「熱や鼻・のどの病気がないのに子どもの声枯れが気になる」このような症状はもしかすると、小児声帯結節かもしれません。
小児声帯結節は、10歳以下の子どもが発症しやすく、大声を出す・どなるなど声の出し過ぎが原因で発症します。
軽症であれば、声の出し過ぎに注意すれば自然治癒できますが、重症化すると普段の会話でも声枯れするようになり、場合によっては手術も必要です。
今回は、幼児期や学童期の子どもに生じやすい小児声帯結節についてわかりやすく解説します。
同じく声帯の病気である声帯ポリープとの違いについてもまとめましたので、ご覧ください。
目次
子どもの声枯れが治らないのは小児声帯結節かも
風邪や花粉症などを発症しているわけでもないのに、声が枯れてしまうこともあります。
子どもの長引く声枯れはもしかすると、「小児声帯結節」かもしれません。
小児声帯結節は声の使いすぎや無理な発声で発症するため、別名「学童嗄声(させい)」とも呼ばれます。
「嗄声」とは、医学的に声の音質に異常が見られることを意味します。
10歳以下が発症のピークで、男子の方が女子より発症しやすい傾向があります。
小児声帯結節の症状
小児声帯結節は声枯れがおもな症状ですが、あわせて次のような症状も見られます。
- のどの違和感・痛み
- 空気が漏れてしまったような声になる
- 長く話していると声が続かない
軽症では、平常時は無症状で高音発声時や長時間声を出し続けたときのみに声枯れを自覚する程度です。
しかし、重症化すると話し声程度の発声でも声枯れがあらわれます。
大人でも声帯結節ができることがある
声帯結節は、子ども特有の疾患というわけではありません。
幼稚園や保育園、学校の先生や歌手、アナウンサーといった声を使う職業に就いている場合にも、声帯結節ができることがあります。
また子どもでも大人でも症状は変わらず、先天的や遺伝的にできているということはありません。
小児声帯結節の原因
小児声帯結節は、長い時間声を出し過ぎたり、無理に大声を出したりすることが原因で発症します。
そもそも声帯とは、のどの奥にある、声を出すための器官です。
声帯は左右2本のヒダ状になって表面は粘膜に覆われており、私たちは呼気によって声帯の粘膜が柔らかく振動することで声を発しています。
しかしこの摩擦刺激が過剰に繰り返されると、表面の粘膜が厚く硬くなって浮腫状に腫れたり、繊維化したりしてしまいます。
その結果、声帯の粘膜上皮に結節ができてしまうのです。
結節は、声帯の前方3分の1の場所に生じやすく、結節によって発声した時に隙間があったり振動を妨げられたりすることにより声が枯れてしまいます。
ちょうど指とペンがいつもぶつかり合う部分にできやすい「ペンだこ」のように、声帯のいつもぶつかり合ってしまう部分にも結節ができやすい、と考えるとわかりやすいかもしれません。
小児声帯結節と声帯ポリープとの違いは?
小児声帯結節 | 声帯ポリープ | |
---|---|---|
症状 | 声枯れ | 声枯れ |
原因 | 声帯の摩擦による粘膜上皮の肥大・繊維化 | 一過性の過度な声帯の刺激による破綻出血(血まめ) |
発症する場所 | 声帯の上部に発声しやすい。声帯の両側にできる | 声帯の片側にできやすく、結節よりも肥大化しやすい |
発症しやすい人 | 小児では男児、大人では女性 | 40代~50代、やや男性ができやすい |
声帯結節と同じく、声枯れが生じる病気の1つに声帯ポリープが挙げられます。
歌手やミュージシャンが「声帯ポリープを発症した」というニュースを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
声帯結節も声帯ポリープもともに声帯に関する疾患で、症状も類似しています。
この2つの病気は、発症の原因が異なります。
声帯結節は、継続的な声出しによる声帯の摩擦によって粘膜上皮が硬くなることが原因です。
一方、声帯ポリープは一時的に大声を出したときに生じる破綻出血(血まめ)が血種となり盛り上がることが原因となっています。
多くの場合、結節は両方の声帯にできますが、ポリープの場合はどちらか片方にできるケースが多く見られます。
小児声帯結節の診断・治療方法
