「キーン」「ジー」――ふとした瞬間に耳の中で音が鳴り出すことはありませんか。
耳鳴りは多くの方が一度は経験する症状ですが、「そのうち治るだろう」と放置していると、治療のタイミングを逃してしまうケースもあります。
一方で、すべての耳鳴りが緊急を要するわけではありません。大切なのは、危険なサインを見極めることです。
この記事では、すぐに受診すべき耳鳴りの特徴と、様子を見ても良い耳鳴りの違いについて解説します。
目次
【セルフチェック】今すぐ耳鼻科へ行くべき「4つの危険なサイン」
耳鳴りにはしばらく様子を見てよいものと、すぐに受診が必要なものがあります。
以下の4つのサインに当てはまる場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
サイン1│片耳だけ「急に」聞こえが悪くなる
片方の耳だけが突然聞こえにくくなった場合、突発性難聴の可能性があります。
突発性難聴は、治療開始が早いほど聴力の回復が見込めるとされており、できれば発症から48時間以内、遅くとも1~2週間以内に治療を始めることが重要です。
「耳が詰まった感じ」「音がこもって聞こえる」といった症状も突発性難聴のサインです。
夜間の救急外来では耳鼻咽喉科の専門医が不在で聴力検査もできないことがほとんどのため、診療時間内にできる限りその日中か翌日中に耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
サイン2│めまいやふらつきを伴う
耳鳴りと同時に激しい回転性のめまいやふらつきが起きている場合、メニエール病や突発性難聴などの内耳の病気が疑われます。
とくに「ブーン」「ボー」といった低音の耳鳴りにめまいや耳の閉塞感(詰まった感じ)が重なるときは、内耳に何らかの障害が起きているサインです。
一過性のものと油断せず、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
サイン3│拍動性の耳鳴りがする
「キーン」「ピー」といった持続的な耳鳴りではなく、心臓の拍動に合わせて「ドクドク」「ザーザー」と鳴る耳鳴りを拍動性耳鳴りといいます。
この耳鳴りは、血管の異常(動静脈奇形・動脈硬化など)や高血圧、まれに脳腫瘍が原因であることがあります。
加齢や騒音による一般的な耳鳴りとは原因が異なるため、このタイプの耳鳴りを自覚したら、できるだけ早く受診するようにしましょう。
サイン4│耳鳴りだけでなく強い頭痛やしびれがある
耳鳴りに加えて、手足のしびれ・舌のもつれ・物が二重に見える・激しい頭痛などの症状が突然現れた場合は、脳卒中や脳梗塞の発作である可能性があります。
これらの症状は一刻を争う緊急事態です。すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。
処置が遅れると命に関わることがあるため、「様子を見よう」とは考えず、ためらわずに行動しましょう。
以上4つのサインは、単なる耳鳴りではなく重篤な病気のサインである可能性があります。「たかが耳鳴り」と放置せず、気になる症状があればお気軽にあだち耳鼻咽喉科へご相談ください。
様子を見ても大丈夫な耳鳴りはある?
「耳鳴り=すぐ病院に行かなければ」と不安になる方も多いですが、すべての耳鳴りが緊急を要するわけではありません。
以下の2つの条件に当てはまる場合は、ひとまず様子を見ていただいて問題ないことが多いです。
両耳で鳴っていて、数秒~数分で消えるもの
飛行機の離着陸や気圧の変化のとき、あるいは静かな場所に入ったときに突然「キーン」と鳴り、すぐに消える―そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
このような両耳に一時的に現れて、数秒~数分以内に自然におさまる耳鳴りは、内耳の細かな血流変化や神経の一時的な興奮によるものと考えられており、生理的な現象の範囲内とされています。
他に気になる症状がなく、繰り返さないのであれば、過度に心配する必要はありません。
ただし、「両耳に鳴るから安心」と思い込みすぎるのは禁物です。
片耳だけに繰り返し現れる場合は、メニエール病や突発性難聴など耳の疾患が隠れている可能性があるため、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
聴力検査で異常がなく、疲労やストレスが原因のもの
