難聴は目に見えない疾患であり、身近にいる親でも気づくのに遅れてしまうことがあります。
子どもの難聴にいち早く気づくには、子どもの発する聞こえのサインを見逃さないようにしなければなりません。
そこで今回は子どもに難聴の疑いがあるかどうかをチェックするポイントを解説します。
「もしかして我が子の耳が聞こえていないかも」と不安に思っているパパやママは、子どもに難聴サインがみられないかどうかチェックしてみましょう。
あわせて子どもの難聴における診療内容や治療法などについても解説しています。ぜひ最後まで内容をチェックしてくださいね。
目次
子どもの難聴サインを見逃さない!チェックポイント
ほとんど音が聞こえない高度な難聴の場合は周囲がすぐ気づくケースが多いものの、まったく聞こえないわけではない中程度の難聴の場合は身近な親などであっても気づけないことがあります。
次のような行動は難聴を示すサインかもしれません。普段のお子さんの行動を振り返り、難聴を疑うサインがないかチェックしてみましょう。
- 名前を呼んでも返事をしないことがある
- 話し声が大きい
- 聞き間違いが多い
- 聞き返すことが多い
- 車や自動車の音に気づきにくい
- テレビやゲームの音量が常に大きい
- 日常的に鼻詰まりや鼻すすりをしている
- 言葉が遅れている・発音がおかしいなと感じることがある
- 家族や親戚に小さいときから耳の聞こえが悪い人がいる
子どもの難聴チェック1:名前を呼んでも返事をしないことがある
まずは後ろから子どもの名前を普通の声で呼んでみましょう。その時に振り返らなかったり、返事をしなかったりしたときは要注意。
また大きな声呼んだときに反応した場合もチェックしておきます。耳鼻科の受診を受ける際にはそのことも医師に伝えておきましょう。
子どもの難聴チェック2:話し声が大きい
子どもの普段の話し声が大きく、「うるさいな・・・」と感じることはありませんか?
子どもは癇癪(かんしゃく)や自分の意見が通らないときに大きな声を出してしまいがちですが、普段の話し声も大きく感じるならば要注意。
もしかしたら自分の声が聞き取りずらく、声の大きさの調整が難しいのかもしれません。
子どもの難聴チェック3:聞き間違いが多い
聞き間違いが多く、伝えたことを誤って理解していたり、指示に対してどうしたらいいか分からなかったりしていることはありませんか。
難聴により周りの人の言葉が上手く聞き取れず、聞き間違いや言い間違いを起こしているおそれがあります。
子どもの難聴チェック4:聞き返すことが多い
伝えたことを何度も聞き返されると、たとえ我が子であっても「ちゃんと聞いてる?」とイラッとしてしまいますよね。
でももしかするとその聞き返しは、ふざけているのではなく、本当に聞き取れていない恐れがあります。
この場合は、怒るのではなく耳に何か問題があるのではないかと疑い、早めに受診するようにしましょう。
子どもの難聴チェック5:車や自転車の音に気づきにくい
屋外を歩いているときなど、後ろからやってくる車や自転車の音に気づきにくいと感じることはありませんか。
未就学児のお子さんだと外出時も保護者が付いていき、車や自転車から子供を守ろうと先に動いてしまうので、気づきづらいかもしれませんね。
ただ車や自転車など危険な音が聞こえづらいと、通学で子どもが危険な目に遭うおそれがあるので、ちゃんと聞こえているか気を付けて見てあげましょう。
子どもの難聴チェック6:テレビやゲームの音量が常に大きい
テレビやゲームの音量が大きく、注意してもまた同じように大きい音で見ていることはありませんか。
もしかすると難聴によりテレビやゲームの音が聞こえづらいのかもしれません。
それだけでなく、普段からテレビやゲームの音を大音量で楽しむような生活習慣をしていると、耳を酷使してしまい一時的に難聴になってしまうこともあります。
子どもの難聴チェック7:日常的に鼻づまりがあったり鼻すすりをしたりしている