声帯結節は、喉頭ファイバースコープを用いた内視鏡検査で声帯を観察することで診断をおこないます。
また、喉頭ストロボスコープを使って、声帯の振動を観察することもあります。
- ネブライザーによる吸入治療
- 炎症を抑える薬物治療
- ステロイド治療
- 正しい発声方法を教える発声指導
上気道炎や副鼻腔炎といった疾患が、声帯結節の症状をより悪化させる原因となっていることもあり、その場合はこれらの治療もあわせておこないます。
声帯結節を治療する上で最も重要なことは、大きな声を出したり声を使い過ぎたりしないことですが、子どもの場合にはなかなか難しいため、すぐには治癒しないことも少なくありません。
クラブなどで大声を出す場合はそのような時期が終われば治癒することも多く見られます。
また声変わりの時期(思春期)に声帯が伸ばされることで結節が消えて治ることが多く、とくに子どもの場合には長い目で治療をおこなうことが大切です。
生活に支障が出る場合は手術も検討
基本的には小児声帯結節では手術はおこないませんが、次のような症状の場合は手術が検討されます。
- 声枯れの症状がひどい
- 声帯結節が硬く大きい
- 声枯れで子どもの社会生活上負担が大きい
「ラリンゴマイクロサージェリー」と呼ばれる顕微鏡下で結節を除去する手術で、全身麻酔によっておこなわれます。
術後3日~1週間程度は絶対沈黙、2週間程度は大声を出すなどを控える必要があります。
また、大声を出したり声を使いすぎたりすることで再発する可能性もあるため、手術を検討する際には医師としっかり話し合うことが大切です。
小児声帯結節と診断されたらやってはいけないこと
小児声帯結節と診断されたら、声帯に負担をかけないよう注意が必要です。
次のことは声帯に負担をかけてしまうので、やってはいけません。
- 大声で話す
- 高過ぎる声や低過ぎる声で話す
- 長時間おしゃべりをする
- うるさい場所で話す
- 咳ばらいをする
しかしながら子どもにはなかなかハードルが高いこともあるでしょう。
もちろん「しゃべるな!」などと、子どもを押さえつけるような指導法はもってのほかです。
保護者の方は、できる範囲で「家庭で大声を出しているなら注意する」など、子ども自身の認識を少しずつ高められるような声かけをしてみるとよいでしょう。
また、乾燥はのどや声帯に大きな負担となるため、家庭では加湿器を利用することもおすすめです。
他にも、こまめに水分を摂る、うがい、マスクを着用するなどもあわせて心がけましょう。
感染症や風邪をきっかけに声帯結節ができることも多いため、風邪予防の側面からもこれらの点に注意する必要があります。
教えて院長先生!よくある質問Q&A
小児声帯結節についてよくある質問を院長先生にお答えいただきます。
小児声帯結節は再発しますか?
再発はあると思いますが、当院では何度も再発するお子さんをみたことはありません。
小児声帯結節は自然治癒できますか?病院に行く目安があれば教えてください。
成長とともに、また発声習慣がかわることで、改善します。
基本的には積極的には治療の介入はおこなわず経過観察するため、ほとんどが自然治癒と思われます。
生活に支障が出る程度の声がれがある場合は受診をおすすめいたします。
まとめ
小児声帯結節は、幼児期や学童期に発症しやすい声帯の病気です。
薬物などの治療法もありますが、最も重要なのは声の使い過ぎに注意し、声帯を安静させることです。
- 小児声帯結節は声の使い過ぎで発症する
- 小児声帯結節は声帯を休めると改善する
- 手術をした場合、1週間ほど沈黙しなければならない期間があるので慎重に検討する
しかしながら、子どもに「おしゃべりや大声は禁止!」というのはなかなか難しいものです。
保護者の方はできる範囲で、「大声を出すと声がガサガサになるよ」など病気に対する子どもの理解を深めるような声かけをしていくと良いでしょう。
また、子どもは時に保護者が注意するよりも他人の注意が効果的なこともあります。
ご要望があれば院長の私から、お子様に対して大声を出し続けるとどうなるかをわかりやすく説明することもできます。
福岡市東区名島にお住まいで、子どもの声枯れにお悩みの方はあだち耳鼻咽喉科へお気軽にお越しください。
