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みみ

耳管狭窄症とは?放置するリスクや予防法を紹介

「耳が詰まったような感じがする」「耳が聞こえづらくなった」

風邪や鼻・のどの病気にかかった後、このような症状が出たら、もしかすると耳管狭窄症かもしれません。

耳管狭窄症は、鼻と耳をつなぐ細い管が何らかの原因で、狭くなったり塞がれてしまったりする病気です。

耳管は耳の中と大気の気圧を調整するため、開いたり閉じたりしますが、閉じっぱなしだと気圧が陰圧になり身体にさまざまな影響が出てきます。

この記事では耳管狭窄症とは何か、症状やかかりやすい人の特徴、治療法を解説します。

症状が良く似ている耳管開放症との違いについても比較しましたので、ぜひご覧ください。

耳管狭窄症とは

耳管狭窄症とは、耳と鼻をつなぐ耳管が何らかの原因で、狭くなったり塞がれたりしてしまう病気です。

耳管が狭くなったり塞がれたりすると、中耳の鼓室内と外気の気圧に差が生じ、聞こえづらくなったり耳が詰まったような感じがしたりとさまざまな症状があらわれます。

耳管狭窄症とは

耳管狭窄症の主な原因は、風邪などの感染症にり患した後に併発する鼻や喉の病気です。

  • 急性鼻炎
  • アレルギー性鼻炎
  • 副鼻腔炎
  • 上咽頭炎

鼻腔内や喉の炎症が耳管まで広がり、耳管が狭くなったり、塞いだりすることで耳管狭窄症を発症します。

耳管狭窄症発症のメカニズム
  1. 風邪のり患や鼻やのどの病気により炎症が起きる
  2. のどや鼻の炎症が耳管にまで到達して耳管が狭くなる
  3. 外気と中耳の鼓室内の気圧に差が出る(鼓室内の気圧が低くなる)
  4. 鼓膜が気圧によって内側に凹む
  5. 鼓膜が気圧により引っ張られると緊張状態になる
  6. 鼓膜に音波が当たっても振動しにくくなるため、耳が詰まったような感じになったり聞こえにくさを感じたりする

鼻の病気や感染症にり患した後は、耳管狭窄症になりやすいタイミングです。

感染症発症後に、聞こえづらさを感じたら、最寄りの耳鼻咽喉科に診てもらいましょう。

耳管狭窄症の症状

耳管狭窄症の主な症状は次の通りです。

  • 耳の中でポコポコ音がする
  • 滲出液が溜まり排出できなくなる
  • 耳の聞こえが悪くなる
  • 自分の声や呼吸が響いて聞こえる

また耳管狭窄症と似たような症状の病気に、耳管開放症と突発性難聴があります。

突発性難聴の場合、早期治療をしなければ聴力が元に戻らなくなる可能性があります。

素人では、耳管狭窄症にり患しているのか、突発性難聴にり患しているのか判断できません。

耳に違和感を覚えたら、すぐ最寄りの病院に受診すると安心です。

冬に耳管狭窄症になりやすい理由

耳管狭窄症は、冬に発症しやすいと言われています。

冬は空気が乾燥しやすく、鼻粘膜や喉粘膜が乾きやすいためです。

鼻粘膜やのど粘膜には、ウイルスや細菌などの異物を体外に排出するバリア機能があります。

冬になり空気が乾燥して、鼻粘膜やのど粘膜が乾くとバリア機能が低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。

感染症にかかると鼻炎や咽頭炎を引き起こし、炎症が耳管にまで広がりやすくなります。

その結果、耳管狭窄症を発症してしまうのです。

また寒さにより、耳管まわりの血管が収縮すると、耳管を閉じられなくなる耳管開放症になることもあります。

耳管狭窄症と耳管開放症の違い

耳管開放症と耳管狭窄症は、ともに耳管の開閉機能の異常によって発症します。

しかし、その症状や原因には違いがあるので、次の比較表で確認してみましょう。

病名 耳管開放症 耳管狭窄症
状態 耳管が開いたままになる 耳管が塞がれたり狭くなったりする
主な原因 急な体重減少、妊娠、体調不良、鼻すすり癖 風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎などの炎症
特徴的な症状 自分の声や呼吸音が響いて聞こえる(自声強調) 耳抜きができない
姿勢による変化 立位で症状が現れ、横になると改善する 姿勢による症状の変化はない
診断方法 耳用内視鏡で鼓膜の動きを観察 耳用内視鏡で鼓膜の動きを観察、耳管通気検査
主な治療法 生理食塩水の点鼻、漢方薬、鼓膜へのテープ貼付 原因となる炎症の治療、耳管通気

