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みみ

メニエール病とは?突発性難聴との違いや治療法、発症の引き金を確認

ある日突然、立っていられなくなるようなめまいに襲われたら、誰しも不安になり何もできなくなってしまうでしょう。

さらにそのめまいが数時間も続き、吐き気や腹痛を伴ったら脳の病気ではないかと疑う人もいるかもしれません。

しかしながら、回転性の持続するめまいは耳の病気の1つであるメニエール病の可能性があります。

メニエール病は原因不明で、ストレスや過労が引き金となり発症するため誰でもり患する可能性があります。

この記事では、回転性のめまいや耳鳴り・難聴の発作をともなうメニエール病の症状や発症しやすい人、治療法を解説します。

メニエール病とは

メニエール病とは10分から数時間続く回転性めまいが、何度も繰り返される病気です。

回転性めまいだけでなく、難聴や耳鳴り、耳の閉塞感を伴います。

発作時は、回転性めまいにより立っていることもままならず、横になって発作が治まるのを待つしかありません。

また、回転性めまいによって吐き気や嘔吐、腹痛などの症状もあらわれます。

発作が治まると、難聴や耳鳴りの症状も落ち着きますが、発作を繰り返していくうちに難聴が悪化していくので注意が必要です。

メニエール病になりやすい人

メニエール病になりやすい人は以下のような特徴を持っています。

メニエール病になりやすい人の特徴
  • 既婚者の女性
  • 専門技術職に就いている
  • 真面目で神経質な性格
  • 40歳~60歳に多い

また回転性めまいの発作があらわれる時間帯や誘因にも次のような特徴があります。

回転性めまいが起こりやすい状況
  • 早朝から夕方の時間帯
  • 気圧の変化
  • 精神的・肉体的疲労がたまっている
  • 睡眠不足

メニエール病の原因

メニエール病の原因は、内リンパ水腫です。

内耳は、外リンパと内リンパの二重構造となっており、そのうち半規管や蝸牛の内部を満たすリンパ液を内リンパと言います。

内リンパは内耳内で作られ、体の平衡感覚をつかさどる役割や音を電子信号に変える働きを果たした後、内耳内で吸収されます。

内リンパ液の生成から吸収までの流れは次の通りです。

内リンパ液の生成から吸収までの流れ
  1. 三半規管や蝸牛で内リンパ液が生成される
  2. 生成されたリンパ液により音や体の傾き具合などの情報が脳に伝えられる
  3. 古くなったリンパ液は内リンパ嚢(のう)で吸収される

1~3の流れが正常におこなわれると、内耳のリンパ液は一定量に保たれます。

しかし内リンパ水腫になると、何らかの原因で内リンパが生成され過ぎたり、吸収されなかったりするため蝸牛管などが水ぶくれ状態になってしまうのです。

その結果、体の平衡感覚に異常が発生し回転性のめまいを引き起こすのです。

さらに、内リンパ水腫が悪化すると内リンパと外リンパを隔てる「ライスネル膜」と呼ばれる膜を圧迫し、耳が詰まる・難聴などの症状があらわれます。

メニエール病になったら日常生活で気を付けること

メニエール病の原因であるリンパ水腫は、なぜ起こるのかその原因は未だわかっていません。

そのためメニエール病は根本的な治療ができず、一旦症状が治まっても、再発しやすいという特徴があります。

しかしながら、メニエール病はストレスや過労が引き金となり発症することがわかっています。

よって、メニエール病は症状を緩和する薬物治療や外科治療だけでなく、日常生活の過ごし方にも注意が必要です。

まずはメニエール病発症の引き金となるストレスや過労を回避するため、十分な休養とストレスの軽減に努めましょう。

そのほか、塩分の摂りすぎは内リンパ液の過剰分泌を促すので減塩にも気を付けます。

メニエール病の発作中は安静が必要ですが、発作が落ち着いたら散歩や有酸素運動を行い、体内の血液循環を促しましょう。

血液循環を促すことにより、内耳を含めた臓器の代謝が活発になり、内リンパ液の吸収が促されることがあります。

メニエール病の診断基準

メニエール病の有病率は、人口10万人あたり約50人と稀な病気です。

しかしながら、めまいや難聴を伴う病気は数多くあるため、患者さんの自覚症状だけでは、メニエール病かどうかの診断はできません。

そこで、日本めまい平衡学会では、メニエール病の診断基準を以下のように定めています。


A:症状
  1. めまい発作を反復する。めまいは誘因なく発症し、持続時間は10分程度から数時間程度。
  2. めまい発作に伴って難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状が変動する。
  3. 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。

B:検査所見
  1. 純音聴力検査において感音難聴を認め、初期にはめまい発作に関連して聴力レベルの変動を認める。
  2. 平衡機能検査においてめまい発作に関連して水平性または水平回旋混合性眼振や体平衡障害などの内耳前庭障害の所見を認める。
  3. 神経学的検査においてめまいに関連する第Ⅷ脳神経以外の障害を認めない。
  4. メニエール病と類似した難聴を伴うめまいを呈する内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など、原因既知の疾患を除外できる。
  5. 聴覚症状のある耳に造影MRIで内リンパ腫を認める。

