によっては接種を受けられない人や、注意が必要な人がいます。
それぞれ順番に見ていきましょう。
接種を受けられない人(接種不適当者)
添付文書では、次にあてはまる人はフルミストの接種を受けられないとされています。
- 明らかに発熱している人
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな人
- フルミストの成分でアナフィラキシー(急激なアレルギー反応)を起こしたことがある人
- 免疫の働きに明らかな異常がある病気を持つ人、または免疫を抑える治療を受けている人
- 妊娠していることが明らかな人
- その他、医師が予防接種を行うのが適当でないと判断した人
接種に注意が必要な人(接種要注意者)
上記には該当しないものの、接種の判断にあたって注意が必要とされる人もいます。
- ゼラチンを含む製剤や食品でアナフィラキシーなどの過敏症を起こしたことがある人(日本小児科学会は、この場合は不活化ワクチンの使用を推奨しています)
- 卵や鶏肉など、鶏に由来するものにアレルギーを起こすおそれがある人
- 重度の喘息(ぜんそく)がある人、または喘鳴(ぜんめい、ぜいぜいとした呼吸)の症状がある人
日本小児科学会は、とくに喘息のある人については、フルミストではなく従来の不活化ワクチンの使用を推奨しています。
接種後に気をつけたいこと
フルミストを接種した後、鼻や喉からワクチン由来のウイルスが数週間排出されることがあります。
そのため、接種後1〜2週間は、重い免疫不全のある人との密接な接触をできるだけ避けることがすすめられています。
授乳中の人も、同じ期間は赤ちゃんとの接触に注意しましょう。
また、タミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬を使用している間は、ワクチンの効果が弱まる可能性があるため、接種のタイミングについて医師に相談してください。
フルミストと従来のワクチンどちらを選ぶべきか
フルミストと従来の不活化ワクチン、どちらを選べばよいか悩む方も多いのではないでしょうか。
日本小児科学会は、2歳から19歳未満であれば、どちらのワクチンも同じようにすすめられるとしています。
そのうえで、状況に応じた選び方の目安もあります。
重度の喘息がある人や喘鳴の症状がある人には、フルミストではなく不活化ワクチンがすすめられます。
また、フルミストは接種後にワクチンウイルスが周囲にうつる可能性があるため、授乳中の人や、家族に免疫が低下している人がいる場合も、不活化ワクチンが選択肢になります。
一方、生後6ヶ月から2歳未満、19歳以上、妊娠している人、免疫不全のある人などは、フルミストの対象外のため不活化ワクチンのみが選べます。
上記に当てはまらない場合は、注射の痛みが苦手かどうか、通院回数を減らしたいかどうかなど、お子さんやご家族の状況に合わせて選ぶとよいでしょう。
迷ったときは、接種を検討している医療機関に相談することをおすすめします。
まとめ
フルミストは、痛みのない経鼻接種のワクチンとして、2024年から国内で使えるようになったインフルエンザワクチンです。
効果や安全性は従来の不活化ワクチンと大きく変わらないとされており、接種回数が1回で済むことや、注射を嫌がるお子さんの負担を減らせることが特徴といえるでしょう。
一方で、重度の喘息がある人や、周囲に免疫が低下している人がいる場合など、不活化ワクチンがすすめられるケースもあります。
- フルミストは2歳以上19歳未満が対象で、接種回数は年1回
- 効果や安全性は従来の不活化ワクチンと明確な優位性の違いはない
- 喘息がある人や、家族に妊婦・乳児・免疫が低下している人がいる場合は不活化ワクチンがすすめられる
- 2026年はインフルエンザの流行が例年より早く始まっており、早めの対策の検討がおすすめ
フルミストの接種を検討している方は、最寄りの小児科や耳鼻咽喉科に問い合わせてみましょう。
福岡市東区名島にお住まいの方は、あだち耳鼻咽喉科へお越しください。
あだち耳鼻咽喉科では、フルミストの接種に対応しています。
フルミストについて、ご不明な点や不安な点がある方はお気軽にお尋ねください。












