人は体内の水分が3%失われると、脱水となりさまざまな症状があらわれます。
鼻や耳からくる症状も例外ではありません。
また、脱水で体内の血流が悪くなることから耳鼻咽喉科疾患の引き金になることもあります。
この記事では、脱水で発症しやすい耳鼻咽喉科疾患やそのメカニズム、脱水にならないための対策について解説します。
目次
脱水で発症しやすい4つの耳鼻咽喉科疾患
脱水になると、体内の水分量の減少だけでなく、血液量も減少します。
その結果、血液濃度が高くなりドロドロ状態になるため血流が悪くなってしまうのです。
血液は全身に張り巡らされているので、脱水になると体のいたるところでさまざまな症状があらわれます。
鼻や耳も例外ではありません。
脱水で発症しやすい耳鼻咽喉科疾患は次の通りです。
- 耳管開放症
- メニエール病
- 急性低音障害型感音難聴
- アレルギー性鼻炎の悪化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
耳管開放症
耳管開放症とは、普段は閉じている耳と喉奥をつなぐ耳管が、常時開放した状態になる疾患です。
耳管が常時開放すると、呼吸雑音が大きく聞こえたり耳の閉塞感があったりと不快な症状があらわれます。
急激な体重減少により起こりやすい疾患ですが、脱水でも発症しやすくなります。
脱水から耳管開放症になるメカニズムは次の通りです。
- 体内の水分量が減る
- 耳管周辺組織の水分量が減り組織が虚脱(ボリュームが減少する)
- 耳管が閉じにくくなり常に開放した状態になる
とくに夏場の朝は、寝ている間に脱水傾向になりやすく、耳管開放症の症状が出やすくなります。
メニエール病
メニエール病とは、内耳を満たしているリンパ液が何らかの原因で過剰に増えてしまい、内リンパ水腫(水ぶくれ状態)となる疾患です。
内耳は体の平衡感覚を司ったり、音を脳に伝える役割になったりするため、内リンパ水腫ができると、回転性のめまいが頻回したり、耳鳴りや難聴があらわれたりします。
「水分が不足しているのになぜ水ぶくれ状態になるのか」疑問を持つ方も少なくないでしょう。
脱水になると体内の水分量が足りなくなり、水分量を維持するために排尿を促すホルモンの働きが一時的に鈍くなります。
その結果、体とは逆に内耳では水分過多になりメニエールの症状が出現してしまうのです。
- 脱水になる
- 利尿を司るホルモンの働きが悪くなる
- 内耳に水が溜まり水腫となる
- めまいや耳鳴りなどメニエール病の症状が出る
脱水だけでなく、梅雨や台風などの低気圧は自律神経の乱れにつながり、内リンパ水腫が悪化しやすくなります。
急性低音障害型感音難聴
急性低温障害型感音難聴とは、内耳にある蝸牛という部位に内リンパ液が増えすぎることが原因で発症する難聴です。
急性低音障害型感音難聴になると、低い周波数の音が聞き取りづらくなります。
内耳全体に内リンパ液が溜まり水腫となるメニエール病に対して、急性低温障害型感音難聴は内耳の蝸牛という部位に内リンパ液が溜まるという特徴があります。
急性低音障害型感音難聴の発症後にメニエール病へ移行するパターンも多いことから、別名蝸牛型メニエール病とも呼ばれています。
脱水で急性低音障害型感音難聴になるメカニズムは、メニエール病と同じで内耳で水が溜まる部位が異なるだけです。
急性低音障害型感音難聴は突発性難聴よりも治りやすい難聴ですが、再発しやすい病気です。
再発を繰り返していくうちに、難聴が進行してしまうこともありますので早めの受診が重要です。
アレルギー性鼻炎の症状悪化
脱水になり、体内の水分が不足すると血液がドロドロの状態になり、血流が悪くなります。
その結果、アレルギー症状を引き起こす物質(アレルゲン)が体内に蓄積されやすくなり、くしゃみや鼻水、鼻づまりが悪化しやすくなるのです。
