就職や転勤、進学に伴い飛行機で新天地へ移動する人もいるのではないでしょうか。
新幹線やバスの移動と違い、空の旅はいつもと異なる景色を楽しめるため、特別感を味わえます。
しかしながら、飛行機での移動は急激な気圧の変化により、めまいや吐き気、耳鳴りなどの体調を引き起こすことがあります。
体調不良の原因は、乗り物酔いや航空性中耳炎であることが多いのですが、難聴を伴う航空性外リンパろうを発症することもあるため注意が必要です。
この記事では、航空性外リンパろうとは何か、発症のメカニズムから発症しやすい人などをわかりやすく解説します。
飛行機での移動を控えている方は、航空性中耳炎の記事と合わせてご覧ください。
目次
航空性外リンパろうとは
飛行機に搭乗しているときに発症しやすい代表的な耳の疾患といえば、航空性中耳炎です。
航空性中耳炎は、離着陸の気圧変化により鼓膜が凹凸することが原因で発症します。
しかしながら、飛行機の離着陸による気圧変化で影響を受けるのは、鼓膜がある中耳だけではありません。内耳にも影響を与えることがあります。
気圧の変化により、発症する内耳の疾患の1つが航空性外リンパろうです。
航空性外リンパろうになると、着陸直後に耳鳴りやめまい、耳の閉塞感などの症状があらわれます。
難聴が後遺症として残る場合もあるため早めの受診が必要です。
子どもの副鼻腔炎の症状
航空性外リンパろうの症状は、外リンパろうの症状と同じです。
- 難聴
- めまい
- (めまいによる)吐き気や悪心
- 水の流れるような耳鳴り
- 頭痛
外リンパろうの特徴として、発症時に破裂音がすることがあります。
しかしながら、破裂音がしないこともあるため、破裂音の有無で外リンパを発症したか否かは判断できません。
また、めまいや吐き気は乗り物酔いでも症状としてあらわれるため、素人が外リンパろうを疑うことは難しいかもしれません。
航空性外リンパろうを発症したときに注意したいのが、難聴の症状です。
難聴があらわれたら、早期発見・治療をしないと聴力が戻らないことがあります。
めまいや吐き気だけでなく耳の聞こえづらさや閉塞感を感じたら、すぐに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
航空性外リンパろう発症のメカニズム
航空性外リンパろうは、航空性中耳炎と同じく航空機内の急激な気圧変化によって生じます。
航空性外リンパろうの発症は着陸時に起こることが多いのが特徴です。
- 航空機が着陸態勢に入り下降することで航空機内の気圧が急激に上がる
- 耳管が開かず航空機内の気圧に比べて中耳腔内の気圧が低くなる
- 中耳と内耳を隔てる前庭窓、蝸牛窓が中耳腔へ引っ張られる
- 前庭窓、蝸牛窓に亀裂が生じて外リンパ液が漏れ出す
- めまいや難聴などの症状が生じる
また、急激な気圧変化による耳の痛みを防止しようと耳抜きを試み、体内から強く圧力をかけたときに外リンパろうを発症してしまうこともあります。
- 航空機が着陸態勢に入り下降することで航空機内の気圧が急激に上がる
- 耳管が開かないと航空機内の気圧に比べて中耳腔内の気圧が低くなる
- 耳管を開かせようと鼻咽腔に体内から圧力をかける(耳抜き)
- 髄液圧の急上昇により内耳に圧力がかかり前庭窓、蝸牛窓が中耳腔へ引っ張られる
- 前庭窓、蝸牛窓に亀裂が生じて外リンパ液が漏れ出す
航空性中耳炎を予防するための耳抜きは、圧外傷による外リンパろうを発症させる恐れがあるため、慎重におこないましょう。
航空性外リンパろうの予防策
航空性外リンパろうは航空性中耳炎と同じく、耳管を開きやすくする予防策が効果的です。
また風邪や副鼻腔炎、上気道感染時は航空性外リンパろう、航空性中耳炎の発症リスクが高くなるため飛行機の搭乗を控えましょう。
やむを得ず搭乗しなければならないときは、搭乗前に耳鼻咽喉科を受診し、耳管が開放しやすくなるよう抗ヒスタミン剤や点鼻薬を処方してもらい、離着陸時に使用するがおすすめです。
また外リンパろうを発症すると、約20%前後で再発の可能性があるため、少なくとも3か月間はいきむ動作を控えるようにしましょう。
耳管を開きやすくする予防策は以下の記事をご覧ください。
航空性外リンパろうになりやすい人