耳管狭窄症と耳管開放症は、ともに耳が詰まった感じや聞こえにくさなど共通の症状があります。

そのため、素人ではどちらの病気を発症したか、判断するのは難しいでしょう。

また治療もそれぞれ異なります。適切な診断と治療をするためにも、専門医の診察をうけることが重要です。

また耳管狭窄症とよく似た耳の病気の1つに突発性難聴があります。

こちらは、早期発見・治療をしなければ聴力が元に戻らなくなる可能性があるので注意が必要です。

突発性難聴を発症した場合、耳が詰まったような感じや聞こえづらさだけでなく、吐き気や頭痛が伴うことがあります。

耳管狭窄症を放置するリスク

耳管狭窄症は軽症の場合、鼻や喉の炎症が治まると自然治癒することもあります。

しかしながら、長引くと耳が聞こえづらくなったり、別の耳の病気を併発することもあるため注意が必要です。

ここからは、耳管狭窄症を放置するリスクについて見ていきましょう。

中耳炎

耳管狭窄症を放置すると、中耳の鼓室内に滲出液が溜まり中耳炎になります。

耳管狭窄症になると、耳の中の通気性が悪くなり中耳の鼓室内の気圧と鼻腔内の気圧に差が生じるためです。

中耳の鼓室内の気圧が下がることで、鼓膜が凹み気圧を均等にするため引っ張られます。

その結果、鼓膜の周囲の毛細血管が傷つき、その傷を修復しようと滲出液が鼓室内に溜まります。

耳管狭窄症から中耳炎になるまでのメカニズム
  1. 耳管狭窄症により耳管が狭くなる
  2. 耳管に空気が通りづらくなるため鼓室内の圧力が外気より低くなる
  3. 鼓室内の圧力により鼓膜が内側に引っ張られる
  4. 鼓室内の周囲の血管から体液が漏れ出す(滲出性中耳炎)
  5. 滲出液が溜まることで細菌やウイルスが内耳に増殖
  6. 急性中耳炎が発生

滲出液は本来、傷を修復する役割を担っているので悪いものではありません。

しかしな耳管狭窄症で、耳管が塞がれた状態のまま鼓室内に滲出液が溜まると、通気性が悪いため細菌やウイルスが増殖しやすい環境となります。

その結果、滲出液に細菌やウイルスが増殖。中耳の鼓室内に炎症を引き起す急性中耳炎を発症してしまいます。

聴力低下

耳管狭窄症を放置すると、鼓膜の機能が悪くなり聴力が低下します。

耳管狭窄症になると、中耳の鼓室内の気圧が低くなり、鼓膜が凹んでしまうためです。

鼓膜が凹むと動きが制限され、音の振動が脳に伝わりにくくなり聞こえが悪くなります。

鼓膜が凹んだ状態が長く続くと、鼓膜が周囲の組織に癒着して難聴になってしまうこともあります。

耳管狭窄症になりやすい人

耳管狭窄症になりやすい人には次の特徴がありますので、確認しておきましょう。

  • アレルギー体質である
  • 感染症にかかりやすい
  • 慢性鼻炎や副鼻腔炎を患っている
  • 気圧変化が生じやすい職業に勤めている
  • 高齢者
  • 鼻すすりのくせがある

