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みみ

急性低音障害型感音難聴とは?環境の変化が耳に与える影響について解説!

低い音が聞き取りにくくなったり、耳が詰まったような感じがしたりするなど、耳の不調を感じることはありませんか?

これらの症状は「急性低音障害型感音難聴」という耳の病気のサインかもしれません。

急性低音障害型感音難聴は、20代から40代の女性に多く見られ、ストレスや睡眠不足が引き金になることがあります。

この記事では、急性低音障害型感音難聴について詳しく解説します。

症状や原因、治療法だけでなく、環境の変化が耳に与える影響についても触れていきますので、ぜひ最後までお読みください。

急性低音障害型感音難聴とは?

急性低音障害型感音難聴とは、高音域は正常に聞こえるのに、1,000Hzよりも低い周波数の音が聞こえにくくなる病気です。

その他にも耳が詰まったような感じがしたり、耳鳴りがしたりします。

厚生労働省の急性高度難聴に関する調査研究班の調査報告書によると、急性低温障害型感音難聴の患者数の割合は、人口100万人あたり428人~657人と推測されています。

発症数は、急性感音難聴(突発性難聴を含む)を引き起こす病気の中で、急性低音障害型感音難聴が最も患者数が多い数です。 また早期治療により、聴力は戻りやすいとされていますが、再発することも多く、一部はメニエール症に移行することもあります。

急性低音障害型感音難聴の原因

急性低音障害型感音難聴の原因は、2025年3月時点で明らかになっていません。

ただ、急性低音障害型感音難聴を発症した患者さんにMRI検査を実施すると、高確率で内リンパ水腫が見られます。

急性低音障害型感音難聴の特徴として、一部がメニエール病へ移行することから、「内リンパ液の異常が急性低音障害型感音難聴の原因ではないか」と推測されています。

通常、内リンパ液は以下の流れで一定量に保たれています。

内リンパ液の生成から吸収までの流れ
  1. 三半規管や蝸牛で内リンパ液が生成される
  2. 生成されたリンパ液により音や体の傾き具合などの情報が脳に伝えられる
  3. 古くなったリンパ液は内リンパ嚢(のう)で吸収される

内リンパ水腫になると、リンパ液が過剰に生成され、古くなったリンパ液の吸収が追いつかなくなるのです。

リンパ液がなぜ過剰に生成され、増加するのは明らかになっていません。

しかし、メニエール病と同じくストレスや睡眠不足、過労などが引き金になることがあるため注意が必要です。

また、動脈硬化や低血圧などの病気が原因になることもあります。

これらの病気を発症し、血液の流れが悪くなると、内耳に酸素が行き渡らなくなるため、音を伝える細胞の働きが悪くなるのです。

その結果、内耳から脳へ音の伝達がうまくいかず、聞こえにくくなる症状があらわれます。

急性低音障害型感音難聴の症状

急性低温障害型感音難聴の主な症状は次の通りです。

  • 耳の閉塞感をおぼえる
  • 耳が詰まったような感じがする
  • ゴー、ジーといった低い音の耳鳴りがする
  • 男性の声など低い音が聞き取りにくい
  • 音が二重に聞こえる

ほとんどの場合、片耳でこのような症状が起きますが、両耳で発症することもあります。

また日によって症状の強さが異なったり、1日のうちで症状が変わったりこともあります。

そのため症状が軽くなったからと言って、そのまま放置することがないよう注意が必要です。

急性低音障害型感音難聴も突発性難聴と同じく、早期発見・治療が重要になります。

これらの症状が気になったら、早めに最寄りの耳鼻咽喉科を受診しましょう。

急性低音障害型感音難聴の診断・治療

急性低音障害型感音難聴は、メニエール病や突発性難聴の症状と酷似していることから、診断が難しいこともあります。

厚生労働省難治性聴覚障害に関する研究班は、急性低音障害型感音難聴の診断基準を次のように定めています。

主症状
  1. 急性あるいは突発性に耳症状(耳閉塞感,耳鳴,難聴など)が発症
  2. 低音障害型感音難聴
  3. めまいを伴わない
  4. 原因不明
参考事項
  1. 難聴(純音聴力検査による聴力レベル)
    ① 低音域3周波数(0.125kHz,0.25kHz,0.5kHz)の聴力レベルの合計が70dB 以上
    高音域3周波数(2,4,8kHz)の聴力レベルの合計が60dB 以下
  2. 蝸牛症状が反復する例がある
  3. メニエール病に移行する例がある
  4. 軽いめまい感を訴える例がある
  5. 時に両側性がある
確実例: 主症状のすべて,および難聴基準①,②をみたすもの
準確実例: 主症状のすべて,および難聴基準①をみたし,かつ高音域3周波数の聴力レベルが健側と同程度のもの
引用元:急性低音障害型感音難聴の診断と治療 佐藤宏明

