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みみ、子どもの病気

子どもがかかりやすい中耳炎の種類とは?悪化させないための対処法

子どもがかかることの多い中耳炎。

小学校入学までに60〜70%の子どもが一度は中耳炎にかかるとされる、珍しくはない病気です。

しかし、「中耳炎くらいで」と軽く考えていると悪化して、場合によっては手術が必要になることもあります。

今回は、中耳炎の種類やその特徴、治療法や予防するために気をつけたい点などについて解説します。

中耳炎とは?

中耳炎とは、耳の「中耳」と呼ばれる部分が細菌やウイルスによって炎症を起こしている状態のことです。

耳は、「外耳」「中耳」「内耳」と、3つに区分され、中耳は鼻の奥と「耳管」と呼ばれる管でつながっています。

子どもが中耳炎にかかりやすいのはなぜ?

中耳炎は生後半年ほどの赤ちゃんから、1~2歳をピークとして6歳くらいまでの子どもによくみられます。

子どもによっては、風邪をひくたびに中耳炎になったり、何度も中耳炎を繰り返したりすることも少なくありません。

子どもがかかりやすいのは、大人に比べ抵抗力が弱いことも理由として挙げられますが、耳管の状態も理由のひとつです。

子どもの耳管は大人よりも太く短く、さらに角度が水平に近いため、細菌やウイルスが耳に入り込みやすい構造となっているのです。

成長するにつれて、抵抗力も強まり、耳管の構造も変わるため、徐々に中耳炎にかかりにくくなってきます。

中耳炎の種類

子どもがかかりやすい中耳炎には、「急性中耳炎」と「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」の2種類が挙げられます。

さらにそれらの中耳炎が悪化することで「慢性中耳炎」となってしまうこともあります。

それでは、それぞれの中耳炎の特徴をみていきましょう。

急性中耳炎

中耳炎のなかでもっとも多いのが、中耳の粘膜が炎症を起こし、うみが溜まって鼓膜が外耳道側に腫れる「急性中耳炎」です。

風邪や感染症にかかった後に発症しやすく、大量の鼻水や鼻をすすることなどが原因として挙げられます

急性中耳炎は、その名の通り急に症状があらわれるため、朝は平気だったのに夕方にはパンパンに腫れているということも少なくありません。

耳の痛みや耳だれ、耳のつまり感や発熱、聞こえにくさなどがあり、耳を気にして頻繁に手を当てていることも多くみられます。

耳の痛みや発熱は数日中におさまりますが、中耳に溜まっているうみはまだ残っているので、まだ完治しているわけではありません。

完全にうみが抜けるまで、根気強く治療することが大切です。

滲出性中耳炎

鼓膜の奥にある中耳腔と呼ばれる空間に、粘膜から滲み出た滲出液が溜まる病気が「滲出性中耳炎」です。

内耳の粘膜に炎症があったり、耳管のはたらきが悪かったりすることで、滲出液が溜まってしまい、滲出性中耳炎が引き起こされます。

急性中耳炎と違い、痛みや発熱、耳だれなど分かりやすい症状がないため、気づくのが遅れがちです。

耳によく触る、声をかけても振り向かない、テレビの音量が大きいなどの特徴がみられます。

原因としては、急性中耳炎がきちんと治りきっていないことや鼻水、鼻すすりなどが挙げられます。

また、喉の奥にあるアデノイドが大きいために耳管のはたらきを妨げていたり、飛行機の離着陸などにともなう急激な気圧の変化が原因となる場合もあります。

耳管のはたらきがよくなる10歳を過ぎる頃には、自然に治っていくことが多い病気ですが、だからといって治療を怠ると、悪化する恐れがあるため、完治するまで治療することが重要です。

滲出性中耳炎は治りにくい!根気強い治療で難聴を防ぐ滲出性中耳炎の原因 滲出性中耳炎は、鼓膜の奥にある中耳腔に滲出液という液体が溜まる病気です。 通常、中耳腔には空気しか入っていませんが、粘膜の炎症や耳管の機能悪化などにより、滲出液が溜まってしまうこ...

