夏風邪の代表ともいえるヘルパンギーナは手足口病やプール熱と並び、三大夏風邪に挙げられるウイルス感染症です。
暑い季節だから風邪なんてひかないだろう、と油断していませんか?
ヘルパンギーナはプール熱と同じく毎年のように幼稚園や保育園では集団感染が発生し、各地で流行警報が発令されることも少なくありません。
今回は、ヘルパンギーナの症状や治療法、かかった場合の対処法などについて詳しく解説します。
目次
ヘルパンギーナとは?
ヘルパンギーナとは、主にコクサッキーウイルスA群が原因となるウイルス性の感染症のひとつです。
しかしヘルパンギーナの原因となるウイルスの型は他にも数種類あるため、何度も感染してしまうこともあります。
6月~8月にかけてもっとも流行し、西から東へ流行の推移がみられることも特徴です。
ヘルパンギーナにかかりやすい年齢は?
ヘルパンギーナは90%以上が5歳以下でとくに1歳がもっとも多く感染しています。
しかし免疫力が落ちてい場合、大人でもかかることがあります。
ヘルパンギーナに感染した子どもを看病する際には、手洗いうがいやマスクの着用などで感染の予防につとめることも大切です。
ヘルパンギーナと似ている病気
ヘルパンギーナと似た症状を持つ病気には、同じ三大夏風邪の手足口病とプール熱が挙げられます。
手足口病は、口だけでなく手や足などにも発疹があらわれますが、熱は微熱程度で発熱しないこともあります。
プール熱は、のどの痛みや炎症をともないますが水疱ができることはなく、目の充血や目やになどが出ます。
ヘルパンギーナの症状
ヘルパンギーナでは感染から2~4日間の潜伏期間を経て、主に次のような症状があらわれます。
- 発熱
- 口の中に水疱ができる
- のどの痛み(咽頭痛)
それでは1つずつ見ていきましょう。
発熱
鼻水や咳といった前触れなく、突然あらわれる39.0℃前後の発熱が発症のしるし。
高熱にともない、熱性けいれんを引き起こすこともあるので注意が必要です。
口の中に水疱ができる
発熱のあと、口とのどの内側に直径2mmほどの水疱が、数個から数十個あらわれます。
のどの天井部分からのどちんこを中心として出現し、舌や頬の内側に出る場合もあります。
しばらくすると水疱はつぶれて、潰瘍やびらんになり、痛みを伴います。
また、水疱の痛みが原因で食べ物を受け付けなくなってしまったり、不機嫌になってしまったりすることも少なくありません。
のどの痛み(咽頭痛)
水疱の痛みとともに、のどが赤く腫れて痛みを伴うことも多くあります。
ヘルパンギーナによる合併症
ヘルパンギーナに感染すると、まれにですが次のような合併症を引き起こすことがあるので注意が必要です。
- 無菌性髄膜炎
- 急性心筋炎
それでは1つずつ見ていきましょう。
無菌性髄膜炎
無菌性髄膜炎とは、脳や脊髄をおおう髄膜に炎症が起きる疾患のことです。
ヘルパンギーナの原因であるコクサッキーウイルスなどが髄膜に達し、炎症を起こすことが原因です。
発熱や頭痛、嘔吐といった症状が見られ、進行にともない意識障害やけいれんが見られることもあります。
また項部硬直と呼ばれる、首の後ろの筋肉がこわばってしまい首を前に倒すと痛みが走る症状があらわれます。
一般的に対症療法での治療となり、安静にしておくことで回復に向かいますが、まれに重篤化することもあるので注意しましょう。
急性心筋炎
急性心筋炎とは、心筋と呼ばれる心臓の筋肉に炎症が起きる疾患のことです。
無菌性髄膜炎と同じように、ヘルパンギーナの原因となるウイルスが心筋で炎症を引き起こしてしまうために起こります。
発熱や筋肉痛といった風邪の初期のような症状から始まり、動機や息苦しさ、胸の痛みといった症状があらわれ始めます。
場合によっては、不整脈や失神、心不全などの危険な状態になることもありますが、症状が目立たないまま治ってしまうこともあるなど、症状には大きく幅があります。
危険な症状があらわれた場合、早期治療が回復への大きなカギとなるため、少しでも不安があれば病院へ相談するようにしましょう。
ヘルパンギーナの感染経路
ヘルパンギーナは、以下のようなルートで感染します。
- 飛沫感染
- 接触感染
- 経口感染
