発熱し、喉が腫れて痛む症状がなかなか改善しない場合、それは風邪ではなく扁桃炎かもしれません。
扁桃炎には、急性と慢性のものがあり、扁桃炎そのものは恐ろしい病気ではありませんが、いずれも放っておくと命に関わる病気になる恐れがあります。
とくに慢性扁桃炎の場合、合併症の危険性もあるため、医療機関への早期の相談が大切です。
今回は、扁桃炎の特徴と慢性扁桃炎の合併症や治療方法について解説します。
扁桃腺とは?
扁桃とは、舌の付け根部分の両側にあるリンパ組織のことです。
のどちんこ(口蓋垂)の両側といった方が分かりやすいかもしれませんね。
正しくは「口蓋扁桃」と呼ばれ、他にも「咽頭扁桃」や「舌根扁桃」など、扁桃にはさまざまな種類がありますが、一般的に「扁桃」とは「口蓋扁桃」のことを指します。
ウィルスや細菌などから体を守る役割を持ち、抵抗力の弱い子どもは感染症から身を守るため、扁桃が大きくなる傾向にあります。
しかし、6~7歳ごろに扁桃の働きや大きさはピークを迎え、中学生頃になると小さくなっていく場合がほとんどです。
扁桃炎とは?
扁桃に炎症を起こし、喉の腫れや痛み、高熱、物が飲み込みにくいといった症状が現れた場合、「急性扁桃炎」の可能性が高いでしょう。
風邪をきっかけに発症することも少なくありません。
急性扁桃炎を年に数回繰り返す場合、慢性扁桃炎と診断されます。
いずれも症状や原因などにはあまり変わりはありませんが、放っておくと重症化したり合併症を引き起こしたりするため、注意が必要です。
では、症状や原因、治療法などについて詳しく解説してきましょう。
症状
扁桃炎では、おもに以下のような症状があらわれます。
- 喉の痛み
- 息苦しさ
- 物を飲み込みにくい
- 38℃以上の発熱
- 寒気、震え
- リンパ節の腫れ
- だるさ
- 頭痛
- 関節痛
口を開けると喉が赤く腫れ、炎症部分に膿が白っぽい斑点のように付着することも。
このまま放っておくと、炎症部分が周囲に広がった「扁桃周囲炎」や、扁桃の周りの隙間に膿が溜まる「扁桃周囲膿瘍」となり、重症化してしまう場合もあります。
とくに「扁桃周囲膿瘍」の場合、膿が身体へ広がり命に関わる疾患を引き起こすこともあるため、注意が必要です。
原因
扁桃炎が起こるメカニズムは、細菌やウイルスが扁桃に付着し、増殖、そして炎症を起こすことによります。
しかし、特別な病原体が原因というわけではなく、身近な細菌やウイルスが扁桃炎を引き起こします。
- 溶連菌
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌(冬に流行するインフルエンザウイルスとは異なる)
- 肺炎球菌
- アデノウイルス
- エンテロウイルス
- 単純ヘルペスウイルス
- 肺炎球菌
これらを見てもわかるよう、どれも珍しいものではありません。
免疫力が弱まりこれらの病原体の感染力が上回ったときに、扁桃炎を発症してしまうのです。
風邪や疲れ、寝不足、ストレスなどによって免疫力は低下します。
他にも、季節の変わり目で寒暖差が激しいときや、乾燥する季節など、環境も大きく影響します。
とくに子どもは免疫機能の発達が未熟なため、かかりやすい疾患です。
診断・治療法
喉が腫れ、扁桃炎かもしれないと思ったら、早めに医療機関を受診しましょう。
特別な検査はなく、扁桃の状態を観察することで診断が可能です。
細菌が原因であれば、抗生剤が処方され、症状によっては点滴によって治療します。
喉の炎症を抑える薬や、解熱剤、うがい薬などを適切に服用することで、改善へ導きます。
耳鼻咽喉科への受診であれば、霧状の薬剤を口や鼻から吸入する「ネブライザー治療」が可能です。
ネブライザー治療は、炎症部分へ効率よく薬剤が届き、さらに喉も潤うため、とても有効な治療法です。
扁桃炎にかかったら
扁桃炎に感染したら、安静を保ちましょう。
喉の痛みや倦怠感から、食欲がなくなる場合がほとんどですが、ヨーグルトやゼリー、冷ましたうどんなど喉越しのよい食べ物を少しずつ食べるのがポイントです。
また、発熱による汗で脱水症状になることもあるため、水分もこまめに摂るようにしましょう。
予防法
扁桃炎を予防するには、細菌やウイルスによる感染を引き起こさないことが大切です。
手洗いうがいや、十分な睡眠、バランスの良い食事を心がけ、免疫力の向上をはかりましょう。風邪の予防にもつながりますね。
また、加湿器を活用する、マスクを着用する、こまめに水分をとるといった、喉の乾燥を防ぐことも有効です。
慢性扁桃炎とは?
