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子どもの病気、のど

子どもがのどに異物を詰まらせたときの対処法をケース別に解説

食べ物などの異物が食道ではなく気道に入り込み、喉頭や気管支、気管に入り込むことを「気道異物」といいます。

とくに赤ちゃんや子どもに多くみられ、窒息して命を落とすこともあるため、注意が必要です。

今回は赤ちゃんや子どもが引き起こしやすい気道異物について、対処法や病院での検査、治療法、防ぐためのポイントについて解説しましょう。

赤ちゃんや子どもは異物をのどに詰まらせやすい

気道に異物を詰まらせる事故は、乳幼児にもっとも多くみられます。

とくに乳児は、いくつかの理由で窒息のリスクが高いといえます。

食事の時の体位の問題で、うまく食道の入り口が開かなかったり、舌で食物を押し込むタイミングが悪かったりと食べ物をしっかりと噛み砕けないために、口に入れた食べ物をそのまま丸飲みしてしまうことが多く気道に詰まってしまいやすい傾向にあります。

また小さな子どもは食べ物の他にも、興味を持った物をなんでも口に入れてしまいやすく、それらを飲み込んで気道に詰まらせることも。

気管に入り込んだ異物に気づかずそのままにしておくと、重症の肺炎になったり、気管に穴が空いたりするケースもあります。

気道に異物を詰まらせ、完全にのどや気管を塞いだ状態が数分間続くと、死に至るおそれもあります。

実際に毎年50名近くの子どもが命を落としており、たとえ命は助かったとしても、脳や中枢神経がダメージを受けて障害や後遺症が残る可能性も少なくありません。

また、0歳児の事故死の4割以上が食事の時の窒息と言われています。

赤ちゃんや子どもがのどに詰まらせやすい食べ物

ピーナッツや枝豆といった豆類は、小さい子どもがもっとものどに詰まらせやすい食べ物です。

その他にもとくに0~3歳の小さな子どもは、グミやマシュマロ、ゼリー、ブドウ、など口に入るサイズの食べ物であれば、なんでも事故に繋がる可能性があります。

また4歳以上になると、歯の詰め物や小さいおもちゃなどの食べ物以外の異物が多くなります。

赤ちゃんや子どもが異物をのどに詰まらせたときの対処法

赤ちゃんや子どもが食事中や目を離したすきに突然苦しがり、声が出せないようであれば気道異物による窒息が疑われます。

まず119番で救急車を呼びましょう。

そしてできるだけ周囲の人を呼び、落ち着いて次のように対処することが大切です。

意識がないとき

意識がなければ電話先の救急隊員に指示を仰ぎ、気道確保や人工呼吸などの対応をおこないましょう。

外出先でAEDがあれば手配し、心肺蘇生を開始します。

意識があるとき

意識がある場合には119番をするとともに、異物の除去をおこないましょう。

異物が取れるか、救急隊員が到着するまで繰り返しおこないます。

やみくもに口の中に指を突っ込み異物を取ろうとすると、逆に奥に押し込んでしまう場合もあるため、無理に取るのは禁物です。

咳が出るようであれば、できるだけ咳をさせ、異物を吐き出させましょう。

また途中で意識がなくなった場合には、ただちに心肺蘇生するようにしてください。

1歳以上の幼児の場合

1歳以上の幼児であれば、次のように「ハイムリック法(腹部突き上げ法)」をおこないます。

ハイムリック法(腹部突き上げ法)
  1. 子どもの背後から両腕をまわす
  2. みぞおち部分で両手を組み、にぎりこぶしをつくる
  3. にぎりこぶしでみぞおち部分を上方に圧迫する