アレルゲンの蓄積を防ぐには、水分補給をしっかりとおこない血液の流れをよくする必要があります。
アレルギー性鼻炎や花粉症にお悩みの方は、夏に限らずこまめな水分補給を心がけましょう。
脱水症の一般的な症状
脱水症は体の水分とミネラルの一種であるナトリウムが不足したときに発症します。
脱水症では、脱水の程度によりさまざまな症状があらわれます。
- 軽度:めまいやふらつき
- 中度:汗の量が減少、体温が高くなる、頭痛、吐き気
- 重度:内臓血流量が減り臓器不全、意識を失う
脱水症は、体液の約3%以上が失われると症状があらわれます。
体液の約20%を失うと命の危機に陥る恐れがあるため、脱水のサインを見逃さないようにすることが大事です。
脱水のサインを見逃さない
脱水になると自覚症状として次のような症状があらわれます。
- くちびるや皮膚の乾燥
- 頭がぼんやりする
- 喉の渇きを強く感じる
- 大量の汗をかく
- 集中力が欠ける
- 立ち眩みがする
これらの症状は脱水のサインです。
経口補水液を飲用し、水分とミネラル(ナトリウム)を効率よく摂取しましょう。
市販のものがなければ、自宅でも作ることもできます。
脱水にならないための対策
脱水になると耳の疾患だけでなく、体全体でさまざまな症状があらわれます。
脱水が進行し、脱水症状になると健康な人であっても大変危険です。
脱水にならないためには、次の3つの対策が有効です。
少量ずつこまめに飲用する
脱水になると喉の渇きを強く感じますが、一気に大量の水を飲用すると、体内の電解質のバランスを崩し、脱水をかえって進行させてしまいます。
脱水にならないようにするには、喉の渇きを感じる前に少量の水をこまめに飲用するようにしましょう。
水だけでなくミネラルも補給する
脱水にならないようにするためには、水だけを飲まないようにしましょう。
水のみを飲用してしまうと、身体が体液の濃度を一定に保つよう働き、余分な水分を排出してしまうためです。
その結果、水分補給をしても体内の水分量が回復せず、脱水が進んでしまいます。
喉の渇きを強く感じるときは、水分だけでなく電解質が足りない恐れがあります。
電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)を含んだ経口補水液やスポーツドリンクなどで水分補給をしましょう。
カフェイン入りの飲み物は控える
水分補給をするときに、カフェイン入りの飲み物は控えるようにしましょう。
カフェインには利尿作用があり、体内の水分を余分に排出してしまい脱水を進めてしまうリスクがるためです。
水分補給をするときは、ノンカフェイン入りのお茶や麦茶を飲用しましょう。
まとめ
脱水になると体内に熱が籠るだけでなく、さまざまな全身症状が生じます。
鼻や耳の異常もその1つです。
脱水になると、り患している耳鼻咽喉科疾患の症状が悪化したり、メニエールや耳管開放症などの病気の引き金になったりします。
- 脱水になると血流が悪くなり耳や鼻にもさまざまな症状が生じる
- 花粉症やダニなどアレルギー性鼻炎の方は脱水になると症状が悪化するため注意
- こまめな水分補給により耳鼻咽喉科疾患の症状が改善することがある
脱水にならないよう、こまめな水分補給をおこなうのはもちろんのこと、脱水になったときは経口補水液を飲んで休息を取るなどの対策をしましょう。
脱水が解消されたのにもかかわらず、耳や鼻に違和感をおぼえたら早めに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
福岡市東区名島市にお住まいで、日々の暑さで耳や鼻に違和感をおぼえたら、お気軽にあだち耳鼻咽喉科へお越しください。
脱水による耳鼻咽喉科疾患の有無を診断するのはもちろんのこと、別の疾患がないか詳しく検査いたします。
早期発見・治療でツライ症状を短期間で解消できますので、早めの受診をおすすめします。