近年は「ジェネリック医薬品」への注目が高まり、薬局で薬を処方してもらう際に尋ねられることも増えました。
「薬代が安くなる」というメリットはなんとなく知っていても、そのデメリットについてきちんとご存知の方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回はジェネリック医薬品のメリットに加え、意外と知られていないデメリットについても解説します。
あわせてジェネリック医薬品についての気になる疑問にもお答えしています。服用前にチェックしておいてくださいね。
目次
ジェネリック医薬品とは?
ジェネリック医薬品とは後発医薬品のことであり、先発医薬品(新薬)の後に開発された薬のことです。
新薬は医薬品メーカーが十数年もの研究期間と莫大なコストをかけて開発し、承認を受けた上で発売されます。
開発した医薬品メーカーは特許を取得、その後20年間(延長出願した場合は25年間)独占して新薬を販売することが可能です。
ただ、実際には治験の前に特許を出願するため、発売されて10年程度で特許が切れることとなります。
特許期間が切れた後に別の医薬品メーカーが新薬と同じ有効成分を配合し、同じ効能効果をもつ薬を製造したものをジェネリック医薬品と呼んでいます。
同じ成分に対して、いくつもの医薬品メーカーがジェネリック医薬品を製造している場合もあります。
ジェネリック医薬品のメリットデメリットは?
ジェネリック医薬品には次のようなメリットやデメリットがあります。
メリット | デメリット |
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ジェネリック医薬品のデメリット
まずはジェネリック医薬品のデメリットについて解説しましょう。
ジェネリック医薬品のデメリット1:新薬と成分が「まったく同じ」ではない
ジェネリック医薬品は新薬とすべての成分がまったく同じではありません。
いずれも有効成分は同一であり、原則として効果や効能は同等です。
ただし、添加物や製造過程は異なるため、新薬を飲み続けていた患者さんがジェネリック医薬品に切り替えることで、予期せぬ副作用が出たり、十分な効果が得られなかったりする可能性があります。
ジェネリック医薬品のデメリット2:新薬と味や形状が違うことがある
ジェネリック医薬品の製造では新薬の味や形状、色などを変えてもよいという決まりがあります。
そのため同じ新薬を長い期間飲み続けてきた患者さんにとって、ジェネリック医薬品を飲み慣れないと感じることも多いようです。
ジェネリック医薬品のデメリット3:副作用のデータが蓄積されていない
新薬の後発として開発された医薬品のため、仕方がないことではありますが、新薬と比較し、副作用に関するデータが蓄積されていません。
そのため、万が一副作用が起こった場合、医薬品メーカーにデータがなく、きちんとした見解が得られない可能性もあります。
ジェネリック医薬品のデメリット4:安全性の試験は義務化されていない
ジェネリック医薬品は安全性を評価する臨床試験などを行うことは義務化されていません。
一方、新薬においてはさまざまな試験を行うことが義務化されており、それをクリアしたのちに販売が許可されます。
つまり新薬販売の許可の時点で、有効成分の安全性などは実証されているという判断です。
したがって新薬と同じ有効成分を含むジェネリック医薬品は有効性試験において新薬と比べて統計学的に差がなければ、安全性の試験は不要だと考えられているため、義務化されていないのです。
ジェネリック医薬品のメリット
一方、ジェネリック医薬品には多くのメリットもあります。
ジェネリック医薬品のメリット1:価格が安い
ジェネリック医薬品は新薬の4~8割ほどの価格で販売され、治療にかかる費用を大きく抑えることができます。
新薬に必要な長い研究期間や莫大なコストがジェネリック医薬品では不要なため、窓口での負担を減らせるというわけです。
とくに生活習慣病を患っている方や、持病がある方など、日常的に薬を服用している方にとっては大きなメリットだといえるでしょう。
ただし、ジェネリック医薬品によってはあまり価格差がないものもあります。
ジェネリック医薬品のメリット2:効き目や安全性は新薬と同じ
ジェネリック医薬品は新薬と同じ有効成分を含むため、その効き目はほぼ同等だといえます。
また、新薬の段階でさまざまな試験を行い安全性は実証されているため、ジェネリック医薬品の安全性についても新薬とほぼ変わらないといえるでしょう。
ただ、ほぼ同じとはいえますが、完全に同じ製品ではないため、完全に同じ効果や副作用とは言えません。
そのため、一部の製品では先発品メーカーが先発品とまったく同じものを同じ工程で作成するオーソライズドジェネリック(AG)というものも存在しています。
これは完全に同じ製品であるといえます。
