鼻づまりが続くと、睡眠の質が下がったり、集中力が落ちたりと、子どもたちの日常にも大きな影響を与えます。
そのような鼻づまりの原因のひとつが「鼻中隔弯曲症」です。
実は多くの人に見られるこの状態、鼻の構造によるもので、気づかないうちに生活の質(QOL)を下げていることも。
今回は、なぜ鼻中隔湾曲症になるのか、診断方法や治療の選択肢そして子どもへの対応まで、耳鼻咽喉科専門医の視点でわかりやすく解説します。
目次
鼻中隔弯曲症とは
鼻中隔弯曲症は、鼻の左右の穴の仕切りである「鼻中隔」が強く曲がってしまっている状態を指します。
鼻中隔は軟骨と骨で構成されており、成長過程で軟骨と骨の成長バランスがずれることで起こることが多いです。
成長期には70%、思春期から成人にかけては90%の人に何らかの弯曲がみられますが、症状がなければ問題ありません。
多少の弯曲は誰にでも見られますが、鼻づまりなど日常生活に支障をきたす症状がある場合に「鼻中隔弯曲症」と診断されます。
鼻中隔弯曲の人が多い理由
鼻の中を左右に分けている壁である鼻中隔が曲がっていることは、実は人類が進化してきた過程ではほぼ避けられない変化の1つです。
人が鼻中隔弯曲になるメカニズム
- 人類が四足歩行から二足歩行になる
- 脳が大きく発達し重くなる
- 鼻の上部に強い圧力がかかる
- 鼻中隔に負担がかかり曲がりやすくなる
また、脳と顔の骨格のバランスが大きく変わり、顎が小さく・顔が平らになっていく一方で脳が発達し、頭蓋骨の下の角度(頭蓋底角)が縮まりました。
鼻中隔をつくる軟骨と骨の成長スピードの違いも鼻中隔が曲がりやすい理由の1つです。
軟骨はスピードが速く、骨のスピードはゆっくり。成長するタイミングのずれで鼻中隔が曲がりやすくなります。
鼻中隔は成長とともに曲がっていくため、小児の鼻中隔弯曲は少なく成長期以降に鼻中隔弯曲症になる人が増えます。
哺乳類や猿ではこの弯曲は少なく、人間に近づくほど増えていくのも特徴です。
その他、顔や鼻に強い衝撃を受けた時に鼻中隔弯曲症が生じることもあります。
鼻中隔弯曲症のタイプ
鼻中隔弯曲症のタイプは曲がる位置で分類すると3つにわけられます。
| タイプ | 特徴 | 症状 |
|---|---|---|
| 上方型タイプ | 鼻中隔の上部が大きく曲がる | 鼻の奥側で通りが悪くなり、嗅覚障害や慢性的な鼻づまりが起こりやすい |
| 下方型タイプ | 鼻の下部、特に鼻の入り口付近で弯曲が強い | 通気の悪化に加えて鼻出血や指が当たりやすくなることで炎症や痛みが出やすい |
| S字型タイプ | 鼻中隔が波打つように上下で左右へ交互に曲がる | 両側の鼻が狭くなりやすいため、左右両方の鼻づまりや息苦しさを感じやすい |
さらに、弯曲だけでなく鋭く突出した「棘」や「櫛」と呼ばれる突出部ができることもあります。
弯曲のパターンや部位によって症状の出方や治療法が異なるため、詳しい診断が重要です。
鼻中隔弯曲症によって低下するQOL
鼻中隔弯曲症があると、慢性的な鼻づまりや鼻水が続くことで呼吸がしづらくなり、特に就寝時のいびきや口呼吸が増えます。
これにより眠りが浅くなったり、日中の集中力や学習意欲が低下し、子どもでは成長や発達に影響する可能性があるため注意が必要です。
また、鼻に違和感や頭痛、慢性的な副鼻腔炎を合併しやすく、体調不良や倦怠感につながるケースもあります。
嗅覚低下による食事の楽しみの減少や、口呼吸による口腔トラブルもQOL(生活の質)を下げる要因の1つです。
鼻中隔弯曲症の症状
鼻中隔弯曲症で最も多い症状は、慢性的な鼻づまりです。
左右どちらか片方だけが詰まることもあれば、身体の向きによって左右変わることもあります。
慢性的な鼻づまりにより、口呼吸が増えて口やのどの乾燥、いびき、睡眠の質低下を引き起こすリスクが高まります。
さらに突出した部位の鼻の粘膜が乾燥して傷つきやすくなるため鼻血が出たり、においがわかりにくくなる嗅覚障害を引き起こすこともあるため注意が必要です。
また口呼吸から感染症にかかりやすくなるので、子どもの場合は風邪から副鼻腔炎にもかかりやすくなります。
鼻中隔弯曲症の検査・診断
鼻中隔弯曲症の診断では、まず問診や視診を通じて、既往歴や鼻の症状、現在の状態を確認します。
さらに、鼻の中を詳しく観察するために内視鏡検査を行い、鼻中隔の弯曲の程度や部位、炎症の有無などを詳細にチェックします。
奥までしっかり確認したい場合には、細いファイバースコープを用いた内視鏡検査が効果的です。
また、弯曲が強く疑われる場合や重症度をより正確に把握したいときには、CT検査によって鼻中隔の形や副鼻腔炎などの合併症の有無も調べます。