飛沫感染
口やのどにできた水疱の中に含まれるウイルスが咳やくしゃみとともに排出され、それらを他人が吸い込むことで感染します。
接触感染
咳やくしゃみだけでなく、ウイルスは便にも含まれます。
トイレやおむつ替えのあと、手洗いが不十分だとその手が触れた場所を介してウイルスが他人の手に付着してしまいます。
そしてその手で目や鼻などの粘膜に触れることで体内に入り感染という経路を辿ります。
また便だけでなく唾液や鼻水も同じようにウイルスを含み、触れると感染につながります。
経口感染
さまざまな経路をたどって排出されたウイルスが食べ物や飲み物に付着し、それらを口にすることで感染し腸で菌が増殖します。
ヘルパンギーナの治療法
ヘルパンギーナには現在のところ特効薬となる薬はなく、対症療法での治療となります。
有効なワクチンもないため、予防接種で防ぐこともできません。
ウイルス性なので抗生剤は効きませんが、熱が高ければ解熱剤、水疱の傷みがあれば軟膏などが処方されます。
無理をせず安静に過ごすことがもっとも効果的な治療といえるでしょう。
とはいえ一般的には軽症で、1週間ほどで症状がおさまることがほとんどです。
ただし先に挙げたような合併症を疑うような症状がみられたら、早めに病院を受診するようにしましょう。
ヘルパンギーナにかかったら?
ヘルパンギーナにかかったら、回復を待ってゆっくりと体を休めることが何より効果的です。
ヘルパンギーナにかかってしまった場合、以下のような点に注意して過ごしましょう。
安静に過ごす
熱がある時にはエアコンなどを上手に使って、部屋を快適な温度や湿度を保ち、安静に過ごすようにしましょう。
ヘルパンギーナは夏に流行するため、暑さで体力を奪われたり熱中症になりやすかったりします。
体をゆっくり休めて、回復への力をつけることが大切です。
脱水症状に注意
ヘルパンギーナでは口やのどにできる水疱が原因で、食べ物や飲み物を受け付けなくなってしまい、脱水症状があらわれる場合もあります。
また熱中症対策を兼ねる意味合いでも、水分補給は重要です。
食事を摂ることは難しくても、経口補水液などでこまめに水分だけは摂らせるよう心がけます。
おしっこが出ない、泣いても涙が出ない、唇が乾燥しているなどの症状がみられたら、脱水状態の場合があるので、早急に病院を受診しましょう。
刺激の少ない食べ物を
食事でものを口に入れたり飲み込んだりする際に、口やのどにできた水疱が刺激されて痛む場合が多くみられます。
ゼリーやプリン、冷めたおじややうどん、スープなどやわらかく刺激の少ない冷たい食事を心がけるとよいでしょう。
また飲み物はオレンジジュースなど酸味のあるものも刺激となるため、麦茶や牛乳などがおすすめです。
感染拡大を防ぐ
もっとも周囲に感染させやすいのは症状が出ている急性期ですが、回復後も口からは1~2週間ほど、便からは2~4週間ほどウイルスが排出され続け、感染拡大の原因となってしまいます。
ヘルパンギーナの感染拡大を防ぐためには、こまめな手洗いうがいやマスク、手指の消毒などを徹底することが大切です。
とくにおむつ交換の際や、トイレの後には気をつけましょう。
いつから登園させても大丈夫?
ヘルパンギーナは、インフルエンザのように出席停止の扱いとなる疾患ではありません。
熱が下がり、症状が落ち着いたら登園させてもよいでしょう。
ただし感染拡大を防ぐ点からも、しばらくは人混みを避けるようにしたいものです。
まとめ
ヘルパンギーナは高熱と口やのどにできる水疱が特徴の夏風邪のひとつです。
特効薬となる薬はありませんが、脱水症状に気をつけて安静に過ごすことで、1週間ほどで回復に向かいます。
- ヘルパンギーナは夏に流行しやすい子どもの病気の1つ
- のどの痛みがあるので食事はムリにさせず水分補給を心掛ける
- 稀に危険な合併症を起こすので気になることがあればすぐに病院受診へ
ヘルパンギーナは熱が下がっても1ヶ月ほどウイルスが排出され続けるので、看病する方はこまめな手洗い・うがい、手指の消毒などを徹底しましょう。
また稀に合併症を引き起こす恐れがあるので、子どもの様子がいつもと違うと思ったらすぐに病院へ受診しましょう。