引用:書籍「メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版」

上記の症状、検査所見のうち【A:症状】、【B:検査所見】の5項目を満たした場合メニエール病と確定診断されます。

その他、検査所見のうち【A:症状】、【B:検査所見】の1~4項目を満たしたらメニエール病確実例、【A:症状】の3項目を満たすとメニエール病疑い例となります。

メニエール病の検査

メニエール病の症状は、他の病気と酷似しているため、患者さんの問診だけでは判断できません。

そのため、次のような検査が実施されます。

  • 起立検査
  • 足踏み検査
  • 眼振検査(平衡機能検査)
  • 聴力検査

そのほか、MRI検査で内リンパ腫の有無を確認することもあります。

患者さんの問診と検査結果がメニエール病の診断基準を満たすかどうか厳密にチェックし、メニエール病が確定診断されるのです。

メニエール病と突発性難聴の違い

メニエール病 突発性難聴
めまいの特徴 10分~数時間持続 ある場合とない場合がある
めまいの発作 何度も繰り返す 繰り返さない
難聴の特徴 低音が聞きづらくなる 突然発生する
発症のきっかけ ストレス・過労 ストレス・過労

メニエール病と突発性難聴は症状だけでなく、発症のきっかけが【ストレス・過労】と共通しているため見極めが難しいとされています。

とくにメニエール病の初回発症時には、突発性難聴とメニエール病の鑑別ができないケースが多く、発作の繰り返しを確認後にメニエール病と確定診断されることもあるからです。

ここで注目すべき点は【めまいや難聴の発作が反復するかどうか】です。

発作が反復する場合はメニエール病が疑われ、1回のみの場合は突発性難聴や他の病気が疑われます。

メニエール病が疑われた場合でも、先ほど提示した判断基準を満たし、他の病気を除外できてはじめて確定診断されます。

メニエール病の治療法

メニエール病の治療では、まず発症の引き金となるストレスや不安症状の回避をおこないます。

具体的には、睡眠を十分にとることや、水分摂取、有酸素運動などを勧められるでしょう。

日常生活を整える保存的治療と同時並行で、メニエール病のつらい症状を緩和させるための薬物療法も進められます。

まず患者さんが最もつらく感じる、回転性めまいの症状を軽減する薬剤が投与されます。

嘔吐や悪気が強い場合は、制吐剤が投与されることもあるでしょう。

その後、内耳に溜まった内リンパ液を体外に排出するため、利尿剤が処方されます。

またメニエール病は不安や緊張、ストレスにより発症し、発作を引き起こすので、抗不安剤が処方されることもあります。

薬物療法で治療を行っても、症状が改善しない場合は次の治療法が検討されます。

中耳加圧療法

鼓膜マッサージ機による治療法です。

中耳に圧力を加えることで、内リンパの循環が促されると考えられており、一部の患者さんに効果があるという結果が出ています。

1年程度の治療が推奨されています。

耳の中にチューブを挿入し、チューブから空気の振動を送り中耳に圧力を加えます。

外科治療

回転性めまいや難聴の発作の頻度が高く、薬物療法でも改善がみられない場合は、内リンパ嚢開放術という手術が検討されます。

内リンパ嚢開放手術では、外耳道の鼓室の後方にある乳突腔から内リンパ腫を切開し、溜まったリンパ液を排出します。

手術にかかる時間は2時間程度と短時間ですが、全身麻酔が必要なため、1週間程度の入院が必要です。

前述の治療を用いてもめまい症状が制御できない場合に、前庭機能を破壊する方法として、ゲンタマイシン中耳内注入療法や前庭神経切断術が行われることもあります。

メニエール病でよくある質問Q&A

ここからは、メニエール病でよくある質問とその回答をご紹介します。

メニエール病は完治するの?

メニエール病は、個人差もありますが早めに治療を開始できれば、1~2か月で症状が落ち着くこともあります。

しかしながら、内耳の蝸牛や半規管の内部に内リンパが溜まる原因がわからないため、完治するとは言い切れません。

一旦症状が治まっても、ストレスや過労が引き金となり再発するケースが多いため注意が必要です。

そのため症状が治まっても、再発する可能性があることを年頭に置きながら、ストレスや疲れを貯めないよう自分自身をコントロールしながら生活する必要があります。

メニエール病は遺伝するのか?

メニエール病は現在のところ、遺伝性は確認されていません。

そのため親がメニエールになったとしても、子どもが将来、メニエール病を発症してしまうことはないのでご安心ください。

ただ親子は遺伝により体質が似ることが多く、親がストレスや疲れをためやすい場合、子どもも同じような体質になる可能性があります。

よって、親子でメニエール病を発症することも少なくありません。

また、メニエール病は未だ解明されていない部分が多く、これからの研究で何らかの遺伝的素因が発見される可能性もあります。

実際に親子でメニエール病を発症するケースもあるため、今後は遺伝性も認められるかもしれません。

まとめ

メニエール病は、内リンパ水腫が原因です。

しかしながら、なぜ内リンパ水腫が起きるのか未だ解明されていないため、治療をしても再発するリスクがあります。

まとめ
  • メニエール病は回転性めまいと難聴の発作が反復する
  • メニエール病は回転性のめまいによりQOLが著しく低下する
  • メニエール病はストレスや過労により発症しやすい

メニエール病の発作は何度も繰り返すと難聴の症状があらわれるため、早期発見・治療が大事です。

またストレスや過労が引き金となり発症するため、治療では薬物療法とともにストレスを溜めない生活習慣の改善が求められることもあります。

めまいや聞こえの違和感はメニエール病だけでなく、内耳の病気のサインであることが多いので、早めに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師