こらら診断基準から、急性低音障害型感音難聴であると診断された場合は、治療は副腎皮質ホルモン(ステロイド)や利尿剤、漢方などの投薬治療が行われます。

早期診断・治療を行えば、ほとんどの患者さんは2週間以内に症状が改善されます。

しかし、患者さんの中には症状が長引いたり、治っても再発したりすることもあるため注意が必要です。

急性低音障害型感音難聴の予後

急性低音障害型感音難聴の予後は比較的良好で、治療を受けた患者さんの約8割は治癒または回復しています。

しかしながら、低音域の聴力低下だけでなく、高音域の聴力低下がみられた患者さんの一部は、元の聴力に戻らなかったケースも報告されています。

また急性低音障害型感音難聴を発症した一部の患者さんは、症状が悪化してメニエール病に移行する人もいます。

福岡大学医学部耳鼻咽喉科教室では、急性低音障害型感音難聴症と診断された患者さん(男性19名・女性42名)を対象に予後を経過観察しました。

急性低音障害型感音難聴症の予後調査結果
  • 治癒…75%(聴力が元に戻る)
  • 回復…5%
  • 不変・悪化…20%

急性低音障害型感音難聴症の予後不良となった患者さんには次のような傾向があったそうです。

  • 男性の患者さんが予後不良になりやすい
  • 年齢が高い患者が予後不良になりやすい

また、急性低音障害型感音難聴症の予後で「治癒」とされた患者さんのうち30%は再発したとのこと。

しかし、急性低音障害型感音難聴症はまだ症例が少ないため、福岡大学医学部耳鼻咽喉科教室の調査結果はあくまでも目安です。

今後の調査により、予後の傾向は変わる可能性は十分にあるため、注意深く見守る必要があります。

急性低音障害型感音難聴とメニエール病の違い

急性低音障害型感音難聴とメニエール病の違いは次の通りです。

急性低音障害型感音難聴 メニエール病
主症状 耳の閉塞感、低音域の難聴 回転性めまい、難聴、耳鳴り
めまいの有無 めまいが起こることもある 主症状が回転性のめまい
発症パターン 徐々に(2、3日前から) 突然
症状の持続時間 数日~2週間程度 数時間(めまい発作)
聴力の特徴 低音域の難聴 初期は低音域、進行すると全音域
再発 あり あり(不規則に反復)
長期的な聴力予後 比較的良好 進行性に悪化する傾向

急性低音障害型感音難聴もメニエール病もともに、内リンパ水腫が原因でさまざまな症状を引き起こすと考えられています。

そのため、似たような症状があらわれることも少なくありません。

2つの病気の大きな違いは、回転性めまいの症状の有無です。

急性低音障害型感音難聴の患者さんの中には、めまいの症状が出現する方もいますが、メニエール病のような回転性めまいが生じることはありません。

ただし、急性低音障害型感音難聴の患者さんの一部は、メニエール病に移行することが確認されています。

そのため専門家の間では、急性低音障害型感音難聴は、「メニエール病が本格的に発症する前の警告サイン」とも考えられています。

突発性難聴と急性低音障害型感音難聴の違い

これまで突発性難聴と急性低音障害型感音難聴は同じ病気として扱われていました。

しかし、突発性難聴は、男女関係なく50代の方が発症しやすい傾向があります。

このことから、2つの病気は発症する患者の傾向が異なるため、専門家は急性低音障害型感音難聴を独立した病気として扱うようになったそうです。

急性低音障害型感音難聴は、若い女性の方がなりやすい耳の病気なので、低い音が聞き取りにくくなったり、耳に違和感を感じたりしたら、早めに受診をしましょう。

教えて院長先生!急性低音障害型感音難聴でよくある質問とその回答

急性低音障害型感音難聴でよくある質問とその回答を院長先生にお答えいただきます。

急性低音障害型感音難聴は自然に治ることはありますか?

治ることもあるかもしれませんが、基本的には必ず投薬するので、自然経過については不明です。

急性低音障害型感音難聴を予防するために日常生活で気を付けることはありますか?

記事内容にもありますとおり、ストレスや不眠などを避けることと思います。

まとめ

急性低音障害型感音難聴とは、低い周波数の音が聞こえにくくなる病気です。

音が二重に聞こえたり、耳が詰まったような感じがしたりします。

20代~40代の女性が発症しやすいという特徴があります。

程度は軽いものの、発症した一部の患者さんは、メニエール病に移行することもあるため注意が必要です。

まとめ
  • 急性低音障害型感音難聴になると内リンパ水腫が見られる
  • 急性低音障害型感音難聴の予後は良好だが一部で聴力が悪化することもある
  • 急性低音障害型感音難聴は再発する可能性がある

急性低音障害型感音難聴は早期診断・治療を行えば、ほとんどの患者さんは2週間以内に症状が改善されます。

悪化するとメニエール病に移行したり、聴力が戻らなかったりするリスクがあるため、耳に違和感を感じたら早めに最寄りの耳鼻咽喉科へ受診しましょう。

福岡市東区名島にお住まいで、耳のつまりや低い音の聞き辛さを感じたら、あだち耳鼻咽喉科へお越しください。

あだち耳鼻咽喉科では、急性低音障害型感音難聴の検査や治療はもちろんのこと、他の病気を併発していないか診察することができます。

突発性難聴の可能性もあるので、耳に違和感を感じたら、まずはお気軽にご相談ください。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師