子どもが突然耳を痛がったり、かゆがったりしたらそばにいる親御さんは非常に心配になりますよね。
子どもは「痛い」「かゆい」などの自分の状態を言葉でうまく伝えられないため、何が起こったのか把握するのは親御さんでも難しいでしょう。
子どもが突然耳に違和感を訴えていたら、もしかしたら耳の中に虫または異物が入ってしまっているのかもしれません。
「耳の中に虫が入るなんて…」と思っている方もいるでしょう。
しかし、耳に虫は意外と入りやすく、耳鼻科では珍しいことではないのです。
今回は、耳に虫や異物が入った時の症状や対処法、治療法などについて詳しく解説します。
目次
耳に虫が入ったときの症状
耳に虫が入ったときに起こる症状は次の通りです。
- 耳が詰まった感じがする
- 耳が聞こえにくい
- 耳が痛い
- 反射的に咳が出る
上記の症状はあくまでも一般的なもので、虫の大きさや、虫が生きているか死んでいるかなどによっても異なり、症状がほとんど感じられないこともあります。
ただ虫が生きている間は、強い痛みが生じることが多いため、子どもの耳の中に虫が入ると痛みや恐怖で泣きわめいてしまうこともあるかもしれません。
子どもの耳の中に虫が入ったときの対処法
大切なわが子の耳の中に虫が入り込んでしまったら、どうしたらよいのかわからず、慌てふためくお父さん・お母さんもいることでしょう。
しかしながら、わが子の耳の中の苦痛を早く取り除くためにも、お父さん・お母さんは保護者として冷静に対処しなければなりません。
ここでは、子どもの耳の中に虫が入り込んでしまったときの対処法をご紹介します。
子どもを落ち着かせる
子どもの耳の中に虫が入ったら、違和感や痛みで泣いてしまうこともあります。
まずは子どもを落ち着かせましょう。
子どもが大声で泣いたり、暴れたりするとその刺激で虫がさらに耳の奥へ入り込んでしまうこともあるからです。
安心感を与えるため、抱っこしたり声かけをしたりして落ち着かせましょう。
耳を触らせない
耳の中の虫が動くと、耳の中がかゆくなったり痛くなったりするため、子どもによっては苦痛を感じるかもしれません。
苦痛から逃れようと、子どもは耳を触ろうとしたり、耳に指を突っ込もうとしたりすることもあります。
しかし、パパやママは心を鬼にして子どもに耳を触らせないよう、腕をしっかりと握っておきましょう。
耳を触ると虫が耳のさらに奥に入る可能性があるからです。
虫が耳の奥に入ってしまうと取り除くのに時間がかかり、子どもの苦痛な時間がさらに伸びてしまう恐れがあります。
耳鼻咽喉科へ受診
子どもを落ち着かせたら、すぐに最寄りの耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
自力で取り出そうとすると、かえって虫が耳の奥に入ってしまったり、外耳や鼓膜を傷つけてしまう恐れがあるからです。
もし自力で、虫を出せた場合でも、虫の足や羽が耳の中に残っていることや、虫が暴れて耳の中に傷ができている可能性もあります。
虫が出てきても出てこなくても、いちど耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。
耳の中に虫が入ったときにやってはいけないNG行動
子どもの耳の中に虫が入ったら、慌てずに子どもを落ち着かせてすぐに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
誤った行動をしてしまうと、耳の中を傷つけてしまいかえって子どもに苦痛を与えてしまいます。
無理に虫を取り出さない
耳の中に入った虫は、素人では簡単に取り除けません。自力で取ろうとピンセットや耳かきを使うのは大変危険です。
道具を使うことで、虫を耳のさらに奥へ押し込んでしまう恐れがあります。
また殺虫剤などは危険なので、決して耳の中に入れないようにしてください。
耳の中に光を当てない
虫の種類によっては、光を嫌がり逆に耳の奥へ進もうとする虫もいます。
子どもが突然耳を痛がったり、かゆがったりしたら虫ではないとしても、耳の中に異物が入り込んでいる可能性が高いです。
耳の中の違和感の正体を自力で探らず、すぐに耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。
耳の中に水を入れない
「耳の中に虫が入ったら、水を耳の中に入れてだせばよい」
このような対処法を聞いたことがある方もいるかもしれません。しかしながら、これは間違った対処法です。
なぜなら、虫の体毛は防水性で水を弾くため溺れ死ぬことはなく、暴れてしまうのでかえって痛みが伴います。
また、水道水の水を耳の中に入れると、内耳の温度刺激により回転性のめまいが生じることもあるため注意が必要です。
