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花粉症、はな

舌下免疫療法とは?期待できる効果や注意点をわかりやすく解説

舌下免疫療法はスギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎に高い効果が期待できる治療法です。

一般的な薬物療法とは異なる点が多く、舌下免疫療法を受けたいと考えている方は、あらかじめどのような治療なのか確認しておきたいですね。

今回は、舌下免疫療法の詳細や注意点、治療を受ける上で心配な点などについても解説します。

舌下免疫療法による治療を受けたい方や、治療内容について詳しく知っておきたい方はぜひ最後までご覧ください。

舌下免疫療法とは?治療の方法や期待できる効果を簡単に解説

舌下免疫療法とは「アレルゲン免疫療法」のひとつ。

アレルギーの原因となるアレルゲンを含む治療薬を投与し、体を徐々にアレルゲンに慣らすことによって症状を和らげる治療法です。

現在舌下免疫療法の対象となっているアレルゲンは、スギ花粉とダニのみです。

ヒノキなど他のアレルゲンによるアレルギー症状は、今のところ舌下免疫療法の対象ではありません。

アレルゲン免疫療法そのものは100年以上前から行われており、以前は皮下免疫療法とよばれる注射による治療が一般的でした。

近年はより安全で手軽な治療薬を舌の下に置く舌下免疫療法が主流となり、多くの方のつらいアレルギー症状に効果を発揮しています。

また、症状を和らげる目的の薬物療法とは違い完治の可能性がある治療法でもあります。

舌下免疫療法の治療について詳しく解説!知っておきたいQ&A

舌下免疫療法は、つらい花粉症や鼻炎などのアレルギー症状を大きく改善してくれる可能性があります。

一方で一般的な薬物療法などの治療とは異なる部分が多く、あらかじめ確認して、治療に備えておくと安心です。

ここでは舌下免疫療法をはじめる前に知っておきたい、治療にまつわる情報を解説します。

舌下免疫療法の対象となる人は?

舌下免疫療法の対象は「スギ花粉症」もしくは「ダニアレルギー性鼻炎」の患者さんです。

診察の際に検査を行い、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎であると確定診断を受けた上で治療は開始されます。

また、どちらか片方だけでなく、いずれの症状がある場合にも治療は可能です。

舌下免疫療法の流れは?

舌下免疫療法には決められたスケジュールがあり、以下のような流れに沿って治療が行われます。

1.初回の診察

初回の診察では問診や血液検査などを行います。

検査の結果を医師が確認し、舌下免疫療法が可能だと判断された場合においてのみ、治療が開始されます。

2.診察・アレルゲン初回投与

初回の診察から1~4週間後に再度受診し、医師の指導のもとで治療薬の初回投与を行います。

投与後30分は病院内で安静に過ごします。体調などに変化がないことを確認した上で、診察は終了です。

3.自宅での服用

初回の治療薬投与に問題がなければ、翌日から自宅での服用を開始します。

4.増量

1週間後に再度受診し、アレルゲンを増量するとともに、病院内で投与します。

初回と同様に30分間の院内での安静が必要です。

その後1週間は自宅での投与となります。

5.再来

増量から1週間後に来院していただき、診察の上問題なければ投与を継続します。

6.定期的な受診

その後は月に一回ほど定期的に受診し、副作用などがないか確認しながら治療を進めていきます。

また、投与開始時より初期はアレルギー反応などを抑えるために抗アレルギー薬を同時に投与する場合が多いです。

舌下免疫療法の開始時期は?

舌下免疫療法はいつでも開始できるというわけではありません。

花粉の飛散時期にはアレルゲンに対する反応が過敏になっており、治療を開始するのには適していない時期です。

そのため花粉の飛んでいない時期に開始します。具体的な時期は医師に相談した上で決めるとよいでしょう。

花粉症の時期については、以下の記事に詳しく書かれていますので合わせてご覧ください。

花粉症の時期はいつ?地域別のピークや先取り対策を解説今回は花粉症がピークを迎える時期について解説します。あらかじめいつ頃が花粉症の症状のピークか知っておくことで、治療やセルフケアに役立てることが可能です。...

舌下免疫療法にかかる費用は?

舌下免疫療法では定期的な受診と毎日の治療薬の服用が必要であり、かかる費用が気になる方も多いかもしれませんね。

保険料が3割負担であれば初回の診察で5,000円ほど、それ以降毎月の診察と薬代で2,000円ほどが目安です。

また、舌下免疫療法ではすぐに効果が出るわけではないため、花粉症のシーズンに症状が出る場合も。

その時期には薬物療法と並行して治療する必要があるため、トータルでかかる費用がアップする可能性も考えられます。

舌下免疫療法にかかる期間は?

舌下免疫療法は基本的には3年を目処として治療を行います。

毎日忘れず治療薬を服用する必要があるため、根気強く続けることが重要です。

ただ、舌下免疫療法は治療期間が長いほど、効果を発揮できるともいわれています。

最初の1年よりも2年目、2年目よりも3年目といった具合に、体の免疫機能が高まるためと考えられています。

続けることでより高い効果が期待できるため、1~2年ほどで効果が感じられないからとやめるのではなく、長く治療を行うのがおすすめです。

場合によっては3年以上継続することで、長期的な効果も期待できます。

舌下免疫療法に期待できる効果、いつからあらわれる?

