寝起きや寝返りによって引き起こされるめまいは、朝のめざめを不快にしますよね。
そんな朝が毎日続くと思うとうんざりしてしまいます。
そこで今回は、良性発作性頭位めまい症の原因や治療法について解説します。
良性発作性頭位めまい症は命に関わる病気ではありませんが、重大な病気が隠れている可能性もあるので、軽視できません。
良性発作性頭位めまい症と勘違いしやすい病気についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
良性発作性頭位めまい症とは?
良性発作性頭位めまい症とは、頭を一定の位置にうごかしたときに、目が回るもしくは揺れるといっためまいが生じる耳の病気です。
めまいに伴い吐き気や嘔吐を伴うので、重大な病気だと疑いがちですが、命に関わる危険な病気ではありません。
しかしながら、良性発作性頭位めまい症によるめまいで転倒をして怪我や骨折をしてしまう恐れがあるので注意が必要です。
良性発作性頭位めまい症の原因
良性発作性頭位めまい症は、内耳に収まっている耳石が剥がれて三半規管の中に入ったときに生じます。耳石とは炭酸カルシウムの小さな粒のことです。
私たちの身体の直線方向の速さの変化や重力を感じ取る役割を担っています。
良性発作性頭位めまい症が起こるメカニズムは次の通りです。
- 耳石がなんらかの原因で剥がれる
- 剥がれた耳石が三半規管に入り込む
- 入り込んだ耳石が原因で三半規管内のリンパ液の動きが大きくなる
- 三半規管内の神経受容体が過剰に刺激される
- めまいが生じる
三半規管は、身体の平衡感覚を保つための器官です。
身体を動かすと三半規管内のリンパ液が動き、脳に刺激が伝わることで、平衡感覚を保つことができます。
そこに耳石が入り込むと、頭を動かしただけで中のリンパ液の動きが大きくなります。
すると身体は横になっているのに、動いていると認知してしまうので、車酔いのようなめまいに陥ってしまうのです。
耳石が剥がれる主な原因は、加齢ですがその他にも次のようなことが挙げられます。
- 耳の感染症
- 頭または耳の怪我
- 長期間に渡る寝たきり
- 耳の手術など
最近は、デスクワークで運動量が少なくなっている若者にも発症することがあるので注意が必要です。
良性発作性頭位めまい症の症状
良性発作性頭位めまい症の主な症状は次の通りです。
- 1~2分程度の回転性のめまい
- 吐き気や嘔吐
- 眼振
眼振とは、意思と関係なく眼球が動く症状のことです。
短時間のめまいとそれに伴う吐き気以外の症状がないのも、良性発作性頭位めまい症の特徴の1つになります。
良性発作性頭位めまい症は、耳石が三半規管に流れ込んでいる間は、症状が治まることはありません。
危険な症状ではありませんが、めまいによる転倒で怪我をしてしまう恐れがあるので、早めの受診をおすすめします。
良性発作性頭位めまい症の治療法
「耳石が三半規管から出ない限り、一生めまいが続くのかしら?」
このように心配される方もいらっしゃるかもしれませんね。
でもご安心ください。
耳石は時間はかかりますが、三半規管内で溶けてなくなります。
ただ耳石が溶けてなくなるまで、めまいや吐き気と向き合う日が続くのはつらいものです。
良性発作性頭位めまい症は、耳鼻咽喉科で治療できます。
そして多くの患者さんはその日に症状が改善します。
ここからは、耳鼻科による良性発作性頭位めまい症の代表的な治療法を2つご紹介します。
良性発作性頭位めまい症の治療法1:薬物療法
めまいになどの症状を和らげるために行われる療法です。
最も良く処方されるのが、めまいによる吐き気や嘔吐を和らげる「吐き気止め」になります。
その他にも、抗不安薬や抗めまい薬を処方されることがあります。
良性発作性頭位めまい症の治療法2:耳石置換法
浮遊耳石置換法とは、医師が患者さんの頭をゆっくりと上下左右に動かし、三半規管に入り込んだ耳石を移動させる治療法です。
耳石の位置を小型のCCDカメラなどを使い、眼球の動きを見ながら治療を行います。
約7~8割の患者さんはこの治療法により、治療したその日に症状が改善します。
患側や責任半規管がわかれば治療可能ですが、一般外来レベルではわからない場合も少なくありません。
患者さんが頭を上下左右に動かしてしまうと、耳石がさらに三半規管の奥に入り込んでしまう恐れがあります。
必ず耳鼻科を受診し、治療をしましょう。
