子どものいびきがひどかったり、口呼吸で口がぽかんと空いていたら気になりますよね。
もしかすると、それはアデノイド肥大が原因かもしれません。
アデノイド肥大による症状を放っておくと、子どもの成長や発達においてさまざまな影響を及ぼすこともあり、ひどい場合には手術などの治療が必要です。
今回は子ども特有の病気の1つである、アデノイド肥大の原因や症状、治療法について詳しく解説します。
目次
アデノイドとは?
アデノイドとは、咽頭扁桃とも呼ばれる鼻の突き当たり部分のことです。
「のどちんこの裏側」というと分かりやすいかもしれません。
そのため口を覗いてみてもアデノイドを目視で確認することはできません。
アデノイドはリンパ組織で、外部から病原体やウイルスなどの侵入を防御する役割を持ちます。
アデノイド肥大とは?
アデノイド肥大とは、その名の通り、アデノイドが肥大してしまう子ども特有の病気です。
他にも「アデノイド増殖症」や「咽頭扁桃肥大」、単に「アデノイド」と呼ばれることもあります。
アデノイドそのものは、3~6歳にかけて大きくなりますが、その後徐々に小さくなり、思春期ごろまでに小さくなるのが一般的です。
しかし、何らかの原因でリンパ組織が増殖、アデノイドが肥大し、さまざまな症状を引き起こしてしまうことがあります。
また、同時に口蓋扁桃と呼ばれる、のどちんこ(口蓋垂)の両側部分も肥大している場合も少なくありません。
アデノイドは風邪などによる細菌やウイルス感染により肥大してしまうこともありますがその場合、薬で治療することができます。
また遺伝によって先天的にアデノイドが大きいという場合もあります。
しかし、アデノイドが慢性的に肥大してしまう原因は、現時点ではっきりしていません。
アデノイド肥大から起こる病気
アデノイドが肥大してしまうと、鼻を後ろ側から塞いだ状態となってしまい、空気の通り道が狭くなってしまいます。
その結果、次のような症状が生じます。
- 鼻づまり
- 鼻声
- いびき
- 口呼吸
ここからは、アデノイド肥大によって起こりやすい代表的な疾患を挙げてみましょう。
滲出性中耳炎
アデノイドが肥大することで、鼻と耳をつなぐ耳管が塞がれ滲出性中耳炎が生じることがあります。
鼓膜の奥にある中耳に滲出液が溜まってしまう病気で、痛みはあまりありませんが、軽度の難聴が起こることもあるので、注意が必要です。
副鼻腔炎・鼻炎
アデノイドが肥大し、鼻水の流れを妨げてしまい、副鼻腔炎(ちくのう症)や鼻炎を引き起こすこともあります。
副鼻腔炎は、鼻づまりがひどくなったり、黄色い膿のような鼻水が出たりする病気です。
アデノイド肥大が原因の副鼻腔炎は慢性化しやすく、いびきや口呼吸の原因になることもあります。
睡眠時無呼吸症候群
アデノイドが肥大し気道がふさがれて呼吸しづらくなることで、いびきや睡眠中に短時間の無呼吸を繰り返す、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。
眠りが浅く、いびきを伴うことも多くあり、しっかり寝ているつもりなのに睡眠が足りず、日中の眠気や寝起きの悪さなどを招きます。
アデノイド肥大の症状を放置するリスク
アデノイド肥大による症状を放っておくと、さらに以下のような合併症状を引き起こすことがあります。
学習障害
睡眠時無呼吸症候群により睡眠不足になると、昼間に眠気が襲ってぼんやりしたり、授業中の集中力が低下してしまったりすることがあります。
また、滲出性中耳炎によって聴力が低下し、学校で先生の話す内容が聞き取れなかったり、鼻づまりで注意力が散漫になってしまったりすることも考えられます。
結果として授業についていけなくなり、学習障害を引き起こしてしまう場合もあります。
風邪をひきやすい
アデノイド肥大では口呼吸になることが多く、病原体を吸い込みやすい、乾燥しやすいなど、喉に負担をかけてしまいます。
そのため、喉の痛みや炎症、咳やたんなど喉からの風邪をひきやすくなります。
アデノイド顔貌