頻繁に鼻がつまっている、鼻をすすっているなどの症状はみられませんか。
子どもは中耳炎などによる「伝音難聴」になりやすい傾向にあります。
病気の治療により難聴は改善されますが、そのまま放置してしまうと治療が長引いたり、治療が完了しても聞こえにくさが残ったりすることもあります。
子どもの耳や鼻、のどの病気は早めに耳鼻科で治療を受けましょう。
子どもの難聴チェック8:家族や親戚に小さいころから耳の聞こえが悪い人がいる
家族や親戚に生まれつき耳が聞こえない、聞こえが悪い人はいませんか?難聴には遺伝性のものもあります。
家族や親戚に難聴の方がいる場合は、そのことを医師に伝えて積極的に受診することをおすすめします。
子どもの難聴の種類は2つ|先天性難聴と後天性難聴
難聴は「先天性難聴」と「後天性難聴」の2種類に分けられます。
生まれつき耳が聞こえない先天性難聴は、1,000人あたり1~2人の割合でみられるものです。
出生後に行われる「新生児聴覚スクリーニング検査」で発見されることも多く、早期発見できるケースも増えています。
一方で、成長過程で何らかの問題が生じて、聞こえが悪くなるのが後天性難聴です。
治療によって聴力を回復できる場合もありますが、そのまま耳が聞こえなくなってしまうケースもあります。
先天性難聴と後天性難聴、それぞれの原因について以下で解説しましょう。
子どもの難聴の原因【先天性難聴の場合】
先天性難聴の多くは中耳の奥にある内耳に障害が起きる感音性難聴です。
残念ながら、現状においてその多くは薬や手術での改善は難しいとされています。
原因としては、おもに遺伝や母親の妊娠中の感染症、耳の変形などが挙げられます。以下詳しく解説しましょう。
遺伝性
先天性難聴の半数以上は遺伝性であるといわれています。
しかし必ずしも、生まれた家庭の両親や親戚に聞こえの問題があるとは限りません。
両親の遺伝子が偶然に組み合わさったことが原因で難聴となるケースも多くみられます。
妊娠中の感染症
母親が妊娠中に感染症にかかったことが原因となり、子どもが生まれつきの難聴となる場合もあります。
赤ちゃんの難聴を引き起こす感染症は次の通りです。
- トキソプラズマ
- サイトメガロウイルス
- 風疹
これらのウイルスにお母さんが感染し、同時に赤ちゃんも感染してしまうこと―つまり母子感染で難聴になってしまうのです。
他にも、
- 低出生体重児
- 出生直後の低酸素状態
- 新生児仮死
など出産時のトラブルが原因で生まれた赤ちゃんが難聴になることもあります。
耳の変形や奇形
生まれ持った耳の形が原因で難聴となることもあります。
耳の穴がふさがっていたり、鼓膜の内側が変形していたり、他にも音を感じるための神経が未完成などのケースがみられます。
子どもの難聴の原因【後天性難聴の場合】
後天性難聴の原因はさまざまです。
原因や症状の程度によっては聴力が回復することはありますが、場合によってはそのまま聴力を失ってしまうケースもあります。
ここでは後天性難聴の原因として多くみられる3つの病気ついて解説しましょう。
ムンプス(おたふく風邪)
ムンプス(おたふく風邪)に感染し、難聴となるケースは数百人に1人と決して少なくありません。
ムンプス難聴ではウイルスが内耳に感染し、炎症を起こすことで聞こえに影響を及ぼし、片方の耳がほとんど聞こえなくなってしまいます。
現在のところ有効な治療法はなくワクチン接種などによって感染予防に務めることが重要です。

滲出性中耳炎
子どもがかかりやすい中耳炎も難聴を引き起こすことがあるため注意が必要です。
中耳に膿が溜まる急性中耳炎の場合の難聴は一時的ですが、中耳に液体の溜まる滲出性中耳炎の場合には軽度の難聴が数年間続くことがあります。
中耳炎は風邪が治った後でも鼻水がだらだらと続くようなときに疑われます。
鼻水くらい放っておいても大丈夫と思わず、早めの対処が重要です。

心因性
