季節の変わり目は、風邪や季節性アレルギーを発症しやすくなる時季です。
しかしながら、数時間~数日間という短い期間に何度も鼻水や鼻づまり、咳の症状があらわれる人もいるのではないでしょうか。
もしかするとその症状は寒暖差アレルギーかもしれません。
この記事では寒暖差アレルギーの原因から症状、発症を抑えるための対策をわかりやすく解説します。
当院での治療法やよくある質問についてもまとめましたので、この記事を読んで季節の変わり目を快適に過ごしましょう。
目次
寒暖差アレルギーとは
寒暖差アレルギーには「アレルギー」という言葉が含まれていますが、実はアレルギーではありません。
なぜなら、一般的なアレルギーは特定のアレルゲンに体が過剰に反応してしまうのに対し、寒暖差アレルギーにはアレルゲンが存在しないからです。
寒暖差アレルギーは正確には「血管運動性鼻炎」と呼ばれます。
血管運動性鼻炎は、気温の変化やストレス、刺激物などに対して鼻の血管が過剰に反応し、症状があらわれます。
寒暖差アレルギーの原因
寒暖差アレルギーの主な原因は、まだはっきりとわかっていません。しかしながら、主な原因の1つに自律神経の乱れが挙げられます。
自律神経は私たちの体温調節、心拍数などの生命維持活動をコントロールする神経です。
この神経のバランスが乱れると、外部環境の変動、とくに気温の変化に対して、過敏に反応するようになります。
体感の温度差が7度以上になると、寒暖差アレルギーの症状が発症しやすくなるというデータが報告されています。
自律神経の乱れにより、寒暖差アレルギーが発症するメカニズムは次の通りです。
- 体内の機能を調節する自律神経が乱れる
- 身体が急な気温の変動に対して対応できなくなる
- 鼻粘膜または呼吸器官の血管が急激に膨張したり収縮したりする(暖かい場所では膨張、寒い場所では収縮)
- 鼻や気管支の粘膜が腫れたり乾燥したりする
- 寒暖差アレルギーの症状があらわれる
寒暖差アレルギーは原因がはっきりとわかっていないため、完治することは難しいとされています。
寒暖差アレルギーの症状があらわれたら、対症療法や生活習慣の改善、環境の調整などで症状を緩和させましょう。
寒暖差アレルギーの症状
寒暖差アレルギーになると、急な温度変化に身体が適応できず、さまざまな症状があらわれます。
鼻の症状
寒暖差アレルギーによる鼻の症状は次の通りです。
- 鼻水
- 鼻づまり
- くしゃみ
気温の変化により、鼻腔内の粘膜の毛細血管が収縮または膨張し、鼻水や鼻づまりの症状があらわれます。
また冷たい空気を鼻から吸い込むと鼻粘膜が刺激され、私たちの身体がこれを外部の刺激物だと勘違いすることもあります。
外部の刺激物を鼻腔から迅速に排出しようとする身体の反応として、くしゃみを引き起こしてしまうこともあります。
呼吸器官の症状
寒暖差アレルギーによる呼吸器官の症状は次の通りです。
- 喉の痛み
- 喘息様症状
- 咳
気温の低下や湿度の変動により、喉の違和感や痛みがあるのも寒暖差アレルギーの症状の1つです。
また冷たい空気を吸い込むと、気道が収縮しやすくなり、息苦しさや喘息の発作を引き起こすこともあります。
鼻症状と同じく、冷たい空気を外部の刺激物だと身体が勘違いし、排出しようと咳の症状があらわれることもあります。
呼吸器官の症状
寒暖差アレルギーによってあらわれる皮膚の症状は次の通りです。
- 肌のブツブツ
- 肌の赤み
- 肌のかゆみ
寒暖差アレルギーによってあらわれる、皮膚のかゆみや赤みは「寒冷じんましん」とも呼ばれます。
寒冷じんましんのメカニズムはまだはっきりとわかっていません。
寒冷刺激により、ヒスタミンという物質が体内に大量に分泌されることで、皮膚のかゆみや赤みなどの症状があらわれると考えられています。
寒冷じんましんは、全身に症状があらわれるアレルギー反応と異なり、局所的に症状があらわれるのが特徴です。
冷たいものに触れた部分だけ皮膚の症状があらわれます。
また皮膚のかゆみや赤みは、長くても半日で消えるのがほとんどなので、そのまま様子をみても問題ありません。
寒暖差アレルギー3つの対策
寒暖差アレルギーの症状は、事前に対策をおこなうことで発症リスクを低減させることができます。
ここでは、今日からできる寒暖差アレルギーの対策をご紹介します。
体感の温度差をできる限り小さくする
寒暖差アレルギーの症状を抑えるには、体感の温度差をできるだけ小さくするよう意識しましょう。
なぜなら、寒暖差アレルギーは体感の温度差が7度以上になると発症しやすくなるからです。
とくに夏の冷房や冬の暖房は、体感の温度差を大きくします。
空調の温度を適切に管理するのはもちろんのこと、エアコンの風が直接肌にあたらないよう風向きの調整もしましょう。
しかし、多くの人が集まるオフィスでは、個人の体感に合わせて空調を調整するのが難しいこともあります。
体感の温度差をできるだけ小さくするため、着脱しやすいベストやカーディガンなどで、こまめに調整しましょう。
また、冬の外出時には帽子やマフラー、手袋などを利用して体を冷やさないようにする調整も効果的です。
適度な運動をする
寒暖差アレルギーの症状を緩和させるため、ストレッチやウォーキングなど適度な運動を取り入れましょう。
適度な運動によって、筋力がアップすると基礎代謝が上がり、体温が上がりやすくなるからです。
