気温と湿度が上がる梅雨は、人にとって億劫な季節ですがダニにとっては快適な季節です。
ダニは5月~7月にかけて繁殖し、ダニのフンと死骸が増える秋にはアレルゲンとして私たちに襲い掛かります。
ダニアレルギーは、くしゃみや鼻水・鼻づまりだけでなく、皮膚疾患や喘息症状を悪化させる恐れがあるので注意が必要です。
そこで、今回は夏から対策しておきたいダニアレルギーとは何か、花粉症との違いや治療法について解説します。
ダニアレルギーとは
ダニアレルギーとは通年性アレルギーの1つで、ダニのフンや死骸が原因で、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状が生じる病気です。
目や鼻に侵入したダニのフンや死骸を体外に排出しようと免疫機能が過剰にはたらくことで発症します。
ダニアレルギーと花粉症の違い
ダニアレルギーは、花粉症と異なり季節を問わずダニのフンや死骸が体内に侵入したときに症状があらわれます。
花粉症の場合、花粉の飛散が収まると同時に症状が落ち着くことがほとんどです。
しかし、ダニアレルギーの場合、ダニのフンや死骸が多い環境下では1年を通して症状があらわれます。
ダニアレルギーが発症するメカニズム
ダニアレルギーの原因がわかったところで、どのようにダニアレルギーが発症するのか、そのメカニズムを見てみましょう。
- 高温多湿の夏にダニが繁殖する
- 湿度と気温が下がりダニが死滅する
- 乾燥によりダニのフンや死骸が粉々になる
- 粉々になったダニが体内に侵入。
- 体内のダニを排除するため「IgE抗体」がつくられる
- 再びダニが体内に侵入したときにアレルギー症状が発症する
乾燥して粉々になったダニのフンや死骸は、0.001ミリメートル以下の非常に小さいチリとなります。
そのため、空気中に浮遊しやすく呼吸とともに体内に侵入しやすくなります。
ダニアレルギーの発症時期とダニの種類
家に潜むダニの種類は、主にチリダニとツメダニですが、アレルギーの原因となるのはチリダニです。
チリダニの代表種は、ヤケヒョウダニとコナヒョウダニの2種ですがこれらチリダニは人を刺しません。
しかし、ヤケヒョウダニとコナヒョウダニの生体や死骸・フンはアレルギー発症の原因になります。
ヤケヒョウダニとコナヒョウダニは、気温と湿度が上昇する5月~7月にかけて繁殖のピークを迎え、真夏を過ぎると暑さで死滅していきます。
湿度と温度が低下する9月~11月になると、フンと死骸が乾燥して舞いやすく、ダニが体内に侵入しやすくなるため注意が必要です。
またダニアレルギーを疾患している人は9月~11月にかけて、症状が悪化しやすくなる傾向があります。
ダニアレルギーの症状
ダニアレルギーの主な症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみと花粉症とほぼ同じです。
ただ、ダニアレルギーはときに喘息症状やアトピー性皮膚炎などの症状を引き起こすことがあります。
アレルギー性鼻炎
ダニアレルギーの症状の1つにアレルギー性鼻炎があります。
くしゃみ、透明なサラサラの鼻水、鼻づまりが特徴です。
鼻水と鼻づまりにより口呼吸になりやすく、乾燥した空気がそのまま体内に入るため、感染症のリスクが高まります。
アレルギー性結膜炎
ダニアレルギーの症状の1つにアレルギー性結膜炎があります。
結膜の炎症や目のかゆみ、目の異物感、涙が出るなどの症状があらわれるのが特徴です。
炎症が強くなると光をまぶしく感じたり、視力が低下したりすることもあります。
アトピー性皮膚炎
ダニアレルギーの症状の1つにアトピー性皮膚炎があります。
アトピー性皮膚炎になると強いかゆみをともなう湿疹が収まったり、発症したりを繰り返します。
アトピー性皮膚炎の原因は、ダニだけでなくさまざまな原因が複雑に絡み合っているため、治療が長引くことも少なくありません。
また皮膚状態が悪化すると、そこから細菌に感染しさらに皮膚状態が悪くなるリスクもあるため注意が必要です。
気管支喘息
ダニアレルギーの症状の1つに気管支喘息があります。
乾燥してチリとなったダニの死骸やフンが、呼吸とともに体内に侵入すると、異物を排除しようと気管支の粘膜が炎症したり、大量の痰がたまったりするなどの症状があらわれます。
その結果、気管支の内側が狭まり、呼吸困難となる喘息発作が起こるのです。
喘息の患者の多くはアレルギーを持っており、ダニもアレルゲンの1つとなっています。
ダニアレルギー対策5選
人間が家で生活している限り、ダニを完全に排除することは難しいでしょう。
しかしながら、ダニ対策をすることで症状を最小限に抑えることが可能です。
ここからは、ダニアレルギー対策を5つご紹介します。
こまめな掃除でほこりを除去
こまめな掃除でダニやほこりを除去してダニアレルギーの症状を抑えましょう。
ダニアレルギーのアレルゲンはダニの死骸やフンですが、それ以外にも角質やフケ、カビやほこりはダニの栄養源となるため取り除く必要があります。
これらは空気に舞いやすいので、床にたまっている朝一番の掃除がおすすめです。