急性扁桃炎を何度も繰り返す場合を慢性扁桃炎と呼び、なかでも年に4回以上繰り返す場合を習慣性扁桃炎と呼びます。
扁桃は、病原体の入り口になりやすく、表面にぼこぼこした穴があるため、じつは細菌などが溜まりやすく、感染源になりやすい箇所でもあるんです。
そのため、病原菌が常在化してしまい、疲労や環境の変化で抵抗力が落ちたときや新たな菌の侵入を受けたときなどに、扁桃炎を発症してしまいます。
子どもは、まだ免疫力が十分に備わっていないことや体力も少ないことなどから、繰り返しやすく、慢性や習慣性の扁桃炎になってしまうことも少なくありません。
また、急性扁桃炎を治療が十分でない場合も、慢性化の原因となることがあるため、しっかりと治療することが重要です。
合併症の危険性が高い
慢性扁桃炎は、急性扁桃炎に比べて症状は軽い場合もありますが、さまざまな合併症を引き起こす恐れがあります。
扁桃が原因となる、「扁桃病巣感染」と呼ばれる、一見して扁桃炎とは関係のない難治性の疾患を引き起こす場合もあり、注意が必要です。
- 腎炎
- リウマチ熱
- 心内膜炎
- 皮膚科的疾患
手術で治療することも
扁桃病巣感染による上記のような疾患にかかった場合、長期にわたってステロイド治療や免疫抑制剤などの治療を受ける必要があり、副作用など患者にとっても大きな負担となります。
しかし、扁桃摘出することで、それらの疾患が改善や完治に向かうことが多く、手術での治療をすすめられることもあります。
また、習慣性扁桃炎により日常生活に支障が出る場合も、手術で扁桃摘出による治療をおこなうことも。
とはいえ、免疫機能を担う扁桃を摘出してもよいのか不安に思われるかもしれませんね。
扁桃は、4~5歳を過ぎると摘出した場合としてない場合に、免疫機能にはほとんど差がなくなるのであまり心配する必要はありません。
扁桃摘出の手術方法
扁桃摘出の手術は、全身麻酔でおこない、入院期間は1週間から10日ほどが一般的です。
手術そのものは難しいものではなく、開口器と呼ばれる器具を口にかけ、扁桃を摘出します。
術後出血の危険性があることや、しばらくは痛みや違和感、味覚障害などが残ることもあります。
手術を検討する場合は、しっかり医師と相談した上でおこないましょう。
早期に治療を開始しよう
免疫力の弱い子どもの他にも、糖尿病、じん臓病を持っている場合には進行が早いこともあるため、できるだけ早く治療することが大切です。
扁桃炎そのものは、恐れるほどの病気ではありませんが、放っておくと重症化し、場合によっては命に関わることもあります。
また、喉の痛みや違和感を感じると風邪かもしれない、と小児科や内科の受診を検討する場合も多いでしょう。
しかし、風邪と扁桃炎の違いを適切に判断できるのは、耳鼻咽喉科であることが少なくありません。
頻繁に扁桃炎を繰り返すなら、耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
まとめ
扁桃炎は、喉の奥にある扁桃が細菌やウイルスに感染することで、炎症を起こし、痛みや発熱など、ひどい風邪のような症状を引き起こす病気です。
疲れや寝不足などによって免疫力が落ちているときなどに発症しやすく、とくに子どもの場合は、免疫機能が不十分なこともあり、扁桃炎にかかることが少なくありません。
頻繁に繰り返す扁桃炎は慢性扁桃炎、習慣性扁桃炎と呼ばれ、合併症を引き起こすこともあります。
- 扁桃炎は免疫力の低下によって発症する疾患
- 何度も繰り返す扁桃炎は合併症の恐れがある
- 子どもは慢性扁桃炎になりやすく重症化しやすいので要注意
重い合併症を引き起こす場合や、慢性扁桃炎により日常生活に支障が出ている場合は、扁桃の摘出手術も検討するとよいでしょう。
また風邪と扁桃炎の区別は専門の医師でないとわからないこともあるので、かかりつけの耳鼻咽喉科へ受診しましょう。