耳が痛いと不安になりますよね。
小さな子どもの場合には耳の痛みをうまく訴えられず、不機嫌になったりぐずぐずになったりすることもめずらしくありません。
耳の痛みの原因となる病気はさまざまあり、放っておくとさらに悪化することもあり、早めの対処が肝心!
また、耳は音を聴く他にも、平衡感覚をつかさどる大切な身体の器官でもあり、痛みなどの異常を感じたらできるだけ早く病院を受診することが重要です。
今回は耳の痛みの原因となる病気について、それぞれ詳しく解説します。
耳の痛みの原因は?
耳が痛むのは、その多くが耳に生じる病気が原因。
耳は「内耳」「中耳」「外耳」の3つで構成されており、痛みの原因となるのは中耳と外耳が関係する病気の場合がほとんどです。
また、耳の周辺の病気が原因で痛みが引き起こされるケースもよくあります。
いずれの場合も痛みの原因となる病気を明らかにし、適切な治療を受けることが治癒への近道です。
耳の痛みを引き起こしやすい代表的な病気
耳の痛みが症状としてあらわれやすいのは、次の2つのケースです。
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
ズキンとする激しい耳の痛み【急性中耳炎】
ズキズキとする激しい耳の痛みや耳だれ、発熱、耳がつまった感じがみられ、とくに乳幼児に多くみられます。
中耳(鼓膜の奥にある空洞)が細菌やウイルスに感染し、急性の炎症を引き起こし膿が溜まっている状態です。
小さい子どもはうまく症状を訴えられず、機嫌が悪かったり耳に手を当てる仕草をしたりすることも。
理由もなく子どもがぐずっているようにみえるときは、もしかすると耳が痛いのかもしれません。パパやママは注意深くみてあげてくださいね。
抗生物質や消炎剤を使って治療し、症状がひどい場合には鼓膜を切開して膿を出す処置をすることもあります。
かゆみをともなう強い耳の痛み【外耳炎】
強い耳の痛み、かゆみや赤み、腫れ、黄色や白の耳だれなどがみられ、おもに耳かきのしすぎによって大人によくみられます。
耳を引っ張ったり押したりすると痛みがあるのも特徴です。
プールで泳いだあとにも起こりやすいことから「スイマーズイヤー」と呼ばれることもあります。
外耳道(耳の入り口から鼓膜まで)が細菌(まれに真菌のことも)に感染し、炎症を引き起こすことが原因です。
まずは耳に溜まっている分泌物を除去、消毒し、点耳薬や軟膏を処方することで多くの場合は治ります。
炎症が広範囲に渡る場合などは抗菌薬や抗アレルギー薬などの内服が必要となることもあります。
薬での治療だけでなく、耳をむやみにいじらないことが悪化や再発を防ぐポイントです。
突然起こる耳の激痛【外耳道異物】
昆虫などの異物が耳の中に入り込んで激痛を感じることが稀にみられます。すぐに耳鼻科を受診して、取り除いてもらいましょう。
他にもある、耳の痛みを生じるさまざまな病気
耳の痛みが生じる頻度が高いのは急性中耳炎と外耳炎ですが、ほかにもさまざまな病気の症状として耳の痛みはあらわれます。
また、必ずしも耳に関する病気とは限らないこともあり、他にみられる症状も合わせてチェックしておきましょう。
熱をもった耳の痛みや耳たぶの腫れ【耳介軟骨膜炎】
耳介軟骨膜炎は耳たぶが赤く腫れ上がり、熱をもって激しく痛み、ひどくなると発熱をともなうことがある病気です。
虫さされや切り傷、打撲などの怪我や外耳炎が原因で、耳たぶの軟骨膜へ炎症が及び、放置しておくと徐々に軟骨が壊死し、耳たぶが変形してしまうこともあるので注意が必要です。
治療は抗生剤や消炎鎮痛剤を用いて早めに対応し、耳たぶの変形など症状が重くなるのを防ぎます。
また、腫れを抑えるために冷やすことも有効です。
耳たぶの後ろが腫れて痛みをともなう【乳様突起炎】
耳たぶの後ろにある「乳様突起」と呼ばれる骨が腫れ、多量の耳だれや頭痛、発熱、耳の痛みをともなう病気です。
急性中耳炎の悪化にともない、中耳の感染が乳様突起に広がることで引き起こされます。
放っておくと乳様突起の骨の内側に膿が溜まることもあり、さらに難聴や敗血症、髄膜炎などが生じ、最悪の場合死に至ることもあるため注意が必要です。
治療では抗菌薬や抗生物質の服用、悪化や慢性化している場合には手術によって膿を排出しなければならないケースもあります。
耳たぶ前方の小さな穴が腫れて痛みをともなう【耳ろう孔感染】
耳ろう孔とは、遺伝性の耳たぶの前にある小さな孔のこと。その下にある袋の中の分泌物が感染を起こすと孔のまわりに痛みを感じることがあります。
ときには周囲の皮下組織にまで炎症が広がり、赤みや腫れ、膿がたまり激しい痛み引き起こすことも。