睡眠不足が続いたとき、仕事や育児で極度に疲れているとき、こういったタイミングで耳鳴りを感じることがあります。
これはストレスや疲労によって自律神経が乱れ、内耳の血流が一時的に低下したことで起こると考えられています。
耳鳴りの音の種類よりも、「短時間でおさまる」「めまいや耳の閉塞感を伴わない」という2点が、様子を見てよい耳鳴りの目安になります。
耳鼻咽喉科で聴力検査を受けた結果、異常が見られず、原因がストレスや疲労である場合は、休養をとることで自然に改善することがほとんどです。
ただし、「疲れているせいだ」と自己判断して放置するのは危険です。同じような耳鳴りでも、メニエール病や低音障害型感音難聴が隠れているケースもあります。
特に耳鳴りと一緒にめまいや耳の閉塞感(詰まった感じ)が続く場合は、自己判断せず耳鼻咽喉科を受診してください。
なぜ耳鳴りが起こる?耳鼻科医が教える発生のメカニズム
「なぜ何も音がないのに耳鳴りがするの?」と不思議に思う方も多いでしょう。
耳鳴りのメカニズムは完全には解明されていませんが、近年の研究では耳よりも「脳」の働きが深く関わっていることが明らかになっています。
耳鳴りの正体は「脳」が音を補おうとする反応
耳鳴りの多くは、内耳の蝸牛にある有毛細胞(音の振動を電気信号に変えるセンサー)が何らかの原因で傷ついたり減少したりすることをきっかけに起こります。
有毛細胞が損傷すると、特定の音の電気信号が脳に届きにくくなります。
すると脳は「聞こえるはずの音が聞こえない」と異常を察知し、音をなんとか拾おうとして感度を上げ、神経活動を過剰に高めます。
この過剰反応が、実際には音がない状況でも「音が鳴っている」と脳に勘違いさせてしまうのです。
つまり耳鳴りは「耳の問題」ではなく、難聴をきっかけに起こる脳の過剰反応なのです。
加齢による難聴(老人性難聴)と耳鳴りの関係
耳鳴りの原因としてとくに多いのが、加齢による難聴(老人性難聴)です。
蝸牛の有毛細胞はピアノの鍵盤のように音域ごとに並んでいますが、加齢によってまず高音域を担う部位から機能が低下していきます。
その結果、高い音の電気信号が脳に届きにくくなり、前述のメカニズムで脳が過剰に反応して、「キーン」「ピー」といった高い音の耳鳴りが起こりやすくなります。
また、加齢性難聴の有毛細胞は一度損傷すると再生しないため、放置すると難聴と耳鳴りが互いに悪化し合う悪循環に陥ることもあります。
50代以降に高い音の耳鳴りが続くようであれば、老人性難聴の可能性があります。
早めに耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を受けることをおすすめします。なお、難聴に伴う耳鳴りは補聴器を使って脳への音の入力を回復させることで、約半数の方に改善が見られるという報告もあります。
耳鳴りの裏側に隠れている「本当の病気」
耳鳴りはよくある症状だからと放置しがちですが、さまざまな病気のサインである場合があります。
ここからは、耳鳴りで疑われる病気を部位別に見ていきましょう。
【耳の病気】突発性難聴、メニエール病、中耳炎
耳鳴りが起きたとき、まず疑われるのが耳の病気です。
代表的なものとして突発性難聴、老人性難聴、メニエール病、外リンパ瘻などがあります。
なかでも特に注意したいのが突発性難聴です。
片耳の耳鳴りとともに突然難聴が起きるのが特徴で、放置すると治りにくくなるため、気づいたらすぐに耳鼻咽喉科を受診してください。
また、外耳・中耳の病気や外傷(中耳炎、耳垢栓塞など)が原因で音の振動がうまく伝わらず、耳鳴りが起こることもあります。
これらは早期治療で改善できますが、放置すると難聴へと進行する恐れがあります。
【脳・血管の病気】聴神経腫瘍、脳梗塞、動脈硬化
耳の検査で異常が見つからない場合、脳や血管の病気が背景にある可能性があります。
聴神経腫瘍は、音の情報を脳に伝える聴神経に生じる良性腫瘍です。
ほとんどがゆっくり進行するため初期は気づきにくく、片耳の聴力低下や耳鳴りが最初のサインになることがよくあります。
突発性難聴と間違われることもあるため、改善しない片耳の難聴があればMRI検査が重要です。
動脈硬化・脳梗塞との関連も見逃せません。
脳の動脈に動脈硬化が起こると、頭痛やめまいとともに耳鳴りが現れることがあります。
また、脈拍に合わせて「ザーザー」「トックン」と聞こえる拍動性の耳鳴りは、血管の異常を示すサインの可能性があるため、早めに受診しましょう。