子どもの難聴には、精神的なストレスなどが原因で発症する心因性のタイプもあります。
機能性難聴とも呼ばれ、実際は聞こえているのに聞こえていないように感じ、耳などに異常はみられません。
男の子よりも女の子に多く、8~10歳前後に多くみられるのが特徴です。
薬などによる治療は必要ありませんが、場合によっては児童精神科などでカウンセリングなどを行う場合があります。
子どもの難聴は早期発見が大事
子どもの難聴は早期発見と早めの対処が何よりも重要です。
早期から聞く力や話す力をつける訓練を始めることで、難聴児であっても言葉を獲得し、スムーズなコミュニケーション能力を身につけることができます。
とくに赤ちゃんは言葉を話す前から聞いた言葉を脳に蓄積させ、話すための準備をしています。したがって赤ちゃんの難聴を放置することは、言葉の発達に大きな影響を与えます。
また、学童期の子どもの場合は授業の内容が理解できない、周囲とのコミュニケーションが難しいなどのトラブルが生じることも考えられます。
このように子どもの難聴は放っておくと言葉の発達が遅れたり、学習やコミュニケーションなど普段の生活にも多大な影響を及ぼしたりするため、早期発見・受診が重要となるのです。
子どもの難聴の診療内容
子どもに難聴が疑われる場合、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。
「どんな診療がおこなわれるのか心配」という方に、問診や診察、検査の内容について解説します。
問診
まずは問診を行います。
妊娠・出産時に異常はなかったか、生後の経過や近親者に難聴者はいないかなど、難聴が疑われる原因を問診で探ります。
診察
次に直接耳を診て、中耳炎の症状はないかなどをチェックします。
また、耳垢が耳を塞いで聞こえを悪くしていることもあるため、耳垢が詰まっていないか確認します。
聞こえの検査
必要に応じて聞こえの検査を行います。具体的は次の通りです。
- DPOAE:内耳の外有毛細胞の反応を調べる検査
- 聴性行動反応聴力検査(BOA):音に対する反応をみる検査。乳児期から1歳前後くらいでおこないます。
- 条件詮索反応聴力検査(COR):条件づけを行い、反応をみる検査
上記の検査を年齢や発達段階に応じた方法で行い、必要であれば以下の検査も合わせておこないます。
- 脳波による聴力検査
- CTスキャン
- MRI
子どもの難聴の治療法
検査の結果、難聴であると診断された場合、以下のような方法で治療を行い、聞こえの改善を図ります。
薬・手術
中耳炎や鼓膜に傷がついていたり、耳垢が溜まっていたりしている場合は、薬や手術の治療を受けることで聞こえは改善に向かいます。
補聴器
薬や手術での改善が見込めない場合、補聴器で聞こえを補います。
そもそも補聴器とは耳に装着して音を増幅させる電子機器で、乳幼児の頃から使用可能です。
耳穴式や耳掛け式、骨伝導式などさまざまなタイプがあり、子どもの発達状況などに合わせて適切な補聴器を選ぶことが大切です。

人工内耳
難聴の程度が高く、補聴器では聞こえを十分に補えない場合は、人工内耳を使うことがあります。
人工内耳とは耳の奥に埋め込み、直接神経を刺激して脳へ電気信号を送る機器です。
乳幼児の言語発達の支援や、後天的に聴覚を失った方々がある程度の聞こえを取り戻せる場合もあります。

まとめ:子どもの難聴は早期発見が重要
子どもの難聴には先天的なタイプと後天的なタイプがあります。
いずれの場合も対処が遅れると子どもの場合は言語の発達が遅れたり、学習内容が理解できなかったりと大きな影響を及ぼします。
- 難聴を疑うサインがみられたら早めの受診を
- 薬や手術で治らない難聴は補聴器や人工内耳で治療を行う
今回解説した難聴を疑われるようなサインがみられたら、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けましょう。