体温が低いと自律神経が乱れやすくなり、寒暖差アレルギーの発症リスクが高まります。
適度な運動で筋肉がつくと、体で作られる熱量が増えます。
その結果、体温が上がり自律神経の乱れを抑えられるため、寒暖差アレルギーの発症リスクを減少させることが期待できるのです。
また運動は体の血流を良くし、免疫力を上げる助けにもなるため風邪やアレルギーの発症を抑える効果も期待できます。
規則正しい生活やストレス緩和に努める
寒暖差アレルギーの症状を抑えるため、規則正しい生活を心がけましょう。
睡眠や食生活が乱れると、自律神経のバランスが崩れて寒暖差アレルギーの発症リスクが高まるからです。
毎日同じ時間に起きて寝ることや、バランスのよい食事を心がけることで、自律神経を整えることができます。
また、過度なストレスも自律神経の乱れを引き起こします。
心身のリラックスや気分転換になることを適度に取り入れて、ストレス解消に努めましょう。
耳鼻科でおこなう寒暖差アレルギーの治療法
寒暖差アレルギーは一時的な症状なので多くの場合、早くて数十分、長くても数日で症状が治まります。
しかし、寒暖差アレルギーは急激な体感温度の差によって起こるため、再発のリスクがあります。
また体質により鼻水や鼻づまり、咳などの症状が強く出てしまうこともあるので注意が必要です。
寒暖差アレルギーの症状がつらいときは、耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
耳鼻咽喉科では症状を和らげるため、抗ヒスタミン薬やステロイドの点鼻薬などを処方する薬物療法がおこなわれます。
薬を服用しても症状が緩和しない場合は、「下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術」というレーザー手術がおこなわれることもあります。
教えて院長先生!よくある質問Q&A
寒暖差アレルギーについて、よくある質問を院長先生にお答えいただきます。
寒暖差アレルギーになりやすい人に特徴はある?
寒暖差アレルギーになりやすい人の特徴は次の通りです。- 女性
- 40歳以降の人
- 乾燥肌の人
- 花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーを持つ人
- 喘息や気管支炎の既往歴がある人
ここでとくに注目したいのが、女性や40歳以降の人です。
女性は、ホルモンバランスの変動により自律神経が乱れやすいため、気温の変化に敏感になりやすくなります。
また40歳を過ぎると、加齢とともに体温調整機能が低下し、気温の変動による影響を受けやすくなります。
寒暖差アレルギーとアレルギー性鼻炎、風邪の違いとは?
それぞれの発症の原因と主な症状、治療法を以下にまとめました。
項目 | 原因 | 主な症状 | 治療 |
---|---|---|---|
寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎) | 気温の変化、自律神経の乱れなど | 鼻水、鼻づまり、くしゃみ、皮膚のかゆみ | 環境調整、薬物療法 |
一般的なアレルギー | アレルゲンへの反応 | くしゃみ、鼻水、皮膚のかゆみ、目の充血・かゆみ | 薬物療法、アレルゲン除去 |
風邪 | ウイルスや細菌 | 咳、鼻水、喉の痛み、熱 | 休養、薬物療法 |
寒暖差アレルギーは、気温の急な変動や自律神経の乱れからくる体の過敏な反応としてあらわれる症状で、アレルギー反応と異なります。
そのため、アレルギー性鼻炎の主な症状である目のかゆみや充血などの症状がありません。
また風邪のような体のだるさはありますが、ウイルスや細菌にかかっているわけではないため、発熱や頭痛などの症状があらわれることはありません。
あだち耳鼻咽喉科では寒暖差アレルギーをどのように診断しますか?
鼻水の性状などから見分ける方法はないですが、発症原因で推測しています。
多いのは食事をすると鼻水がでるといったことです。
なので、長く続くというよりは都度症状がおこるという感じがあれば、寒暖差アレルギーを疑います。
また、採血でアレルギーが無いような場合も血管運動性鼻炎の可能性があります。
ただ、アレルギーでは無いので、抗アレルギー剤より小青竜湯などの漢方薬の方が効果がある場合もあります。
まとめ
寒暖差アレルギーは気温差に体が適応できずに、アレルギーのような症状がでてしまう病気です。
症状は一時的なものなので、そのまま様子をみても重症化することはほとんどありません。
しかし、体質によっては日常生活に支障が出てしまうこともあります。
咳や鼻水などの症状でお困りの方は、早めに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
寒暖差アレルギーではなく別の病気の症状である可能性もあります。
- 寒暖差アレルギーはアレルギーではない
- 寒暖差アレルギーは自律神経の乱れによって発症しやすくなる
- 寒暖差アレルギーの症状は軽度だが何度も再発する
なお寒暖差アレルギーは、自律神経の乱れや体感温度差が7度以上になると症状があらわれやすくなると言われています。
部屋と外の温度差が小さくなるよう上着や小物で調整したり、自律神経が整うよう規則正しい生活したりすることを心がけましょう。
気になる症状があればぜひあだち耳鼻咽喉科へご相談ください。