【心・全身の病気】自律神経失調症、更年期障害、ストレス
心や全身の不調も耳鳴りの原因になります。
強いストレスや疲労によって自律神経が乱れると、血管が収縮して内耳の血流が悪化し、耳鳴りが起こりやすくなります。
また、更年期障害も耳鳴りと深く関係しています。閉経前後に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に低下すると、自律神経のバランスが乱れ、内耳の血流にも影響が及びます。
その結果、「キーン」「ジーン」といった耳鳴りが起こりやすくなります。疲れやイライラで症状が強くなるのが特徴です。
耳鳴りが続く場合は自己判断せず、まずは耳鼻咽喉科を受診し、原因を確認することが大切です。
耳鳴りは一生治らない?最新の治療法と向き合い方
「耳鳴りは治らない」と諦めている方も多いですが、原因によっては治療で消失するケースもあり、完全に消えない場合でも日常生活に支障がないレベルまで軽減できることがあります。
まずは耳鼻咽喉科で原因を調べることが大切です。
原因疾患へのアプローチ(お薬での加療)
耳鳴りの原因が判明した場合は、その疾患に合わせた薬物療法をおこないます。
中耳炎や耳垢栓塞など耳の病気が原因であれば、まずは耳の治療です。
内耳の血流改善が必要な場合には循環改善薬や漢方薬を、不安や緊張が強い場合には抗不安薬を、睡眠への影響が大きい場合には睡眠薬を処方するなど、患者さんの症状に合わせて薬が処方されます。
また、心身のストレスが耳鳴りを悪化させている場合には、心理療法を組み合わせて不安や緊張を和らげることで、耳鳴りが軽減することもあるでしょう。
原因が特定できない耳鳴りも多く、そのような場合は内耳の血流を改善する薬や漢方薬を第一選択として処方することがあります。
音に慣れる「TRT療法(音響療法)」の仕組み
耳鳴りは静かな環境ほど際立って聞こえます。
そこで、あえて音のある環境をつくり、脳が耳鳴りを「気にならない音」として認識するよう慣れさせていくのがTRT療法(音響療法)です。
現在の主流は、カウンセリングと補聴器(サウンドジェネレーター)を組み合わせた方法です。
まず耳鳴りについて正しく理解してもらうカウンセリングをおこない、その後、患者さんの状態に合わせた補聴器を装着して日常生活を送ります。
耳鳴りを意識しなくなるまで継続することで、徐々に気にならなくなっていきます。BGMをかけながら生活するイメージに近い治療法です。
補聴器を使うことで耳鳴りが軽減する理由
難聴が背景にある耳鳴りでは、補聴器の使用が耳鳴りの軽減にも効果的です。
難聴があると脳への音の入力が減り、脳が「聞こえない分を補おう」と過剰に反応することで耳鳴りが起こります。
補聴器で適切な音を脳に届けることでこの過剰反応が落ち着き、約半数の方に耳鳴りの改善が見られるという報告もあります。
補聴器は耳鳴りの音の大きさや感じ方に合わせて細かく調整するため、専門医のもとで処方を受けることが重要です。
教えて院長先生!耳鳴りのよくある質問とその回答
耳鳴りが気になって眠れません。どうすればいい?
睡眠薬を使用したり、環境が静かにならないように音楽やラジオをならすと緩和されることが多いです。
市販の耳鳴り改善薬は効果がありますか?
耳鳴りに対して処方する薬と成分が重複していますので、軽減する可能性はあります。
まとめ
耳鳴りは「たかが耳鳴り」と放置されがちですが、突発性難聴や聴神経腫瘍など、早期治療が重要な病気が背景に隠れていることがあります。
また、完全に消えない耳鳴りでも、適切な治療やTRT療法によって日常生活に支障がないレベルまで改善できるケースは少なくありません。
- 耳鳴りには早急に受診が必要なものと様子を見てよいものがある
- 耳鳴りの多くは難聴をきっかけとした脳の過剰反応が原因である
- 薬物療法やTRT療法(音響療法)・補聴器によって症状の軽減が期待できる
福岡市東区名島で耳鳴りが気になる方は、自己判断せずお気軽にあだち耳鼻咽喉科へご相談ください。
あだち耳鼻咽喉科では、聴力検査や平衡機能検査など耳鳴りの原因を調べる検査を実施しており、症状に合わせた治療をご提案しています。
耳鳴りの中には、突発性難聴のように早急な治療が必要な疾患の原因である可能性もあります。「気のせいかも」と思わずに最寄りの耳鼻咽喉科へご相談ください。













