インフルエンザはよくある感染症のひとつですが、高熱や倦怠感などつらい症状が出たり、場合によっては重症化や命を脅かしたりするおそれもあるため、とくに小さい子どもや高齢者がいる家庭では感染しないよう注意したいですよね。
毎日の手洗いやマスクなどもインフルエンザへの感染予防の役割を果たしますが、もっとも効果的なのがワクチンの予防接種。
しかし「予防接種を受けても感染するから」「インフルエンザワクチンは副反応が怖いから」といった理由で接種しない場合も少なくないようです。
この記事では、インフルエンザの予防接種の効果やタイミング、気になる副作用について解説します。
目次
インフルエンザの予防接種には効果があるの?
インフルエンザワクチンには発熱や筋肉痛、倦怠感といった症状があらわれる「発病」を抑える効果と、「重症化」を防ぐ効果が一定程度あるとされています。
とはいえ、じつは他の感染症のワクチンに比べて発病を防ぐ効果は高くありません。
インフルエンザのワクチンは前年に流行株を予測してつくられるため、必ずしも予想が当たるとは限らず、またウイルス自体が変異するため、発病を防ぐ効果はそれほど高くはありません。
しかし、それでもインフルエンザの予防接種をおすすめするのは、ワクチンによって重症化を防ぐことにつながるからです。
インフルエンザを発病すると、なかには肺炎や脳症など重い合併症を引き起こすことがあり、入院による治療が必要となったり、場合によっては死亡してしまうこともあります。
とくに何らかの基礎疾患を持っている方や、抵抗力の弱い高齢者や乳幼児は重症化の危険性が少なくありません。
そのためインフルエンザワクチンの予防接種を受けておき、もし発病したとしても重症化するリスクを少しでも下げておくことが重要です。
とくに65歳以上の高齢者では接種が推奨されます。
高齢者のインフルエンザ予防接種は、新型コロナウイルスの医療体制の負担を減らすことにも繋がります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

予防接種を受けてもインフルエンザにかかることはある?
確かにワクチンを接種しても、インフルエンザに感染することはあります。
上でも述べたように、インフルエンザワクチンには発病と重症化を「一定程度」抑える効果が認められていますが、100%ではありません。
しかし発病や重症化、死亡のリスクを下げることは各種研究で明らかとなっており、ワクチン接種は効果的であるとの見解が一般的です。
「どうせ予防接種を受けてもかかるなら接種しなくてもいい」など思わずに、万が一のリスクを下げるためにワクチンを接種することをおすすめします。
インフルエンザの予防接種を打つ効果的なタイミング
インフルエンザワクチンは11月中には接種を終えておくのが理想的です。
ワクチンの効果は予防接種を受けてすぐあらわれるわけではありません。接種してから2週間ほど経ってようやく抗体(免疫)がつくられます。
そのため、例年インフルエンザの本格的な流行が始まる12月には抗体がつくられておくように逆算し、11月中に予防接種を受けておくのがおすすめというわけです。
また、13歳未満の子どもは2~4週間の間を空けて2回の接種が必要なため、1回目を10月中に受けておくとよいでしょう。
子どもはいつからインフルエンザの予防接種を受けられる?
インフルエンザワクチンは生後6ヶ月から受けられますが、1歳未満では効果が低いとされ、積極的な接種はすすめられていません。
ただし、保育園に通っているなどの場合は感染リスクを少しでも減らすため、医師との相談の上接種してもかまわないでしょう。
しかし、乳幼児のインフルエンザ発病を防ぐためには、まず親やきょうだいが感染しないようワクチンを接種しておくことをおすすめします。
また、重い卵アレルギーがあると接種が難しい場合もあるため、かかりつけの医師に相談するといいですね。
インフルエンザの予防接種の効果が持続する期間
インフルエンザの予防接種は一度受ければずっと効果が持続するわけではありません。
一度できた抗体が持続する期間は5ヶ月ほどと考えられており、11月に接種を終えた場合は翌年4月ごろまでは効果が続くといえます。
インフルエンザの予防接種による副反応や副作用
インフルエンザワクチンは感染力のない不活化ワクチンのため、接種することで発症することはありません。
ですので、妊婦や授乳中のかたも、接種することは可能です。
しかし、次のような副反応や副作用があらわれることがあります。
接種した箇所の腫れや全身症状
比較的多くみられるのが接種した箇所の赤みや腫れ・痛み。発熱や頭痛、悪寒、だるさといった全身症状です。
いずれも10~20%ほどの確率で起こりますが、通常接種後2~3日でおさまります。
ショックやアナフィラキシー様症状
まれにショックやアナフィラキシー様症状(発疹・じんましん・発赤・かゆみ・呼吸困難など)が起こることもあり、そのような場合にはすみやかに医師に相談するようにしましょう。
とくに乳幼児の場合は接種後30分は病院で様子を見ておくことをおすすめします。
重い副反応
まれに次にような重い副反応と思われる症状の報告もあります。
- ギランバレー症候群
- 急性脳症
- 急性散在性脳脊髄炎
- けいれん
- 肝機能障害
- 喘息発作
- 血小板減少性紫斑病
加えて、季節性インフルエンザワクチンの接種が原因と疑われる死亡例は毎年0~3例ほど報告され、その多くが基礎疾患を持つ高齢者だと判明しています。
しかし、報告された重篤な副反応や死亡例がインフルエンザワクチンが原因であるかどうかは必ずしも明らかではありません。
一方で、インフルエンザへの感染による死亡例は年間214(2001年)~1818(2005年)人となっており、間接的なインフルエンザによる死亡者数は年間1万人にも及ぶといわれています。
ワクチンを受けることによる重篤な副反応や死亡者数、感染による重症化や死亡者数を比べると、どちらがよりリスクが少ないかは明らかですよね。
必要以上にインフルエンザワクチンを恐れるのではなく、正しく知って納得した上で接種するのが重要です。
まとめ
インフルエンザの予防接種を受けても発症することもあるため効果がなく、受ける必要はないと思っている方も多いかもしれません。
また、ワクチン接種による副反応を必要以上におそれている場合も少なくないようです。
しかしインフルエンザを防ぐためには手洗いやバランスのいい食生活、十分な休養はもちろん予防接種がもっとも効果的だと考えられます。
- インフルエンザの予防接種は100%ではないものの、予防の効果がある
- インフルエンザ流行期全体をカバーするには11月中に接種を終わらせておくのが理想的
- インフルエンザワクチンによる副反応は比較的軽い場合がほとんど
インフルエンザは予防接種に関する情報を正しく知り、効果的に防ぎたいですね。
- 厚生労働省「インフルエンザQ&A」
- 厚生労働省「新型インフルエンザに関するQ&A」
