耳垢が黒くなるのは、耳垢や血液の酸化、外耳道真菌症などが原因で起こる、耳掃除の際によく気づかれる症状です。
黒い耳垢が気になるからと綿棒や耳かき棒で何度もこすってしまうのは、外耳道を傷つけ症状を悪化させるためNGです。
また、酸化による変色であれば自然に目立たなくなり、外耳道真菌症も適切な治療で改善するケースが多くあります。
この記事では、耳垢が黒くなる原因や自宅で様子を見てよいケース、正しい耳かきの方法について耳鼻咽喉科の医師が解説します。
目次
耳垢が黒いのは何が原因か
耳垢が黒っぽく見えると、何かの病気ではないかと不安になる方が少なくありません。
黒い耳垢の原因はひとつではなく、耳垢自体の自然な変化から出血、真菌(カビ)の繁殖まで、いくつかのパターンに分かれます。
ここでは代表的な3つの原因を順番に確認していきましょう。
古い耳垢が酸化して黒く見える
耳垢そのものは、皮脂や汗、古い皮膚などの成分が時間とともに酸化することで、色が薄い黄色から徐々に茶色っぽく変化していきます。
耳垢の色が変わること自体は、健康な耳でも起こる自然な現象で、悪いものではありません。
しかし、黒に近いほど濃い色になっている場合は、耳垢の色自体というより、気づかないうちにできた小さな傷からにじみ出た血液が耳垢に混ざり、時間をかけて酸化することで黒っぽく見えているケースがほとんどです。
耳の奥に古い耳垢がたまりやすい人ほど、こうした血液混じりの耳垢も蓄積しやすく、黒い塊のように見えることがあります。
出血が混じって黒くなる
耳かきや綿棒による刺激で外耳道の皮膚に小さな傷がつき、そこから出た血液が耳垢と混ざって乾くと、赤黒い色から徐々に黒っぽい色に変化します。
耳かきの直後に黒っぽい塊が出てきた場合、この出血が原因になっているケースが少なくありません。
傷が浅ければ数日で自然に治りますが、耳だれや強い痛みを伴うときは、外耳道炎など別の炎症が起きていることもあります。
繰り返し出血が見られるときは、耳かきの頻度や力加減を見直してみてください。
外耳道真菌症でカビが繁殖している
耳の入り口から鼓膜までのおよそ3cmの範囲に真菌(カビ)が繁殖する「外耳道真菌症」も、耳垢が黒くなる原因のひとつであり、外耳道炎全体のうちおよそ10%を占めるとされています。
強いかゆみや耳だれ、耳の詰まった感じを伴うことが多く、綿棒に黒い粒状のものやかさぶたのようなものが付着するのが特徴です。
通常、皮膚に真菌が付着しても繁殖することはありませんが、外耳の皮膚に傷や炎症があると自浄作用やバリア機能が低下し、真菌が繁殖しやすくなります。
黒い粒状や塊は外耳道真菌症の可能性
耳掃除をした綿棒に、黒い粒状のものなどが付着していた場合、外耳道真菌症のサインである可能性があります。
外耳道真菌症は耳の入り口から鼓膜までの間に真菌(カビ)が繁殖することで起こり、繁殖するカビの種類によっては黒色だけでなく白色や黄色、灰色に見えることも珍しくありません。
見た目は綿のような胞子が付着している状態から、べたっとした湿り気を帯びた状態まで幅があり、黒い耳垢の塊のように見えるのが特徴です。
強いかゆみを伴い、耳の中を掻きたくなる感覚が続いたと感じる方も少なくありません。耳が詰まったような閉塞感を覚えたり、症状が進むと耳だれや独特のにおいや痛みを伴ったりします。
見た目や症状だけで単なる耳垢や他の炎症と区別するのは難しく、自己判断で放置するとカビが深く浸潤して治療に時間がかかりやすくなるため、早めに最寄りの耳鼻科で確認しましょう。
外耳道真菌症になりやすい2つの習慣
外耳道真菌症は、日常のちょっとした習慣がきっかけで起こりやすくなります。特に多いのが耳かきのしすぎとイヤホンの長時間装着です。
どちらも耳の中の環境を悪化させ、カビが繁殖しやすい状態をつくってしまいます。自分に当てはまる習慣がないか、確認していきましょう。
耳かきのしすぎによる外耳の環境悪化
外耳道の皮膚は非常に薄く、デリケートな部分です。耳かきや綿棒で頻繁にこすったり爪で引っかいたりすると、目に見えない小さな傷や炎症が起こりかねません。