これらの特徴が複数当てはまる場合、耳管狭窄症のリスクが高まります。

また、鼻やのどの炎症がなくても、高齢になると耳管の弾力性が低下し、耳管が開きにくくなる事があるため注意が必要です。

耳管狭窄症の検査

耳管狭窄症の検査では、鼓膜の状態を確認します。

耳管狭窄症により、耳管が狭くなったり塞がれたりすると、中耳の鼓室内の気圧が下がり鼓膜が内側に凹むためです。

このとき、行われる検査がティンパノメトリー(鼓室圧検査)と呼ばれるものです。

外耳から鼓膜に圧力をかけて、鼓膜の動きを確認します。

  • 鼓膜が正常な場合…外耳道に圧力を加えないときに鼓膜の動きが最も大きくなる
  • 耳管狭窄症の場合…外耳道を減圧していくと鼓膜が動きやすくなる

検査は片耳数十秒で終わり、痛みもないため小さなお子さんも痛みに敏感な大人の方も安心して受けられるでしょう。

また、アデノイド肥大や腫瘍によって耳管が狭くなっていることも。そのため、内視鏡検査でアデノイド肥大や腫瘍の有無を調べることもあります。

耳管狭窄症の治療方法

耳管狭窄症の治療は、まず原因となっている鼻やのどの炎症を抑えるために薬物療法を行います。

耳の不快感や聞こえにくさを解消するため、耳管通気法も並行して実施します。

薬物療法や耳管通気療法を3ヵ月程度実施しても、改善が見られない場合は手術療法が行われます。

耳管通気療法

鼻から耳に空気を送る治療法です。中耳の鼓室内と外気の圧力を等しくしたり、鼓室内に溜まっている滲出液を外に排出したりします。

耳管通気法には次の2つの方法があります。

  • カテーテル法
  • ポリッツェル法

「バルサルバ法」と呼ばれる、自己通気法もありますが、これは強くし過ぎると鼓膜が傷ついたりする可能性があります。医師の指導のもと、適切に行いましょう。

手術療法

耳管を狭くさせたり、塞いだりする原因となる炎症を抑える薬物療法や耳管通気療法を実施しても、症状が改善しない場合は、手術療法が検討されます。

耳管狭窄症の手術では、鼓膜を切開し小さな穴が空いたチューブを入れて空気の通り道を人工的に作る「鼓膜チューブ留置術」が実施されます。

また耳管を塞いでいる原因が、アデノイド肥大であれば、アデノイド切除を、腫瘍の場合は放射線治療や化学療法や摘出手術などが検討されるでしょう。

教えて院長先生!耳管狭窄症に関するよくある質問Q&A

耳管狭窄症に関するよくある質問とその回答をお答えいただきます。

耳管狭窄症と診断された場合、日常生活で気を付けるべきことはありますか?

鼻の状態を悪くしないことやかぜをひかないようにすることです

耳抜きができないのは耳管狭窄症が原因ですか?

さまざまな原因が考えられるので、耳管狭窄症のみではないと思います。

まとめ

冬は空気が乾燥しており、鼻や喉の粘膜が乾きやすいことから身体のバリア機能が低下しがちです。

そのため、感染症にり患しやすく鼻やのどの炎症が耳管にまで及び、耳管狭窄症になりやすくなります。

まとめ
  • 耳管狭窄症になると鼓室内の気圧と大気圧に差が出て聞こえに影響が出る
  • 耳管狭窄症を放置すると中耳炎となり治療がながびく
  • 耳管狭窄症と似た症状に突発性難聴があるがどちらも素人では区別できない

耳管狭窄症の初期症状は、耳が詰まったような感じがするだけで、痛みやかゆみなどを伴わないため、ついそのままにしてしまいがちです。

しかしながら、鼓室内と大気の圧力が異なることが続くと、聴力が低下したり、鼓室内に水が貯まり中耳炎になったりと生活に支障がでるような症状も出てきます。

また早期治療が必要な突発性難聴である可能性もあるため、聞こえづらさや耳の詰まりを感じたら最寄りの病院へ受診しましょう。

福岡市東区名島にお住まいで、耳のつまりや聞こえづらさを感じたら、あだち耳鼻咽喉科へお越しください。

あだち耳鼻咽喉科では、耳管狭窄症の検査や治療はもちろんのこと、他の病気を併発していないか診察することができます。

感染症にり患した後は、鼻や耳の病気もかかりやすいタイミングなので、気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師