子どもののどが真っ赤で熱が高い……風邪かなと思うそんな症状は、もしかすると溶連菌感染症かもしれません。
冬はもちろん、春から初夏にかけても流行がみられますが、年間通して感染の可能性がある病気です。
ただの風邪だろう、と放っておくと重症化のおそれだけでなく、長期の治療が必要となったり後遺症が残ったりする合併症を引き起こす場合もあります。
今回は溶連菌感染症について詳しく解説しましょう。
目次
溶連菌感染症の症状は発熱やのどの痛みが中心
2~5日ほどの潜伏期を経た後の溶連菌の初期症状は、38~39℃以上の突然の発熱やのどの痛み(急性咽頭炎や扁桃炎)が中心です。
また扁桃腺には白苔を伴うことも多くみられます。
その後、身体や手足に粟粒大の赤い発疹や、舌に赤いつぶつぶができる「いちご舌」があらわれる猩紅熱(しょうこうねつ)と呼ばれる症状があらわれることもあります。
また頭痛や腹痛、おう吐、首筋のリンパ節が腫れるなどの症状もみられる場合がありますが、一般的な風邪と違い、咳や鼻水の症状は出ないことが特徴です。
症状が落ち着くと、発疹の跡の皮がめくれて、剥がれ落ちていきます(落屑)。
溶連菌感染症は重症化に注意!
溶連菌感染症は重症化すると、次のような皮膚疾患を起こす恐れがあります。
- 伝染性膿痂疹(のうかしん)
- 丹毒
- 蜂巣織炎(ほうそうしきえん)
- 蜂窩織炎(ほうかしきえん)
他にも中耳炎や肺炎、副鼻腔炎、化膿性関節炎や骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな疾患を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
溶連菌感染症の原因はA型レンサ球菌
溶連菌感染症は正しくは「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」といい、溶血性連鎖球菌という細菌が原因の病気です。
溶血性連鎖球菌には、A群、B群、C群、G群などがありますが、約90%がA群によるものです。
この菌がおもにのどに感染し、腫れや痛みを引き起こします。
感染経路は?
感染は、咳やくしゃみで飛び散った細菌を吸い込んで感染する「飛沫感染」と、患者のタオルや食器などを介して感染する「接触感染」がおもな経路です。
感染力は特別に強いわけではありませんが、体調が悪く免疫力が下がっているときなどは感染しやすく、家庭や集団生活で感染するのが特徴です。
溶連菌に感染しやすい年齢は?
溶連菌感染症の感染は子どもに多く、4歳~9歳頃に多くみられる病気です。
3才以下の乳幼児や成人も感染することはありますが、症状がみられない「健康保菌者」である場合もあり、健康保菌者からの感染はまれと考えられています。
とはいえ、もちろん症状があらわれる場合もあるので注意しましょう。
また、一度感染しても繰り返し感染することもあるため、かかったことがあるからといって油断は禁物です。
溶連菌感染症の検査方法
まず、年齢や発熱具合、のどの状態、身体や手足の発疹の具合などの症状を確認し、溶連菌感染症への感染の疑いがあれば、検査をおこないます。
綿棒を使ってのどの奥の粘膜から検体をぬぐい取り、迅速診断キットを使って検査します。
5~10分ほどで結果が判明し、溶連菌感染症への感染が認められれば、治療を開始します。
溶連菌感染症の治療では抗生剤の服用が重要
検査の結果、溶連菌感染症に感染していたら、熱やのどの痛みをやわらげる薬とともに、抗生剤が処方されます。
抗生剤はだいたい7~10日分処方され、医師からの指導通りに最後まで飲みきることが重要です。
症状がおさまってきたからといって、抗生剤を途中で飲むのをやめてしまうと、再発したり重篤な合併症を引き起こしたりするおそれがあります。
溶連菌感染症はきちんと治療しないと合併症のおそれも
溶連菌感染症の治療が不十分だと、次のような合併症を引き起こす場合もあります。
- リウマチ熱
- 急性糸球体腎炎
- 紫斑病
リウマチ熱
溶連菌感染症にかかって約2週間後、高熱や関節痛を引き起こすことがあります。
膠原病のリウマチとは無関係な疾患です。
急性糸球体腎炎
溶連菌感染症にかかって約1~3週間後、おしっこが濁る、血尿、腹痛、頭痛、足のむくみなどを引き起こすことがあります。
溶連菌による咽頭炎の1~5%でおこるとされています。
紫斑病
溶連菌感染症にかかって約1~2週間後、手足に出血斑が出たり、腫れたりすることがあります。
溶連菌感染症にかかったら?
溶連菌感染症にかかったら、安静に過ごしましょう。
のどの痛みが強いため、刺激の強い食事は避けることも大切です。ゼリーやヨーグルト、プリン、冷ましたスープやうどんなど、のどごしがよく消化のよい食事を心がけましょう。
食事をとることが難しいようでも、水分だけはしっかり補給することを忘れないようにします。
熱が下がれば、入浴しても構いません。
また、感染の拡大を防ぐため、外出の際はマスクをさせるとよいでしょう。
登校・登園はいつからできる?
溶連菌感染症は、抗生剤を服用すれば24時間以内に周囲への感染の可能性が低くなる病気です。
一般的に、発熱は発症から3~5日後には下がり、他の症状も1週間をめどにおさまります。
抗生剤を服用させたあと24時間以上経っていて、症状がおさまっているようなら、登校や登園しても構わないでしょう。
溶連菌感染症を予防するためには
現在のところ溶連菌感染症に対するワクチンはないため、予防接種による感染の予防はできません。
基本的には、風邪と同じように手洗いうがいやマスクなどで予防しましょう。
免疫力が下がっていると溶連菌感染症にかかりやすいため、規則正しい生活やバランスのよい食事、十分な睡眠などを心がけることも大切です。
また、兄弟や家族に感染者が出た場合には、食器やタオルは共用せず、できるだけ濃厚接触は避けるようにましょう。
とはいえ、予防策をしっかりしていたとしても、感染してしまうことも少なくありません。
溶連菌感染症を疑うような症状があれば、できるだけ早くかかりつけの医療機関を受診するようにしましょう。
まとめ
溶連菌感染症は、おもに発熱やのどの痛み、身体や手足の発疹などの症状を中心とする、子どものかかりやすい感染症のひとつです。
放っておいたり、治療が不十分だったりすると、重症化や合併症のおそれがあります。
もしかして溶連菌感染症かなと思ったら、すみやかに医療機関を受診しましょう。
- 溶連菌感染症は子どもが感染しやすく発熱とのどの痛みが主な症状
- 溶連菌感染症は放っておくと重症化や合併症の恐れがある
- 溶連菌感染症で処方された抗生剤は最後まで飲み切る
受診後は安静を心がけ、処方された抗生剤を決められた日数分きちんと服用することが大切です。
できるだけ感染を防ぐために、日頃から手洗いうがいなどを心がけ、規則正しい生活を送りましょう。