傷ついた皮膚は本来備わっている自浄作用やバリア機能が低下し、真菌が繁殖しやすい状態になります。
「耳がかゆいから」「すっきりしないから」と毎日のように耳かきを続けている方は、かえって外耳道真菌症を招きやすいため注意してください。
長時間のイヤホン装着による蒸れ
イヤホンを長時間装着していると、耳の中の熱や湿気がこもり、高温多湿の状態になります。
真菌は湿度や温度が高い環境で繁殖しやすいため、蒸れた状態が続くほど外耳道真菌症のリスクは高まりかねません。
特に汗をかきやすい季節や、仕事中に長時間イヤホンをつけたままの生活を送っている方は、蒸れやすい環境が続いていると考えられます。
装着時間を区切って耳を休ませたり、蒸れにくいタイプのイヤホンに変えたりする工夫も取り入れてみてください。
ほかにも出血を伴うものとして、中耳炎に関係するものや腫瘍性の病変がある場合もあります。いずれも続く場合は放置しないほうがよいと考えられます。
自宅で様子を見てよいケースと受診の目安
耳垢が黒く見えても、すべてがすぐに受診が必要な状態というわけではありません。
自宅で様子を見てよいケースと、早めに耳鼻科を受診したほうがよいケースには、いくつかの見分け方があります。判断に迷ったときの目安を確認しておきましょう。
数日で治まる軽い変色は経過観察でよい
耳の中に長期間とどまった古い耳垢や、耳かき時についた軽いすり傷による出血(血液の酸化)が原因の場合、黒っぽい色は一時的なもので、数日から1週間ほどで自然に目立たなくなることがほとんどです。
かゆみや痛み、耳だれといった症状がなく、耳が詰まった感じもない場合は、しばらく自宅で様子を見ても差し支えありません。
ただし、耳かきを繰り返して無理に取ろうとすると、かえって皮膚を傷つけて症状を長引かせる原因になりかねないため、触りすぎないよう気をつけてください。
かゆみや耳だれ痛みがあれば早めに受診
黒い耳垢に加えて、強いかゆみや耳だれ、痛みといった症状がある場合は、外耳道真菌症や外耳道炎などの炎症が起きている可能性があります。
市販の綿棒でさらに触ってしまうと、カビや細菌が奥まで広がり、症状が悪化しかねません。
セルフケアで様子を見るのではなく、早めに耳鼻科を受診し、原因に応じた治療を受けることが望ましいでしょう。
放置する期間が長くなるほど治療にも時間がかかりやすくなるため、気になる症状が出た時点で相談してください。
子どもの耳垢が黒い場合も同様に受診を検討
子どもの耳の中は大人よりも狭く、耳垢や異物が奥にたまりやすい傾向があります。
なお、生まれたばかりの赤ちゃんの耳垢が黒っぽく見える場合は、おなかの中にいたときの羊水が耳の中で固まったことによるものがほとんどで、心配はいりません。
一方で、言葉で症状をうまく伝えられない乳幼児や子どもについては、耳を気にして触る、機嫌が悪い、耳だれのようなにおいがするといった様子が見られたら、早めに耳鼻科で診てもらうと安心です。
家庭での無理な耳掃除は避け、専門的な処置に任せることをおすすめします。
黒い耳垢に気づいたらまず耳鼻科で検査
黒い耳垢の原因は、見た目だけで正確に判断することが難しいものです。
単なる古い血液の酸化なのか、外耳道真菌症などの炎症なのかを見分けるためにも、まずは耳鼻科で検査を受けることが第一歩になります。
ここでは、受診した際にどのような検査や治療が行われるのかを紹介します。
検査で原因となる真菌の種類を特定
耳鼻科では、まず耳の中を専用の器具で観察し、外耳道の状態を確認します。
外耳道真菌症が疑われる場合は、治療を始める前に耳の中の付着物を採取し、どの種類の真菌に感染しているかを調べる検査を行うのが一般的です。
真菌の種類によって効果的な薬剤が異なるため、検査結果をもとに治療方針を決定します。
自己判断で市販薬を使っても、原因菌に合っていなければ改善しにくいため、検査を受けたうえで適切な処置を受けることが大切です。
根気強い治療が完治のポイント
外耳道真菌症の治療は、まず耳の中にたまったカビや汚れを丁寧に除去し、消毒したうえで抗真菌薬のクリームを塗布するのが基本です。