掃除をするときには、まず床を拭いてから掃除機をかけるようにします。
先に掃除機をかけてしまうと、床に落ちているダニの死骸やフン、ほこりなどを空気中に舞い上げてしまうためです。
掃除機の後、さらに水拭きをすればより効果的にアレルゲンを除去できます。
部屋の換気をする
部屋の換気や除湿で室内の風通しをよくし、ダニの繁殖を抑えましょう。
ダニアレルギーの原因となるダニは、高温多湿の環境を好む特徴があるためです。
ダニは温度が25℃前後、湿度65%以上の高温多湿な環境を好むので、換気をしたり除湿器を稼働させたりして、ダニの活動を抑制しましょう。
布団・毛布の丸洗い
布団・毛布を丸洗いしてダニの繁殖を抑えましょう。
布団は人の体温や汗で高温多湿になりやすく、ダニが繁殖しやすい環境になるためです。
ダニのアレルゲンは水に溶けやすいため、布団に掃除機をかけるよりも効果があります。
ただし、生乾きだとダニが爆発的に繁殖してしまう恐れがあるため注意が必要です。
布団の丸洗い・高熱乾燥をしてくれる業者もしくは、大型の洗濯乾燥機のあるコインランドリーを利用しましょう。
また、防ダニシーツや枕カバーを新調するのも効果が期待できます。
カーペットや絨毯をやめる
ダニの繁殖を抑えるため、カーペットや絨毯をやめるのを検討しましょう。
カーペットや絨毯はダニが好む環境を作り出すため、ダニの温存となりやすいためです。
毎日掃除機をかけたとしても、アレルゲンをすべて取り除くことは難しいでしょう。
また床にカーペットや絨毯があるとほこりを除去しにくくなります。
防ダニ用の殺虫剤を使用する
ダニの繁殖を抑えるため、防ダニ用の殺虫剤の利用を検討しましょう。
ダニは寝具やカーペットの中にもぐりこんでいるため、直接触れさせることは難しいですが、研究結果によると、薬剤に触れたダニは90%以上の致死率があるとの報告があります。
殺虫剤の使用後、ダニは死滅しますがダニの死骸は残ったままなので死骸を除去するための清掃を忘れずにしましょう。
耳鼻咽喉科で行うダニアレルギーの治療
耳鼻咽喉科で行うダニアレルギーの治療法は花粉症の治療と変わりません。
花粉症と同じく、ダニアレルギーも完治は難しく、症状を抑える対症療法が一般的です。
薬物療法
くしゃみや鼻水、鼻づまりなどアレルギー性鼻炎のような症状があらわれたら、市販薬を服用する前に、まずは最寄りの耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。
アレルギー性鼻炎の症状が出たとしても、必ずしもダニアレルギーとは限らないからです。
他の耳鼻咽喉科疾患の症状である可能性もあるため、自己判断で市販薬を服用するとかえって症状がひどくなる恐れがあります。
免疫舌下療法
スギ花粉と同じく、ダニアレルギー性鼻炎にも免疫舌下療法が適用できます。
服用方法や期間はスギ花粉の免疫舌下療法と同じです。ダニアレルギーは季節問わず発症するため、1年中いつから始めても構いません。
しかしながら、ダニアレルギーを発症する人は、スギ花粉も併発している可能性が高いため、スギ花粉が飛散しない6月~12月の期間に治療を始めるのがおすすめです。
教えて院長先生!よくある質問Q&A
ダニアレルギーについて、よくある質問とその回答を院長先生が回答いたします。
ダニアレルギーは部屋が汚いから発症するのでしょうか?
一般的には正しいと思われます。やはり部屋の清掃はダニアレルギーの防止に重要と思われます。
秋の花粉症とダニアレルギーの発症時期は重なりますがこの2つは素人でも見分けられますか?耳鼻咽喉科ではどのように判断しますか?
秋の花粉症は花粉のサイズが小さいため、気道内に吸入されやすく、喘息様の咳症状を来しやすいとされています。
しかしながら、他のアレルギー症状はいずれも同様であるため、厳密に見分けることは難しいと思います。
まとめ
ダニアレルギーは老若男女関係なく、誰でも発症する可能性のある病気です。
日本は高温多湿となる「梅雨」の時期があるので、ダニを持ち込まないようにする対策には限界があります。
ダニアレルギーの発症や症状の悪化を防ぐためには、梅雨や夏の時期にダニの繁殖を抑える対策が効果的です。
- ダニアレルギーの原因は乾燥したダニのフンや死骸
- ダニアレルギーは秋から冬にかけて症状が悪化しやすい
- ダニアレルギーの発症を抑えるには夏からダニの繁殖を抑えるのが効果的
ダニアレルギーは、花粉症と異なり通年で発症します。
しかし、ダニのフンや死骸が舞いやすい秋から冬にかけて症状が悪化することが多いため、秋の花粉症と勘違いしがちです。
そのため、安易に市販のアレルギー薬を服用すると、症状が悪化する恐れがあります。
アレルギー症状がみられたら、まずは最寄りの耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
あだち耳鼻咽喉科では、少量の血液で41項目のアレルギー検査ができる機器「ドロップスクリーンA-1」を導入しています。
アレルギー症状でお悩みの方は、福岡県東区名島にお住まいの方は、ぜひ一度当院でのアレルギー検査をおすすめします。