鼻水がどろっとのどへ流れる後鼻漏。
イヤな感覚に気持ちの悪い思いをしたことのある方も多いでしょう。
後鼻漏は子どもにも多くみられますが、見た目には分かりにくいことや、症状をうまく言葉で表せないことから、親や周囲がなかなか気づかないことも。
しかし放っておくと悪化し、流れ落ちた鼻水が原因でのどの炎症を引き起こしたりさまざまな疾患への感染リスクがアップしたりする場合も少なくありません。
今回は見逃しがちな子どもの後鼻漏について詳しく解説します。
目次
後鼻漏とは?子どもがかかりやすい鼻の病気
後鼻漏とは、普段は鼻から出る鼻水がのどの奥へ流れる症状のことを指します。
お子さんの場合、後鼻漏が咳の原因であることも多いとされています。
鼻から出たり鼻の入り口に溜まったりする鼻水は鼻をかむことで排出できますが、鼻のからのどの方へ流れる場合には、のどに溜まり排出しにくくなってしまいます。
そもそも私たちの鼻の奥では、鼻水などの粘液が1日に数リットル作られています。
作られた鼻水は吸い込んだ空気を加湿するなどの役割を持ち、私たちは無意識のうちに飲み込むことで、鼻やのどを守っているのです。
しかし鼻の病気などにより鼻水の量が増えたり、鼻水の粘度が高くなったりすることで、自覚症状としてあらわれ、不快に感じるようになります。
なぜ子どもは後鼻漏になりやすい?
子どもは鼻の中の空間が大人に比べて狭く、さらに気温の変化などで鼻水の量が増えやすいため、後鼻漏を引き起こしやすい特徴があります。
また自分でうまく鼻をかめないため鼻の奥に鼻水が溜まりがちな点も、後鼻漏になりやすい理由のひとつです。
子どもにこんな症状が見られたら後鼻漏かも?
もしお子さんに次のような様子が見られたら、それは後鼻漏かもしれません。
とくにうまく言葉にできない乳幼児の場合には、次のような後鼻漏のサインを見逃さないようにしましょう。
風邪を引いていないのに夜や朝方になると咳が出る
起きているときはのどの奥に溜まったままの鼻水が横になると急にのどへ流れ込み、就寝や起床時に咳こんでしまうことがあります。
痰が絡んだような咳(湿性咳嗽)で、睡眠中にも起こりやすく、眠りの妨げになったり眠りが浅くなったり、ひどい時はそれで嘔吐してしまうこともあります。
また、後鼻漏による刺激が続き咳、粘膜が過敏になり、喘息様の症状をきたしてしまうこともあります。
寝てる間には成長ホルモンが分泌されるため、とくに乳幼児の場合には成長や発達が阻害される原因にもなりかねません。
また学童の場合には眠気によって授業に集中できないなどのケースもみられます。
鼻すすりや口呼吸
鼻の中の空間が狭い子どもは鼻づまりが起こりやすく、鼻水が多くなると頻繁に鼻すすりをすることがあります。
また鼻づまりによって鼻呼吸しにくくなり、口呼吸になってしまうケースもよくみられます。
後鼻漏を放っておくと感染症のリスクが高まる
子どもの後鼻漏を放っておくとさまざまなリスクが生じます。
とくに注意したいのが中耳炎です。
鼻の奥は耳管を通して内耳とつながっています。
そのため鼻の奥に雑菌の多く含まれる鼻水が溜まると、耳管を通して内耳に流れ込み、中耳炎を引き起こすケースが非常に多くみられます。
また鼻づまりによる口呼吸によってウイルスや細菌が直接肺へ入り込みやすくなり、風邪などの感染症のリスクもアップ。
後鼻漏は外から見えにくい症状ですが子どものサインを見逃さず、できるだけ早く気づいてあげたいですね。
子どもの後鼻漏、診断・治療法は?