ジェネリック医薬品のメリット3:増え続ける国の医療費の抑制につながる
前述したようにジェネリック医薬品には開発費などのコストがかからず、増え続ける国の医療費を抑制することにもつながります。
超高齢化社会にともなって国の医療費はますます逼迫することが予想され、政府はジェネリック医薬品の利用を推奨しています。
15年ほど前まではジェネリック医薬品の普及率は1割ほどでしたが、政府の働きかけの効果もあり、2020年度には8割近くまで増え、目標としていた欧米の普及率に肩を並べました。
今後もさらにジェネリック医薬品の普及は広がっていくものと考えられます。
ただ、現在後発品メーカーの行政処分をきっかけに一部の薬に関して先発品を含め、供給停止や出荷調整が行われ、患者さんに行き渡らない状況となっており、回復までには時間が数年かかるとの予想も出ています。
医師の目線としては必要な薬が使えない状況となっており、後発品偏重の傾向はそのような危険をはらんでいるとも言えます。
ジェネリック医薬品のメリット4:新薬よりも飲みやすいように工夫されているものもある
ジェネリック医薬品は新薬と異なる味や形状などに変え、次のようにより飲みやすさを追求したタイプも多くあります。
- 苦味をおさえる
- 錠剤やカプセルのサイズを小さくする
- 水不要で飲めるOD錠に変える
他にも薬そのものの表面に名称を印字して確認しやすくしたり、冷蔵庫で保管しなければならなかった薬を常温でも可能にしたり、取り扱いやすいよう改善されたジェネリック医薬品もあります。
ジェネリック医薬品を処方してもらうには?
ジェネリック医薬品を処方してもらうには、次のような方法があります。
- 医師の診察の際に希望を伝える
- 薬局で処方箋を提出する際に伝える
- お薬手帳の表紙に「ジェネリック医薬品希望」と記載しておく
なかなか自分から声をかけるのが難しい場合には、お薬手帳を使って希望を伝えるとよいですね。
また、今服用している薬がジェネリック医薬品かどうか知りたいという場合、薬の名称チェックすればすぐにわかります。
新薬は「ロキソニン」など独自の名前がつけられるのに対し、ジェネリック医薬品は「有効成分の一般名+含量+会社名」のルールに乗っ取って名付けられます。
たとえばロキソニン(有効成分:ロキソプロフェンナトリウム)のジェネリック医薬品は、
- 沢井製薬株式会社が販売する『ロキソプロフェンNa 60mg 「サワイ」』
- 東和医薬品株式会社が販売する『ロキソプロフェンNa 細粒10% 「トーワ」』
などが挙げられます。
処方された薬の名前はお薬手帳にも記載されています。
ジェネリック医薬品のQ&A
基本的にジェネリック医薬品は安心して服用できますが、それでも不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そこでここではジェネリック医薬品にまつわる疑問にお答えします。
Q1.ジェネリック医薬品を服用して万が一副作用が出た場合はどうすればいい?
ジェネリック医薬品を正しく服用し、万が一入院治療が必要な疾病や障害などが起こった場合、「医薬品副作用被害救済制度」を利用することができます。
これは健康被害を受けた方に医療費などが給付され、ジェネリック医薬品はもちろん新薬を服用して副作用が出た場合にも適用される制度です。
程度の軽い副作用であれば、薬を処方してもらった薬局に相談するとよいでしょう。
Q2.ジェネリック医薬品を選択しない方がよい場合はある?
患者さんの判断でジェネリック医薬品を選択しない方がよいケースは原則としてありません。
ただし医師の判断でジェネリック医薬品ではなく、新薬が選択される場合はあります。
ジェネリック医薬品もしくは新薬どちらかの選択が患者さんに委ねられている場合には、どちらの薬でも治療する上では問題がないと判断されているということです。
Q3.ジェネリック医薬品についての相談は医師?薬剤師?
ジェネリック医薬品について相談したいことがある場合、医師、薬剤師どちらでもかまいません。
ただし薬の専門家である薬剤師の方がジェネリック医薬品にまつわる知識が多く、どの製品が質が良いなどの情報を知っていることが多いといえるでしょう、
いずれに相談するにせよ、ジェネリック医薬品について気になる点がある場合は、十分に相談した上で服用しましょう。
まとめ:ジェネリック医薬品について正しく知った上で選ぶことが重要
薬を処方してもらう際、今や選択肢のひとつとなったジェネリック医薬品。
メリットもあればデメリットもあり、どちらも正しく知った上で選ぶことが大切です。
- 安価で効き目や安全性は新薬とほぼ同等であるが、完全に同じではない
- 基本的には副作用についてのデータが蓄積されておらず、思わぬ副作用が出る可能性もある
ジェネリック医薬品について不安な点があればかかりつけの医師や薬剤師に相談し、きちんと納得した上で服用したいですね。