耳ろう孔の下にある袋の中の分泌物は、普段は自然に排出されたり、周囲を押すことで出てきたりしますが、時折感染の原因となり、炎症を引き起こしてしまうケースがみられます。
感染が確認されたら、抗生剤や消炎鎮痛剤などを服用して、治療をおこないます。
症状がひどい場合には切開して膿を排出し、皮下にある袋ごと孔を摘出する手術をおこなう必要があります。
物を飲み込むときに耳の奥が痛む【咽頭炎など:放散痛】
急性扁桃炎などの喉の炎症、腫瘍性病変では喉の痛みや発熱、倦怠感に加え、食べ物を飲み込むときなどに耳が強く痛むことがあります。
喉は耳に近く、放散痛と呼ばれており、耳にまで痛みが及んでしまうためです。
扁桃炎では扁桃腺(口蓋扁桃)が細菌やウイルスに感染して赤く腫れ、悪化すると膿栓と呼ばれる白い斑点のようなものがあらわれたり、表面に白いコケのように膿が貼りついたりします。
治療では抗生剤や鎮痛消炎剤などを服用したり、扁桃に直接消毒薬を塗ったりするなどして対応します。また、腫瘍の疑いがある場合は精査する必要があります。
咀嚼に合わせて耳が痛む【顎関節症】
口を開けると顎関節が痛んだり、口が開きにくくなったりする顎関節症も、耳の痛みを感じることがあります。
咀嚼に合わせて耳が痛むことも多く、耳の病気になったと勘違いして耳鼻科に来られる方もめずらしくありませんが、顎関節症の可能性がある場合は歯科や口腔外科を受診しましょう。
あごの筋肉を使い過ぎたり、無理に口を開け過ぎたりする場合の他に、あごのまわりの組織が変形することも原因となります。
顎関節症は原因や症状から4つのタイプに分けられ、それぞれ適切な治療が施されます。
強い耳の痛みと耳のまわりに水ぶくれができる【耳帯状疱疹】
帯状疱疹とは、神経節に潜んでいる水痘帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうを引き起こすウイルス)が再活性化し、皮膚の強い痛みや水ぶくれが症状としてあらわれる病気です。
耳帯状疱疹の場合は、顔の筋肉をコントロールする神経や、聴覚や平衡感覚をコントロールする神経でウイルスが再活性化することで引き起こされます。
皮膚のただれや水ぶくれなどの一般的な帯状疱疹の症状に加え、耳の痛みや回転性のめまい、難聴などの症状があらわれることも。
治療はウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬やステロイド薬などの薬物療法が中心です。
治療が遅れると、顔面麻痺や難聴などが残るおそれがあるため、異変を感じたらできるだけ早く病院を受診しましょう。
また、疲れやストレスがたまり、抵抗力が落ちているときに発症しやすいため、体調や食事の管理も重要です。
神経の痛み【神経痛】
三叉神経痛や舌咽神経痛により耳が痛くなることがあります。
いずれも突然激痛が走るものです。血管走行異常や腫瘍性病変などが神経を圧迫することでおこる症状です。
突然耳の痛みを感じたら?
耳の痛みを突然感じたら、どのように対応するのが正解でしょうか?
冷やして痛みを軽減させる
耳に痛みを感じた場合、冷たいタオルや保冷剤を使って患部を冷やすと一時的に痛みが軽くなります。
耳の周りなど痛みを感じる場所や、首の後ろを冷やすのも効果的です。
保冷剤を肌に直接当てると低温やけどや凍傷の危険性があるので、タオルでくるんで冷やすようにしましょう。
鎮痛薬を服用してもいい?
耳の痛みに対して鎮痛剤を服用する方法もあります。
急性中耳炎や外耳炎などが疑われ、夜間や休日に受診できない場合は、痛みを我慢するより市販の鎮痛剤を服用して乗り切るのもひとつの手段です。
ただし、耳の痛みに加えて頭痛やめまい、顔が曲がる(麻痺)などの症状がある場合は、早急に病院を受診するようにしましょう。
耳の病気が疑われる場合は耳鼻咽喉科を受診する
耳の痛みは冷やしたり鎮痛剤を服用したりすることで一時的には落ち着きますが、放っておかずにできるだけ早く病院を受診しましょう。
痛みなどの症状をそのままにしておくと、耳の病気の場合は難聴になるなど悪化するおそれがあります。
まとめ
耳の痛みはつらいもの。大人でも我慢するのがつらいのですから、子どもはなおさらですよね。
耳の痛みを引き起こす病気はさまざまですが、いずれも放っておくと悪化してしまうため、できるだけ早く対処することが重要です。
また、思わぬ病気が隠れている場合もあるため、安易な自己判断で放置するのはNG。
- 耳の痛みを引き起こす代表的な病気は「急性中耳炎」と「外耳炎」
- 耳の痛みを引き起こす原因は耳の病気だけでなくのどやあごなどの場合もある
- 耳の痛みを感じたら、冷やす・鎮痛剤を服用するなどして落ち着かせてもよい
耳の痛みは我慢せず、できるだけ早く耳鼻咽喉科など専門医を受診しましょう。