風邪でもないのに子どもの声が枯れているのは「小児声帯結節」かもしれません。
子どもの声枯れの原因としてはもっとも多い疾患で、いわば声帯にできる「たこ」や「まめ」のようなものです。
今回は、子どもの声が枯れる原因として多い、小児声帯結節について詳しく解説します。
目次
子どもの声が枯れるのはなぜ?
子どもの声が枯れる症状でまず思いつくのは、風邪やインフルエンザにかかったときですよね。
のどの痛みや腫れとともに声が枯れた、という経験は、子どもだけでなくパパやママ自身にもあるのではないでしょうか?
風邪やインフルエンザの場合、のどの粘膜が腫れて炎症を起こしている咽頭炎や声帯炎になっていることが声枯れの原因です。
しかし、風邪やインフルエンザの場合は、他の症状がおさまるとともに咽頭炎も治り、声の枯れもよくなっていくため、心配はいりません。
なかなか治らない子どもの声枯れは、小児声帯結節かも?
風邪やインフルエンザを引いているわけでもないのに、声が枯れてしまうこともあります。
それは、「小児声帯結節」かもしれません。
声の使いすぎや無理な発声が原因で、「学童嗄声(させい)」とも呼ばれます。
「嗄声」とは、医学的に声の音質に異常が見られることを指します。
子どもの声枯れの原因としてはもっとも多く、10歳以下が発症のピークです。
男子の方が女子よりやや多く、多くの場合、野球やサッカーなどスポーツの際に大きな声を出すことなどで発症します。
小児声帯結節の原因
小児声帯結節とは、声を出しすぎたり無理に大声を出したりすることで、声帯に小さなイボやコブのようなもの(=結節)ができてしまうことが原因です。
そもそも声帯とは、咽頭(のど)の奥にある、声を出すための器官。
声帯は左右2本のヒダ状になっていて、表面は粘膜に覆われており、私たちは、声帯を通る空気を震わせ、摩擦させることによって声を発しています。
しかし、この摩擦刺激を繰り返すことで、表面の粘膜が厚く硬くなって、浮腫状に腫れたり、繊維化したりすることが引き金となり、結節が発症します。
結節は、声帯の前方3分の1の場所ができやすい部分です。
コブによって発声した時に隙間があったり振動を妨げられたりすることにより声が枯れてしまいます。
ちょうど指とペンがいつもぶつかりあう部分にできやすい「ペンだこ」のように、声帯のいつもぶつかり合ってしまう部分にも結節ができやすい、と考えると分かりやすいかもしれませんね。
大人でも声帯結節ができることがある?
声帯結節は、子ども特有の疾患というわけではありません。
幼稚園や保育園、学校の先生や歌手、アナウンサーといった声を使う職業に就いている場合にも、声帯結節ができることがあります。
また、子どもでも大人でも症状は変わらず、先天的や遺伝的にできている、ということもありません。
小児声帯結節の症状
小児声帯結節は、声枯れがおもな症状ですが、あわせてのどに違和感を覚えたり、のどの痛みを感じたりする場合もあります。
また、左右の声帯がきちんと合わさりにくくなるため、空気が漏れてしまったような声になったり、長く話していると声が続かなくなったりといった症状も見られます。
ポリープとの違いは?
同じく声が枯れてしまう疾患に声帯ポリープが挙げられます。
歌手やミュージシャンがポリープを発症した、というニュースもよく耳にしますよね。
ポリープも結節と同じく、声帯に関係する疾患で声の異常をおもな症状にしています。
大声を出す、声を使いすぎるなどの発声を原因とする場合もありますが、基本的には大声を出した時にできる血まめ(破たん出血)とされています。
声帯結節は、表面の粘膜が厚く硬くなることによるものである一方、声帯ポリープは、粘膜の下の血まめが硬くなった(器質化)したもので、ポリープの方が結節よりも大きくなる傾向にあります。
また、多くの場合、結節は両方の声帯にできますが、ポリープの場合はどちらか片方にできるケースが多く見られます。
小児声帯結節かもしれない、と思ったら?
子どもの声が枯れていて気になる場合、風邪やインフルエンザなどの症状が見られなければ、しばらく様子を見てもよいでしょう。
声帯結節は、そもそものどの使いすぎが原因なので、軽い症状であれば大声を出さないなど、声の安静を心がけることで、自然に治ることも少なくありません。
しかし、1週間以上症状が続いていたり、次第に悪化していたりするのであれば、かかりつけの耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
小児声帯結節の診断・治療法
声帯結節は、喉頭ファイバースコープを用いた内視鏡検査で声帯を観察することで診断をおこないます。
また、咽頭ストロボスコープを使って、声帯の振動を観察することもあります。
治療法としては、ネブライザーによる吸入治療や、炎症を抑える薬物治療、ステロイド治療などの保存療法がおこなわれます。
上気道炎や副鼻腔炎といった疾患が、声帯結節の症状をより悪化させる原因となっていることもあり、その場合はこれらの治療もあわせておこないます。
また、正しい発声方法を教える発声指導で改善する場合もあります。
声帯結節を治療する上でもっとも重要なことは、大きな声を出したり声を使いすぎたりしないことですが、子どもの場合にはなかなか難しいため、すぐには治癒しないことも少なくありません。クラブなどで大声を出す場合はそのような時期が終われば治療することも多くみられます。
また、声変わりの時期(思春期)に声帯が伸ばされることで結節が消えて治ることが多く、とくに子どもの場合には、長い目で治療をおこなうことが大切です。
生活に支障が出る場合は手術も
基本的には小児声帯結節では手術は行いませんが、声枯れの症状がとくにひどい、声帯結節が硬く大きい、子どもにとって社会生活上負担が大きいなどといった場合には、手術による治療法という選択肢もあります。
「ラリンゴマイクロサージェリー」と呼ばれる顕微鏡下で結節を除去する手術で、全身麻酔によっておこなわれます。
術後3日〜1週間程度は絶対沈黙、2週間程度は大声を出すなどを控える必要があります。
また、再度同じように大声を出したり声を使いすぎたりすることで、再発する可能性もあるため、手術を検討する際には医師としっかり話し合うことが大切です。
小児声帯結節で心がけたい点
小児声帯結節でもっとも心がけたいのは、声帯に負担をかけないことです。
大きな声を出さない、どならない、長時間話し続けないなどが大切ですが、子どもにはなかなか難しいですよね。
もちろん「しゃべるな!」などと、子どもを押さえつけるような指導法はもってのほかですが、家庭で大声を出しているなら注意するなど、子ども自身の認識を少しずつ高めていけるとよいでしょう。
また、乾燥はのどや声帯に大きな負担となるため、家庭では加湿器を利用することもおすすめです。
他にも、こまめに水分を摂る、うがい、マスクを着用するなども合わせて心がけましょう。
風邪をきっかけに声帯結節ができることも多いため、風邪予防の側面からもこれらの点に注意する必要があります。
まとめ
学童期や幼児期の子どもにできやすい小児声帯結節。
薬物などによる治療法もありますが、もっとも重要なことはできるだけ声を使いすぎず、声帯を安静にさせることです。
とはいえ、子どもに「おしゃべりや大声は禁止!」はなかなか難しいですよね。
親はあまり神経質になりすぎず、疾患に対する子どもの理解を少しずつ深めていくことが大切です。
また、せっかく治っても、誤った発声方法が身についてしまっていると、再発してしまうこともあります。
そのため、治療と合わせて発声方法についても相談し、改善を図るとよいですね。
子どもの声に関して気になる点があるなら、できるだけ早めに耳鼻咽喉科に相談しましょう。