慢性中耳炎

中耳炎の治療が不完全なままで終わったり、何度も繰り返したりしているとさらに悪化した慢性中耳炎となることがあります。

慢性中耳炎は次の3つに分けられます。

慢性中耳炎の種類
  • 癒着性中耳炎
  • 慢性化膿性中耳炎
  • 真珠腫性中耳炎

慢性中耳炎は、いずれも根本的に治すためには手術での治療が必要です。

それでは、それぞれの中耳炎の特徴について解説しましょう。

癒着性中耳炎

耳管の機能が悪くなり、鼓膜の中の空気が失われることで鼓膜が中耳腔の奥に引っ付いて癒着してしまう病気です。

耳小骨と呼ばれる、聞こえに大きく関わる骨まで鼓膜が癒着してしまうと難聴が認められることもあります。

慢性化膿性中耳炎

鼓膜に穴があきそこから細菌などが入り込むことで、中耳が慢性的に細菌感染の状態となり膿が出てきたりじゅくじゅくしたりする病気です。

中耳炎を繰り返したりきちんと治療されなかったりすることで、鼓膜の穴が閉じなくなってしまい、慢性化膿性中耳炎となってしまうことも多いです。

また、鼓膜にあいた穴が大きくなるにつれ、聞こえが悪くなり、耳鳴りが引き起こされることもあります。

真珠腫性中耳炎

外耳道の皮膚や鼓膜の一部分が内側に引っ張られ、その凹み部分溜まった耳垢の塊が、周辺組織を破壊しながら増大していく病気です。

滲出性中耳炎や癒着性中耳炎からの進展も多くみられます。

中耳炎のなかでもとくに重症度が高く再発率も高いため、早期の手術による治療が必要です。

難聴や耳鳴り、めまいといった症状の他に、顔面神経や味覚神経を圧迫することで、顔面神経麻痺や味覚障害があらわれることもあります。

さらに、髄膜炎や脳炎といった病気になることもあり、危険性中耳炎と呼ばれることもあるほど、注意が必要な中耳炎です。

中耳炎の治療法

中耳炎は、患者さんそれぞれの症状や状態に合わせた治療をおこないます。

痛みや熱が下がったから、もう大丈夫というわけではありません。

いずれの治療法でも、大切なのは膿や滲出液がなくなるまできちんと治療をおこなうことです。

「中耳炎かも」という症状がみられたら、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。

薬を使った治療

軽症であれば、抗生剤や鎮痛剤、消炎剤などの薬で治療します。

しかし、最近では抗生剤に耐性のある、「薬剤耐性菌」による中耳炎も増えており、抗生剤の処方に注意する傾向があります。

耳管通気

鼻から耳に空気を送る、耳管通気が治療としておこなわれることもあります。

耳と鼻をつないでいる耳管に空気を通すことで、溜まった滲出液を排出し鼓膜の張りを解消します。

鼓膜切開

鼓膜を1mmほどメスで切開し、内耳に溜まっているうみや滲出液を排出する方法です。

麻酔をかけておこなうので痛みもあまりなく、空けた穴も数日程度でふさがります。

うみや滲出液を吸い出すと耳の聞こえがよくなり、周囲の音をうるさく感じることもあります。

チューブ留置術

鼓膜切開を何度も繰り返したり、なかなか治りにくかったりする滲出性中耳炎の場合、チューブ留置術と呼ばれる手術が行われます。

鼓膜に空けた穴がふさがらないように、シリコンなどで作られた換気チューブをはめ込む方法です。

中耳内の換気がよくなり、滲出液が溜まりにくくなります。

大人は外来にておこないますが、子どもの場合は入院し、全身麻酔で手術をおこないます。

チューブは数ヶ月~1年ほどそのままにしておき、経過を観察します。

また、チューブを外したあとはほとんどの場合穴もふさがるため、問題ありません。

中耳炎の原因となる他の病気の治療も大切

中耳炎を繰り返す、なかなか治らないなどの場合は、アデノイド肥大や副鼻腔炎など他の病気が原因となっていることも少なくありません。

このような場合、中耳炎の治療だけをおこなっても再発を繰り返すことが多いため、あわせてそれらの治療をおこなうことも重要です。

日常生活で中耳炎を予防するには?

それでは、中耳炎にかからないようにするためには、普段からどのような点に注意すればよいのでしょうか?

まずは、風邪や感染症にかからないようにすることが大事です。

多くの場合、風邪や感染症のあとに中耳炎を併発してしまうため、普段から規則正しい生活やバランスのよい食事などを心がけましょう。

それでもかかってしまったら、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。

また、家庭でも鼻をこまめにかむようにする、自分でかめないようなら市販の鼻吸い器を使い吸ってあげてください。

まとめ

子どものかかりやすい中耳炎は、急性中耳炎と滲出性中耳炎の2種類あり、どちらもきちんと治療すれば怖い病気ではありません。

しかし、治療を途中で止めてしまい、うみや滲出液が少しでも残っていると再発したり、よりひどい慢性中耳炎に移行してしまったりすることもあります。

まとめ
  • 小学校入学までの子どもの60%~70%が中耳炎を経験する
  • 子どもは大人より時間が太く短いため中耳炎になりやすい
  • 慢性中耳炎の根治にはと手術が必要になる

「中耳炎かも」と思ったらできるだけ早く耳鼻咽喉科へ相談し、完治するまできちんと通院して治療することが重要です。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師