炎症が耳の奥深くまで及んでいる場合は、内服薬を併用することもあります。
治療期間の目安は2週間から2ヶ月程度で、根気強く通院を続けることが完治のポイントになります。
症状が軽くなったからといって自己判断で通院をやめると再発しやすいため、医師の許可が出るまで治療を続けてください。
耳を傷つけない正しい耳かきの方法
耳垢による黒ずみや外耳道真菌症を防ぐには、耳を傷つけない正しい耳かきの習慣を身につけることが近道です。
頻度や道具の選び方を少し見直すだけで、外耳の環境を健康に保ちやすくなります。今日から取り入れられる耳かきのポイントを紹介します。
頻度は月に1~2回で十分
耳垢には汚れの侵入を防いだり、外耳道を保護したりする役割があるため、本来はこまめに掃除する必要はありません。
耳かきの頻度は月に1~2回程度、1回あたり2~3分ほどで十分です。
「毎日耳かきをしないと落ち着かない」という方も少なくありませんが、頻繁な耳かきはかえって外耳の皮膚を傷つけ、炎症や真菌症を招く原因になります。
耳垢は自然に外へ押し出される仕組みも備わっているため、掃除の回数を減らしても問題はありません。
耳の入り口から1センチほどを綿棒で軽くぬぐう
耳かきをする際は、耳の入り口から1センチほどの範囲を目安に、綿棒で軽くぬぐう程度にとどめてください。
奥まで綿棒を入れてしまうと、耳垢を奥へ押し込んだり、鼓膜の近くを傷つけたりする恐れがあります。
力を入れずに、なでるようなイメージで優しく拭き取ることを意識すると、皮膚への負担を抑えられます。
耳の奥に耳垢が詰まっている感覚がある場合は、無理に触らず耳鼻科での除去を検討しましょう。
耳かき棒の使用は避ける
竹製や金属製の耳かき棒は、力が入りすぎて外耳道の薄い皮膚をガリガリと傷つけやすい道具です。
傷ついた部分から炎症や真菌症が起こりやすくなるため、耳かき棒の使用は避けたほうが安心です。
耳垢を取り除きたいときは綿棒を使い、耳の入り口付近だけを軽くぬぐうようにしてください。
耳の奥にたまった耳垢は無理に取ろうとせず、耳鼻科で専用の器具を使って安全に除去してもらうことをおすすめします。
教えて院長先生!黒い耳垢のよくある質問
ここまで、黒い耳垢の原因やセルフケア、耳鼻科での検査・治療について解説してきました。
最後に、診療の中でよく寄せられる質問について、院長がお答えします。気になる疑問の解消にお役立てください。
黒い耳垢を放置するとどうなりますか
原因によると思いますが、自覚症状を伴う場合は耳鼻科受診がのぞましいと思います。
耳垢が黒いのは自分で取り除いても大丈夫ですか
取り除いても構いませんが、出血をともなう場合などは無理をしない方がよいと思われます。
カビが原因の場合再発しやすいですか
程度によりますが、不十分な清掃を行うと、再発しやすくなります。
まとめ
耳掃除をした際に耳垢が黒いことに気づくと、何らかの病気ではないかと不安になる方も少なくありません。
実際には耳垢や血液の酸化による自然な変化であることが多く、必ずしも重大な病気とは限らないのでご安心ください。
ただし、外耳道真菌症のようにカビが原因となっているケースもあるため、症状を正しく見極めることが大切です。
- 黒い耳垢の多くは耳垢や血液の酸化が原因で、経過観察でよいケースも多い
- かゆみや耳だれ、痛みを伴う場合は外耳道真菌症など炎症が起きている可能性がある
- 外耳道真菌症は根気強い治療が必要で、正しい耳かきの習慣が予防につながる
軽い症状であれば、正しい耳かきの方法や生活習慣を見直すことで自然に落ち着くケースがほとんどです。
耳垢の色に違和感を覚えたら、できるだけ早く耳鼻咽喉科の専門医に相談し、適切な検査を受けましょう。
福岡市東区名島で、耳垢の黒さやかゆみ、耳だれが気になったらあだち耳鼻咽喉科へお越しください。
あだち耳鼻咽喉科では、外耳道真菌症をはじめとした耳の疾患の診断や治療が可能です。
また、耳垢の黒さの背後に別の病気がみつかることもありますので、気になる症状がある方はお気軽にあだち耳鼻咽喉科へご相談ください。