耳の中に虫が入り、耳鼻咽喉科に受診する前になんとか対応したいのであれば、水ではなく食用油を耳の中に入れましょう。
食用油は、人体に無害ですし耳の中に入れても炎症を起こすことはほとんどありません。
また油は虫を含む異物を包み込んでしまうため、虫を窒息死させることもできます。
耳鼻咽喉科での治療法
耳の中に入った虫が出てこない場合、病院ではどのような治療や処置をおこなうのでしょうか。
虫が生きた状態だと、取り出そうとする際に暴れて激痛が走ることもあります。
まずは麻酔薬やオイルなどを注入して虫が動かないようにしてから処置を行います。
その他、次のような治療が行われますので見ていきましょう。
- 細いチューブを耳に通し奥から手前に水を流して虫を出す
- 鉗子(かんし)や鈎(かぎ)と呼ばれる道具を使って摘出
- 吸引管を使って吸い出す
ほとんどの場合、耳に入った虫は外来で摘出できますが、まれに入院して手術の必要があることもあります。
痛みが激しいときや、乳幼児が暴れてしまう場合などは、医師の判断により全身麻酔下で耳を切開して手術をおこないます。
耳に虫以外の異物が入ってしまったら
耳の中に入った異物は医学的に「外耳道異物(がいじどういぶつ)」とよばれ、虫以外にもさまざまな異物が耳には入り込みます。とくに子どもは、興味本位で耳にいろんなものを入れてしまいがちです。
たとえば小石や豆、果物の種、おもちゃのビーズやシールなど、じつにさまざまな異物が出てきます。
子どもは叱られると思って言い出せずに、異物の発見が遅れることも珍しくありません。
気づいたら、お風呂やプールの水を吸って大きくなった豆が子どもの耳の穴を塞いでいた、なんてこともあります。
まだ言葉をうまく話せない乳幼児の場合、大人が気づかず、しばらく経って耳掃除の際にようやく気づくということも珍しくありません。
大人でも耳かきや綿棒の先端部分、ピアスのキャッチ、マッチ棒の頭などの異物が入り込み取れなくなってしまうことがあります。
これらの場合も、虫が入ったときと同じように無理に取り出そうとせず、必ず耳鼻科を受診するようにしましょう。
耳に虫が入らないようにするには?
耳に虫が入ることを完全に防ぐのは、私たちに耳の穴が空いている以上、なかなか難しいかもしれません。
虫の多い時期は、電気をつけて窓を開けっ放しにしないなど注意しておくとよいでしょう。
アウトドア活動やキャンプなど虫の多い場所で過ごす場合、帽子や耳栓で耳を保護するのも効果的です。
そして意外かもしれませんが、耳垢を取りすぎないことも予防のひとつになります。
耳垢には、その独特な苦味や匂いなどから防虫効果があるとされているからです。
そのため、耳掃除をしすぎないことは、耳に虫が入ることを予防してくれるかもしれません。
耳に虫や異物が入ることが原因で起こる病気はある?
耳に虫や異物が入り、耳の中が傷ついてしまうと、他の病気をおこしてしまうことがあります。
いずれの病気も無理に虫を取り出そうとしたり、虫が耳の奥で暴れることで鼓膜に穴を開けてしまったりといったことが原因で起こります。
虫には雑菌が多く付着しているので、耳の中についた傷から炎症を起こしてしまうことも原因のひとつです。
しかし、いずれの病気も虫や異物を適切に取り出し治療をおこなえばすみやかに治るので、大きな心配はいりません。
耳の中に虫や異物が入ることで引き起こしやすい病気を挙げてみましょう。
外耳道炎
外耳道炎は、外耳道(耳の穴から鼓膜まで)についた傷が細菌に感染し、炎症を起こした状態です。
症状としては、赤く外耳道が腫れ、耳だれが出たり、痛みやかゆみが生じたりします。
鼓膜炎
鼓膜炎は、鼓膜に傷がつき細菌に感染することで炎症を起こした状態です。
強い耳の痛みや耳の奥が詰まったような不快感、聞こえの悪さなどが生じます。
外耳道炎や中耳炎と併発しやすいのも特徴です。
まとめ
子どもの耳に虫が入ったら、一刻も早く取り出して苦痛から解放させてあげたいものです。
しかし、お父さん・お母さんが子どもの耳の中から自力で虫を出すのはリスクが高すぎます。
なぜなら、外耳道と呼ばれる部分は狭く曲がっており、自力で出そうと耳かきなどを耳に入れてしまうと、虫がさらに奥にいってしまう恐れがあるからです。
また、耳の奥は強い痛みを感じやすいただけでなく、繊細な部分なので、虫によって耳の中を傷つけてしまうと別の耳の病気を引き起こす恐れがあります。
自己判断で処置を行うことは避けましょう。
- 耳に虫が入ったらすみやかに病院へ受診する
- 耳垢は防虫効果があるので取り過ぎないようにする
- 耳に虫が入って無理に取ろうとすると外耳炎などが生じる
虫に限らず異物が耳の中に入ってしまったら、すみやかに耳鼻科を受診するようにしましょう。