要に応じて鼻腔の通気度検査なども活用し、鼻の通りや機能を多面的に評価します。
これら複数の検査結果と症状、生活への影響を総合的に判断し、最終的な診断を行います。
鼻中隔弯曲症の治療法
鼻中隔弯曲症の治療法は、症状の重症度によって異なります。
ここからは症状によって異なる治療法ついて詳しく見ていきましょう。
軽度│薬物療法などの保存的治療
鼻中隔弯曲症が軽度の場合は、薬物療法やネブライザー、点鼻薬などの保存的治療が行われます。
これらは、鼻づまりや鼻腔内の炎症をやわらげることが目的で、根本的な鼻中隔の弯曲は改善されません。
ただ日常生活に支障が少なければ、特に治療の必要はありません。保存的治療でも十分な効果が得られます。
多少でも症状がある場合は、また薬物療法として、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬が処方されることもありますが、過剰な服薬や長期使用には注意が必要です。
鼻中隔弯曲症と診断されたら、軽度でも定期的に医師に診てもらい弯曲が進行していないか、症状が悪化していないかを確認してもらいましょう。
中度・重度│手術療法
鼻中隔の弯曲の程度が中度または重度で薬による効果が不十分な場合、QOLが著しく低下して日常生活に支障が生じている場合は、手術療法が選択されます。
鼻中隔矯正術
中等度以上の鼻中隔弯曲症に対しては、主に「鼻中隔矯正術」と呼ばれる手術がおこなわれます。
鼻の穴の中から切開を行い、曲がっている鼻中隔の骨や軟骨を部分的に切除や整形して、できるだけまっすぐな状態に矯正する手術です。
多くの場合、内視鏡下で行うため顔や鼻の外に傷は残りません。
粘膜下下甲介骨切除術・下鼻甲介切除術
鼻中隔弯曲症により、鼻中隔の弯曲のみではなく、アレルギー性鼻炎などにより「下鼻甲介(かびこうかい)」の粘膜や骨が肥大している場合は、鼻中隔矯正術だけでなく、「粘膜下下甲介骨切除術」「下鼻甲介切除術」などを併用した手術が行われます。
この手術を併用することにより、鼻腔内の通気が改善されます。
麻酔は局所麻酔または全身麻酔で行い、手術方法や重症度によって日帰りから短期入院まで対応可能です。
鼻中隔弯曲症は自然治癒できる?
鼻中隔弯曲症は、鼻中隔(鼻の中央の仕切り)が骨や軟骨の成長バランスの問題や外傷によって曲がることで起こります。
この弯曲は「物理的な構造異常」であるため、自然に治癒したり薬で元に戻すことはできません。
軽度の症状であれば、保存的治療で鼻づまりや炎症などの症状を抑えることが可能です。
しかし、薬によって鼻中隔の弯曲自体が改善することはありません。
根本的に鼻中隔弯曲症を治すには、「鼻中隔矯正術」と呼ばれる手術が唯一の治療法です。
鼻中隔弯曲症は時間経過で治ることはなく、むしろ鼻づまりや鼻腔内の炎症が悪化する可能性があるため、早めの受診が大切です。
鼻中隔弯曲症でよくある質問とその回答
鼻中隔弯曲症でよくある質もとその回答を院長先生にお答えいただきました。
鼻中隔弯曲症は外観には出ませんか?外見と症状は関係しますか?
→基本的には外見には影響はおよぼさないと思われます。
何歳から手術が可能ですか?子どもには手術適応はありますか?
→思春期以降が手術適応になると思われますが、症状が強い場合は手術適応となる場合もあると思われます。
手術後に再発したり、鼻が弱くなったりしませんか?
→再発することはありませんが、切除が不十分な場合や粘膜穿孔を来した場合、鼻症状を来すことがあります。
まとめ
鼻中隔弯曲症は、鼻中隔の骨や軟骨が曲がることで鼻づまりを引き起こしやすく、多くの人が経験する疾患です。
治療は症状の軽さによって異なり、軽度の場合は点鼻薬や薬物療法で炎症や鼻づまりを和らげますが、弯曲自体は自然に治ることはありません。
- 鼻中隔弯曲症は成長期以降に症状が生じる人が多い
- 鼻中隔弯曲症を根本的に改善するには鼻中隔矯正術などの手術が必要
- 鼻中隔弯曲症は軽度でも症状が重くなることがあるので定期的な受診をする
鼻中隔弯曲症は、症状によってQOLが著しく低下することもあるので、鼻づまりでも我慢せず早めに最寄りの耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
福岡市東区名島にお住まいで、鼻づまりに悩んでいる方はあだち耳鼻咽喉科へご相談ください。
あだち耳鼻咽喉科では、鼻中隔弯曲症の疑いのある方に対して問診・検査が可能です。
手術が必要な場合は、適切な医療機関をご紹介いたしますので、ご安心ください。
また鼻づまりは副鼻腔炎など別の病気のサインであることもあるので、早期発見・治療で早めに対処していきましょう。