上で述べたように、舌下免疫療法は約3年かけて行う治療です。

したがって必ずしも治療をはじめてすぐに効果が感じられるとは限りません。

初年度で効果を感じられる方もいらっしゃいますが、数ヵ月後や2~3年後など効果が出るタイミングは人それぞれ。

そのため、焦らずに治療を続けることが何よりも重要です。

舌下免疫療法に期待できる効果
  • 症状を和らげ、改善
  • 治療薬の減量
  • QOL(生活の質)の改善
  • 根治の可能性もある

また、約7~8割の方は症状が改善されるといわれていますが、一方で2~3割の方は効果が感じられないこともあります。

医師と相談しながら治療を進め、疑問などがあれば遠慮なく尋ねるようにしましょう。

舌下免疫療法の注意点

ここまで解説してきたように治療薬を一日一回服用することで高い効果が期待できる舌下免疫療法ですが、いくつか注意点やデメリットもあります。

治療を検討している場合にはこれらもしっかりチェックしておき、安心した上で治療を行いましょう。

副作用があらわれることがある

舌下免疫療法では副作用があらわれる場合もあります。

アレルゲン(ダニやすぎ花粉そのもの)が配合された薬を服用するため、アレルギーをもつ患者さんへ投与すると、副作用(副反応)としてアレルギー反応が起こってしまうのは当然ともいえますね。

とはいえ、従来行われていた皮下免疫療法に比べると格段に安全だとされています。

治療にともなって起こりやすい副反応は以下の通りです。

  • 口内炎
  • 舌の腫れ
  • 口の中の腫れやかゆみ、不快感
  • 唇の腫れ
  • のどのかゆみや刺激感、不快感
  • みみの痒み

これらの副反応が起こる可能性があるとあらかじめ理解しておきたいですね。

また、場合によってはアナフィラキシーショックとよばれる急性の過敏反応を引き起こすおそれがあります。

引き起こされる反応は蕁麻疹やおう吐などの消化器症状、せきや呼吸困難などの呼吸器症状、意識混濁などです。

これらは薬を使用した直後30分や治療を開始後1ヵ月程度、アレルゲンが大量に飛散している状況などで引き起こされる可能性があります。

一般的に副反応は起こったとしても軽微だと考えられていますが、このように重篤な反応が起こらないとは断言できません。

万が一このような状況になった場合には救急車を呼び、できるだけ早く病院で対処してもらうことが非常に重要です。

基本的には治療の開始時に渡される患者カードに、何かあった場合に受診する病院があらかじめ記載されております。

治療を受けられない人もいる

スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎であっても、舌下免疫療法を受けられない患者さんもいます。

重い気管支喘息をお持ちの方や、がんや免疫系の病気がある方、免疫不全の病気をお持ちの方、妊娠中の方などは治療の適応外です。

その他にも以下のような方はあらかじめ医師に相談しておくことをおすすめします。

  • アレルゲン免疫療法の治療でアレルギー症状を引き起こしたことがある
  • 気管支喘息がある
  • 授乳中である
  • 重度の心疾患や肺疾患、高血圧がある
  • 他のアレルゲンに対しても反応性が高い

また、高齢者の方は治療の適応外ではありませんが、舌下免疫療法の治療による効果が出る割合が低くなるといわれています。

そのため長期に渡って治療が必要となる舌下免疫療法よりも、症状が出た際にピンポイントで薬物療法を行う方が負担が少ない場合もあり、よく検討した上で決めるとよいでしょう。

治療のデメリット

舌下免疫療法のデメリットとしては治療が長期に渡るため、根気強く続ける必要があるという点ではないでしょうか。

毎日一度だけの服用とはいえ、途中で面倒になってしまうこともあるかもしれません。

じっくりと治療を続けられる根気強さが必要です。

また、舌下免疫療法をはじめたとしても、すぐに効果が出るわけではないため、症状が出た場合には薬物療法と並行して治療を行わなければならないという点も挙げられます。

治療を続けることで徐々に薬の量が減ることが期待できますが、早く効果が出るとは限らないと心得ておきましょう。

舌下免疫療法は子どもも受けられる?

花粉症や鼻炎などのアレルギー疾患の発症年齢が低下しており、子どもがつらい症状に悩むケースも増えています。

以前の治療薬は12歳以上が適応でしたが、2018年に11歳以下でも可能な治療薬が発売となりました。

服用しやすい即溶性錠剤で、子どもでも比較的簡単に服用が可能です。とはいえ、幼い子どもの場合には難しいこともあるため、大体5歳以上くらいから治療ができると考えられています。

舌下免疫療法を受けられる診療科

花粉症やアレルギー性鼻炎は耳鼻咽喉科やアレルギー科などで治療を行います。

子どもの場合には小児科で診てもらえる場合もあります。

しかし舌下免疫療法は、どこの医療機関でも受けられるというわけではありません。

これは舌下免疫療法の治療薬を処方するために医師は専門の講習を受講しなければならないため。

つまり医師が講習を受けていない場合には治療薬の処方ができず、舌下免疫療法は行えません。

そのため、あらかじめ受診を検討している病院で舌下免疫療法を行っているか確認しておくことをおすすめします。

当院では舌下免疫療法をおこなっています。ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

舌下免疫療法はスギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の完治が期待できる、唯一の治療法です。

治療期間は長くかかり、毎日薬を服用する根気強さが必要ですが、症状が重く、日々の生活にまで大きく影響している方は、試してみる価値はあるといえるでしょう。

まとめ
  • 舌下免疫療法は約3年かけてゆっくり治療を行う
  • 舌下免疫療法では症状の改善や薬の減量、場合によっては完治も期待できる
  • 舌下免疫療法は花粉が飛散する前に治療を開始する必要がある

不快な鼻や目の症状に悩んでいるならまずは医師へ相談し、舌下免疫療法での治療を検討するのがおすすめです。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師