アデノイド肥大による鼻づまりや口呼吸が長く続くことで、常に口をぽかんと開けた状態が続き、アデノイド顔貌という独特な顔つきになってしまうことがあります。
アデノイド顔貌は、以下のような特徴が挙げられます。
- 上の前歯の歯並びが悪い
- 下アゴが極端に後ろに下がっている
- 唇が厚ぼったく、外側にめくれている
- 鼻の下が長い
しかし、睡眠時無呼吸症候群となるようなひどいアデノイド肥大の場合でも、手術による適切な治療を受けることで、アデノイド顔貌は治ることが多いとされています。
成長や発達への悪影響
アデノイド肥大では、睡眠時無呼吸症候群による睡眠障害や、呼吸がしにくいことで十分に食事がとれないことが原因で、子どもの十分な成長を妨げることもあります。
口呼吸になりやすいアデノイド肥大の赤ちゃんは、うまくおっぱいやミルクを飲むことができません。
そのため栄養障害を引き起こし、身長や体重が十分に増えず、成長が遅れてしまうこともあります。
また、重度の呼吸障害によって胸郭が変形してしまい、ろうと胸と呼ばれる胸の真ん中が凹んだ状態やその逆の鳩胸になってしまうこともあります。
さらに呼吸障害が長時間続くと、血液中の酸素の量が少なくなり、脳や心臓へ大きなダメージが生じることもまれにですが見られます。
口内環境の悪化
アデノイド肥大によって口呼吸になると、口内環境にも悪影響を及ぼします。
常に口を開けていることで、口の中が乾燥しやすく唾液が少ない状態になります。
唾液には口内細菌を殺菌する役目があり少なくなってしまうと、虫歯や歯周病を招いたり、口臭がきつくなったりと、口内環境が悪化しやすくなってしまうのです。
また、粘膜が傷つきやすく口内炎にもなりやすくなります。
アデノイド肥大の検査
アデノイドが肥大しているかどうかは、顔の側面からのレントゲン撮影で判断できます。
鼻からファイバースコープを通して診る方法もありますが、子どもには痛みや恐怖があるため、おこなわれないこともあります。
アデノイド肥大の治療
風邪などにより、アデノイドが炎症を起こして腫れている場合には、抗菌薬や点鼻薬などで治療します。
しかし、アデノイドの肥大が慢性化している場合は、薬での治療はあまり効果はありません。
8~10歳を過ぎると、自然にアデノイドが小さくなっていくことが多いため、日常生活にあまり支障がない場合にはそのまま経過観察となることが多いようです。
切除手術
アデノイド肥大が慢性化し、睡眠時無呼吸症候群など合併症により日常生活や成長に何らかの障害が生じている場合には、切除手術をおこなう必要があります。
一般的に3歳までは、アデノイドの持つ免疫機能が必要なことや切除しても再発の可能性があることなどから、手術はしない場合がほとんどです。
しかし、呼吸障害が重い場合は3歳以下であっても、例外として手術をおこないます。
手術は全身麻酔でおこない、一週間程度の入院が必要です。
同時に口蓋扁桃の肥大を引き起こしている場合にはあわせて摘出手術をおこなったり、滲出性中耳炎の治療のため、鼓膜チューブ留置をおこなったりすることもあります。
アデノイド摘出手術では、出血以外の危険性は少なく、鏡を見ながら口の中から切除するため、首やアゴなどに傷が残ることもありません。
また、免疫の役割を持つリンパ組織のアデノイドですが、他にも同じような扁桃組織が存在するため、手術により切除しても極端に免疫力が下がることはないと考えられています。
まとめ
アデノイドの多くは3歳~6歳にかけて大きくなり、その後徐々に小さくなるのが一般的です。
しかしながら、何らかの原因でリンパ組織が増殖し、アデノイドが肥大することがあります。
アデノイドが肥大すると、気道が狭くなるためさまざまな疾患やリスクが生じるので注意が必要です。
- アデノイド肥大は先天性と後天性のものがあるが原因ははっきりしていない
- アデノイド肥大を放置すると子どもの成長に悪影響を及ぼす
- 日常生活に支障が出る場合は摘出手術が行われることもある
子どもの口呼吸やいびき、夜中に呼吸が止まっているなど気になる点があれば早めに耳鼻科を受診し医師に相談しましょう。