ハイムリック法をおこなった場合は内臓を損傷していることもあるため、救急隊員におこなった旨を伝えるようにしてください。

1歳未満の乳児の場合

1歳未満の赤ちゃんの場合にはハイムリック法は行いません。

次のように「背部叩打法」をおこないます。

背部叩打法
  1. 片腕の上に乳児をうつぶせに寝かせ、手のひらで顔を支える
  2. 頭部が低くなるような姿勢にし、背中の真ん中を強く叩く

ハイムリック法、背部叩打法、いずれの方法も繰り返しおこなってください。

のどに異物を詰まらせたときの検査や治療

のどに異物を詰まらせ病院へ運ばれると、胸部X線検査やCT検査などをおこないます。

異物の確認だけでなく、肺が膨張していないか、無気肺となっていないかなど異物によって変化が生じていないかをみる必要があります。

X線やCTによる検査で気道異物を確認、あるいは疑われる場合には、内視鏡を使って直接異物を観察・治療をおこないます。

喉頭に異物がある場合は喉頭ファイバースコープを使い、鉗子によって摘出します。

気管や気管支に異物がある場合には全身麻酔をした上で、硬性気管支鏡や気管支ファイバースコープを使って異物の観察後、異物に合わせた鉗子で摘出をおこないます。

また異物を摘出した後24時間ほどは粘膜の浮腫をや炎症が起こる場合もあるため、抗生剤やステロイドを投与し、経過を観察します。

喘息だと思っていたら気管に異物が詰まっていることも

喘息のようなゼーゼーとした咳(喘鳴)が続くため検査したところ、気道異物が原因だったということもあります。

このように異物が気道を完全に塞がず、詰まっていることに気づかない状態のことも少なくありません。

また気管支に入り込むと一時的に咳がおさまるため、異物がそのまま放置されることも。

しかしそのまま放っておくと炎症や肺炎、発熱などを引き起こすため注意が必要です。

赤ちゃんや子どもがのどに異物を詰まらせないためには?

赤ちゃんや子どもが気道に異物を詰まらせないためには、家族が与える食べ物について注意することが何よりも大切です。

食事やおやつの際にはできるだけ目を離さないようにし、次のようなポイントに気をつけましょう。

3歳になるまでピーナッツや豆類を与えない

とくに小さな子どもはピーナッツや枝豆といった豆類はのどに詰まらせやすいため、3歳までは与えないようにしましょう。

またこんにゃくゼリーや餅など、子どもがとくにのどに詰まらせやすい食品にも注意が必要です。

あらかじめ食べやすい大きさに切っておく

子どもの食事やおやつは、前もって食べやすいサイズに切っておきましょう。

ミニトマトやブドウなど丸くてツルツルした食べ物は、ヒュッとのどの奥に入ってしまいやすく、とくに気をつける必要があります。

小さいおもちゃに注意

食べ物だけでなく、小さなブロックやおもちゃのパーツなどを詰まらせるケースも多くみられます。

とくに乳児は何でも口に入れてしまうため、与えるおもちゃは慎重に選びましょう。

一般的にトイレットペーパーの芯を通過してしまう物は、赤ちゃんや子どもののどにつまるおそれがある大きさといわれています。

小さなおもちゃはもちろん、ヘアピンやボールペンのキャップなどを詰まらせた事例も。

乳幼児が口に入れる可能性のあるような小物類は、手の届かない場所へしまっておきましょう。

遊び食べをさせない

食べながらふざけたり飛び跳ねたり、または横になるなどしていると、気道に異物を詰まらせやすく、非常に危険です。

普段から遊び食べをせずに、食事やおやつの際にはきちんと椅子に座って食べることを習慣づけるようにしましょう。

異物を口に入れていたら叱らずそっと吐き出させる

もし子どもがのどに詰まりそうな物を口に入れていたら、叱ってはいけません。

驚いたり泣いたりしてのどに詰まらせてしまうことがあります。

ゆっくりと吐き出させるか、優しく口から取り出してあげましょう。

まとめ

赤ちゃんや子どもはもちろん、大人でも気道に異物を詰まらせると窒息につながることもあり、非常に危険です。

詰まらせたことが分かったらすぐに救急車を呼び、意識がない場合には心肺蘇生を、意識がある場合には異物の除去をおこないましょう。

また詰まった異物に気づかず放置していると、重篤な肺炎や感染症にかかるおそれもあります。

ぜーぜーとした咳が続くなどいつもと違うと感じたら、できるだけ早く医療機関を受診することをおすすめします。

まとめ
  • 0歳児の事故死の4割以上が食事の時の窒息
  • 子どもの窒息を防ぐには、家族が与える食べ物に十分注意する必要がある
  • 異物が気道を完全に塞がず、詰まっていることに気づかない状態もあるので注意する

気道異物はさまざまな場面で起こりうる事故です。

赤ちゃんや小さな子どもには食べ物の与え方に気をつけ、小さな小物は手の届かないところに置くなど、家族や周りの協力で発生を防ぎましょう。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師