良性発作性頭位めまい症は再発率が高い
良性発作性頭位めまい症は【良性】でありますが、再発率が高い病気です。
- 1年以内の再発率:1~3割
- 5年以内の再発率:5割
良性発作性頭位めまい症は寝返りを打たない人や長時間頭を動かさない人がなりやすいのが分かっています。
意識的に運動をして、再発を防ぎましょう。
良性発作性頭位めまい症に効果的な運動の1つが「寝返り運動」です。
- 仰向けになる
- 身体を左に傾けて10秒
- 再び仰向けに戻る
- 右に身体を傾けて10秒
- 1~4を10回繰り返す
寝返り運動は1日2回、起床時と就寝時に行うと効果的です。
そのほか、睡眠不足など不規則な生活も良性発作性頭位めまい症の原因の1つとなっていますので、規則正しい生活を心がけましょう。
期間に何度も再発する場合、別の病気が原因の可能性もあります。
重大な病気であることもあるので、耳鼻科に相談して早めに検査してもらうことをおすすめします。
良性発作性頭位めまい症と骨粗鬆症の関係
耳石が剥がれる原因は様々ですが、その1つにカルシウム不足が挙げられます。
耳石はカルシウムの小さな粒が集まってできているため、不足するともろくなり剥がれやすくなってしまうのです。
そのため、カルシウムの代謝に影響を及ぼす骨粗鬆症と良性発作性頭位めまい症は、密接な関係にあると言われています。
良性発作性頭位めまい症は、60~70代の閉経後の女性に多いという調査結果が出ています。
なぜなら女性は閉経後、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌低下により、カルシウム代謝に影響が出てしまうから。
その結果、耳石が剥がれて三半規管に入り込んでしまうのです。
良性発作性頭位めまい症には難治性のタイプも
良性発作性頭位めまい症のほとんどは、耳鼻科を受診することにより改善もしくは根治します。
しかし、稀に難治性の良性発作性頭位めまい症もあるので注意が必要です。
良性発作性頭位めまい症と勘違いしやすい病気
良性発作性頭位めまい症のほかにも、似たような症状が表れる耳の病気があります。
ここでは、良性発作性頭位めまい症と勘違いしやすい病気を2つご紹介します。
メニエール病
メニエール病も良性発作性頭位めまい症と同じく、めまいの症状に見舞われます。
メニエール病の場合、めまいだけでなく次のような症状が表れます。
- 耳が詰まった感じになり、聞こえにくくなる
- 耳鳴りがする
- めまい症状が20分以上続く
メニエールの場合、三半規管内のリンパ液の増えすぎが原因で症状が起こります。
そのため、頭を動かしても症状が和らぐことはなくむしろ、症状が悪化する恐れがあります。
メニエール病は、早期発見と治療が重要です。
悪化すると難聴や体の平衡感覚の乱れなど日常生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります。
めまいが続くなどの症状が出たら、耳鼻科へ早めの受診をしましょう。
前庭神経炎
前庭神経炎は前触れもなくある日突然、激しい回転性のめまいが起こる病気です。
激しい吐き気や嘔吐を伴い、めまいも数日にわたって続くため、入院になることもあります。
詳しい原因は分かっていませんが、一説には風邪のウイルスが三半規管内にある前庭神経を麻痺させるからだと言われています。
前庭神経炎のめまいや吐き気は、医師でも脳出血や脳梗塞の症状との選別が難しいとのことです。
激しい回転性のめまいに見舞われたら、できるだけ早めに大きな病院を受診しましょう。
まとめ
良性発作性頭位めまい症は、内耳にある耳石が剥がれて三半規管に入り込むことにより引き起こされます。
三半規管に入り込んだ耳石は、時間が経てば溶けてなくなります。
しかしそれまで朝のめまいや気持ち悪さに耐えるのは辛いものです。
耳鼻科を受診し、きちんと診断をうけましょう。
- 良性発作性頭位めまい症は命に関わる病ではない
- 良性発作性頭位めまい症は再発しやすい
- 閉経後の高齢女性がかかりやすいので注意が必要
良性発作性頭位めまい症は、命に関わる病気ではありません。しかしめまいによる転倒で怪我をしてしまう恐れがあります。
また良性発作性頭位めまい症ではない別の重大な病気である可能性もゼロではありません。
寝返りや起き上がりのめまいに悩んでいる方は、症状が軽くても耳鼻科を早めに受診することをおすすめします。