後鼻漏かもと思ったら、鼻の専門である耳鼻咽喉科を受診しましょう。
診察時にのどの奥をみて、後鼻漏かどうかを診断します。
後鼻漏はのどの壁に鼻水が張り付いているため、生理食塩水を使った鼻洗浄や、薬液を霧状にして吸入するネブライザー療法などによって治療をおこないます。
また症状の程度に合わせて抗生物質や抗炎症剤、抗アレルギー剤などが処方されるのが一般的です。
後鼻漏を引き起こしやすいおもな疾患
後鼻漏は次のようなさまざまな疾患を原因として引き起こされます。
慢性副鼻腔炎
黄色や緑のドロドロとした鼻水が出る慢性副鼻腔炎は、もっとも後鼻漏を引き起こしやすい疾患です。
さらに悪化して副鼻腔内にうみが溜まる「ちくのう症」も慢性副鼻腔炎のひとつ。
とくに子どもの副鼻腔はまだ小さいため鼻水が溜まりやすく、副鼻腔炎を引き起こしやすい傾向にあります。
また、免疫や副鼻腔の機能が発達してないため、こどもではおこりやすい傾向にあります。
副鼻腔炎は鼻の奥にある副鼻腔と呼ばれる空間が炎症を起こしており、中耳炎を誘発するケースも少なくありません。
鼻水にいやなにおいがしたり、頭やほほのあたりが痛んだりすることもあります。
アレルギー性鼻炎
副鼻腔炎に比べて粘度の低い水っぽいサラサラとした鼻水が特徴のアレルギー性鼻炎も、後鼻漏を引き起こしやすい疾患のひとつです。
アレルギー性鼻炎では鼻水の量が増加するため、後鼻漏の他にも鼻づまりなどの症状があらわれます。
最近では子どものアレルギー性鼻炎や花粉症なども増えているため、不安に思ったら一度耳鼻科を受診するとよいでしょう。
アレルギー性鼻炎の症状について、詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
風邪
風邪はいわゆるウイルスによる感染症で、風邪にともなって後鼻漏が引き起こされるケースも少なくありません。
また副鼻腔炎を併発する場合も多く、なかなか症状がおさまらないこともよくみられます。
子どもは風邪を引きやすいので、合わせて後鼻漏にも注意してあげたいですね。
家庭でできる子どもの後鼻漏のケア
後鼻漏の悪化を防ぐためには病院での治療だけでなく、家庭でのケアも大切です。
しっかりと鼻水を取り除く
うまく鼻をかめない乳幼児は、こまめに鼻水を取り除いてあげましょう。
鼻の中をきれいに保つことは、後鼻漏の治療においてもっとも重要です。
昔は親が直接子どもの鼻に口を当て、鼻水を吸うことが当たり前におこなわれていましたが、今では衛生面などからおすすめできません。
垂れている鼻水はこまめにティッシュでぬぐう、奥に詰まった鼻水は市販の鼻吸い器を使うなどの方法がよいですね。
また、できるようであれば少しずつ鼻をかむ練習もさせるとよいでしょう。
その際強くかみすぎたり、両方の鼻をいっぺんにかんだりすると、鼓膜を痛めることがあるため、注意が必要です。
ただ、なかなかおうちで鼻水を吸うのは難しいですので、耳鼻科などの病院ですってもらうことをおすすめします。
マスクなどで加湿する
鼻水を外へ排出させるためには、加湿して鼻水の粘度を下げることも効果的です。
とくに乾燥しやすい冬の時期は湿度に注意しましょう。
加湿器はもちろん、マスクを使えば効率的に鼻の中やのどを加湿できておすすめです。
マスクを嫌がる子どもにはお気に入りのキャラクターのものを選んだり、白いマスクにお絵かきしたりすると喜んでつけてくれることも。
寝苦しそうなときは枕を高く
睡眠中に鼻水がのどへ流れて寝苦しそうだったり咳が出たりする場合には、枕を高くしてあげましょう。
のどへ流れ込む鼻水が少なくなるため、咳が出にくくなり寝苦しさが軽減されます。
まとめ
子どもの後鼻漏は外から見えないため気づきにくいですが、睡眠中だけにあらわれる咳や鼻づまり、口呼吸などの症状があれば、鼻水がのどに流れている可能性があります。
また鼻水がしょっちゅう出たり、いびきがひどかったりする場合も後鼻漏のおそれがあります。
- 子どもは鼻の中の空間が大人に比べて狭く鼻水が大人より出やすいため後鼻漏になりやすい
- 風邪を引いていないのに夜や朝方になると咳が出るのは後鼻漏の可能性がある
子どもの後鼻漏は成長とともによくなっていくことがほとんどです。
こまめに鼻水を取り除いてあげることや加湿などに注意し、必要に応じて耳鼻科へ相談するとよいでしょう。