鼻水・鼻づまりなど鼻の状態が悪く耳管が開きにくい状態で、飛行機に搭乗すると発症リスクが高まります。
中耳や内耳の気圧と航空機内の気圧を等しくするための耳管が上手く働かずに発症することが多いからです。
航空性外リンパろうになりやすい人の特徴は次の通りです。
- 風邪を引いている人
- アレルギー性鼻炎や花粉症などを持つ人
- 副鼻腔炎を患っている人
- 扁桃肥大のある人
- 高齢者
そのほか、飲酒後に搭乗した人も外リンパろうになりやすいため注意が必要です。
飲酒をすると風邪や感染症にかかるときと同じように、耳管の粘膜が腫れ、空気が通りにくくなります。
この状態で気圧の変化が生じると外気圧と中耳・内耳内の気圧に差が生じるため、中耳炎や外リンパろうを発症しやすくなります。
航空性外リンパろうの診断
耳鼻咽喉科の問診で、飛行機搭乗後の耳の痛みや閉塞感を訴えたら、まず航空性中耳炎が疑われます。
そのため、まずは耳鏡検査により鼓膜の凹凸や滲出液がないかを確認します。
耳鏡検査で鼓膜の異常がないことを確認した後、眼振検査や聴力検査などを経て、航空性外リンパろうと診断されます。
航空性外リンパろうは比較的珍しい疾患ではありますが、安易に考えるのはやめましょう。
なぜなら、外リンパろうは治療が遅れると難聴になることが多く、聴力が戻らなくなる可能性があるからです。
飛行機搭乗後に耳の痛みや違和感、めまいなどの症状があらわれたら、翌日でもよいので最寄りの耳鼻咽喉科へ受診をおすすめします。
耳鼻咽喉科でおこなう航空性外リンパろうの治療法
航空性外リンパろうの治療は一般的な外リンパろうの治療と同じです。
外リンパ液の漏れの程度により、保存的治療または手術的治療が実施されます。
外リンパ液の漏れが軽度なものだと保存的治療が選択されるでしょう。
安静を心がけ、体の内部から圧力がかからないよう、数週間から数か月間、鼻かみや怒責を禁じて経過観察をおこないます。
難聴の症状があらわれる場合は、安静を保ちながらステロイド薬を使用し治療をおこなうこともあります。
保存的治療をおこなっても改善しなかったり、急激な難聴の進行がみられたりする場合は、手術療法が必要となる場合もあります。
外リンパろうの手術治療では、外リンパ液が漏れ出ている可能性のあるアブミ骨や正円窓と呼ばれる部分を確認し、割けたり破れたりしている部分を閉鎖します。
教えて院長先生!よくある質問Q&A
航空性外リンパろうについてよくある質問を院長先生にお答えいただきます。
飛行機に搭乗した後、軽いめまいや耳鳴りがする場合でも病院受診すべきでしょうか?目安を教えてください。
受診すべきと思います。耳症状やめまいあれば受診しましょう。自分では難聴の程度などはわからないので、客観的評価が大切です。
外リンパろうの治療後、飛行機に搭乗するのは控えるべきでしょうか?また治療後どれくらい経ったら搭乗しても問題ないかも教えてください。
明らかな基準が無いのでわかりませんが、1ヶ月くらいはあけたほうが良いとは思います。
まとめ
航空性外リンパろうは、着陸時に機内の気圧が急激に上昇するときに、中耳だけでなく内耳の気圧が陰圧になることで発症します。
気圧の変化が内耳に伝わると、外リンパ液が中耳に漏れ出し聞こえに影響を与えてしまうため注意が必要です。
- 離着陸時の気圧の急激な変化は内耳・中耳に影響を与えることがある
- 気圧の変化だけでなく誤った耳ぬきをすることでも外リンパろうが発症する
- (航空性)外リンパろうは早期治療をしないと聴力がもどらない可能性がある
飛行機搭乗前に鼻の疾患や風邪症状があると、耳管が開きにくいため耳が気圧の影響を受けやすくなります。
また飲酒も耳管の開きにくくなるため、控えるようにしましょう。
航空性外リンパろうは、発症報告数は少ないものの発症すると難聴が進行してしまう恐れがあります。
飛行機搭乗後に耳鳴りやめまい、耳の違和感をおぼえたら最寄りの耳鼻咽喉科へすぐに診療にいきましょう。
福岡県東区名島にお住まいの方で、飛行機搭乗後にめまいや耳鳴りなどの症状があらわれたら早めにあだち耳鼻咽喉科へお越しください。
また搭乗前の鼻の疾患の治療や薬の処方にも対応いたしますので、飛行機搭乗前で、気圧変化が不安な方はお気軽にご相談ください。