毎年、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の症状に悩まされていませんか。
舌下免疫療法は、アレルギーの原因そのものに働きかけ、症状の改善や体質の変化が期待できる治療法です。
ただし、「誰が受けられるのか」「いつ始めるべきか」など、治療を始める前に知っておきたいポイントもあります。
この記事では、耳鼻咽喉科の立場から、舌下免疫療法が向いている人の特徴や開始時期、期待できる効果・注意点をわかりやすく解説します。
自分に合った治療かどうか判断するための参考にしてください。
目次
舌下免疫療法はどんな人に向いている?
次のようなお悩みがある方は、舌下免疫療法が向いている可能性があります。
- 検査によりスギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と診断されている
- 毎年の花粉症や通年性の鼻炎症状がつらく、薬だけでは十分に抑えられない
- 一時的な対症療法ではなく、数年かけて根本的な改善(いわゆる体質改善)を目指したい
- 毎日、数年間にわたって治療を継続する意思がある
診察の際に検査を行い、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎であると確定診断を受けた上で治療は開始されます。
また、どちらか片方だけでなく、いずれの症状がある場合にも治療は可能です。
舌下免疫療法とは?どんな治療?
舌下免疫療法は、「アレルゲン免疫療法」の一種です。
アレルギーの原因となるアレルゲンを少量から少しずつ体に与えることで、アレルギー反応を弱くし、症状を改善・予防する治療法になります。
現在、保険適用になっているのは、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の2つに限られます。
ヒノキやその他の草・樹木の花粉、動物の毛などによるアレルギー症状については、現時点では舌下免疫療法の対象になっていません。
かつてはアレルゲンを注射する「皮下免疫療法」が中心でしたが、安全性が高く通院が楽な「舌下」の方法が広がり、多くの方のつらい鼻炎症状に有効性が示されています。
薬の服用や点鼻薬など一時的な「対症療法」と違い、数年間の継続で症状を長期間抑えることが期待される、体質の改善を目指す治療です。
一部の症例では、アレルギー症状がほとんど出なくなる(長期的寛解)ことがあります。
舌下免疫療法はいつ始める?
舌下免疫療法はいつでも開始できるというわけではありません。
花粉の飛散時期にはアレルゲンに対する反応が過敏になっており、治療を開始するのには適していない時期です。
そのため花粉の飛んでいない時期、一般的に6~12月頃(地域により異なる)から開始になります。
具体的な時期は医師に相談した上で決めるとよいでしょう。
花粉症の時期については、以下の記事に詳しく書かれていますので合わせてご覧ください。
なお、ダニアレルギーの舌下免疫療法も、スギ花粉症と同じく花粉時期は避けるべきと考えられています。
もし、スギとダニの両方の治療(併用)を希望する場合も、時期については医師の指導に従う必要があります。
舌下免疫療法の効果はいつから出る?
舌下免疫療法は約3年かけて行う治療です。
したがって必ずしも治療をはじめてすぐに効果が感じられるとは限りません。
初年度で効果を感じられる方もいらっしゃいますが、数ヵ月後や2~3年後など効果が出るタイミングは人それぞれ。
スギ花粉症に対しては初年度は効果が出にくいと考えられています。
そのため、焦らずに治療を続けることが何よりも重要です。
- 症状を和らげ、改善
- 治療薬の減量
- QOL(生活の質)の改善
- 根治の可能性もある
また、約7~8割の方は症状が改善されるといわれていますが、一方で2~3割の方は効果が感じられないこともあります。
医師と相談しながら治療を進め、疑問などがあれば遠慮なく尋ねるようにしましょう。
舌下免疫療法の注意点
ここまで解説してきたように、舌下免疫療法は治療薬を1日1回服用することで高い効果が期待できる治療法です。
一方で、いくつか注意点やデメリットもあります。
治療を検討する際は、メリットだけでなく注意点もしっかり確認し、納得したうえで治療を始めることが大切です。
副作用があらわれることがある
舌下免疫療法では副作用があらわれる場合もあります。
アレルゲン(ダニやすぎ花粉そのもの)が配合された薬を服用するため、アレルギーをもつ患者さんへ投与すると、副作用(副反応)としてアレルギー反応が起こってしまうのは当然ともいえるでしょう。
ただし、従来行われていた皮下免疫療法と比べると、安全性は高い治療法とされています。
治療にともなって起こりやすい副反応には、次のようなものがあります。
- 口内炎
- 舌の腫れ
- 口の中の腫れやかゆみ、不快感
- 唇の腫れ
- のどのかゆみや刺激感、不快感
- みみの痒み
これらの副反応が起こる可能性があるとあらかじめ理解しておきましょう。
また、場合によってはアナフィラキシーショックとよばれる急性の過敏反応を引き起こすおそれがあります。
具体的な症状は次の通りです。
- 蕁麻疹
- おう吐などの消化器症状
- せきや呼吸困難などの呼吸器症状
- 意識混濁
これらの反応は、薬を使用した直後30分以内や治療開始後1か月程度、またアレルゲンが大量に飛散している時期などに起こる可能性があります。
多くの場合、副反応は軽度であると考えられていますが、重篤な反応が絶対に起こらないとは言い切れません。
万が一、強い症状が出た場合には、すぐに救急車を呼び、できるだけ早く医療機関で対応してもらうことが重要です。
治療開始時に渡される患者カードには、緊急時に受診する病院があらかじめ記載されています。
いざというときのために、必ず携帯しておきましょう。
治療を受けられない人がいる
スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎であっても、舌下免疫療法を受けられない方がいます。
たとえば、次に該当する場合は、治療の適応外となります。
- 重い気管支喘息がある方
- がんや免疫系の病気がある方
- 免疫不全の病気をお持ちの方
- 妊娠中の方
また、以下のような方も、治療開始前に医師へ相談しておく必要があります。
- アレルゲン免疫療法の治療でアレルギー症状を引き起こしたことがある
- 気管支喘息がある
- 授乳中である
- 重度の心疾患や肺疾患、高血圧がある
- 他のアレルゲンに対しても反応性が高い
なお、高齢の方は治療の適応外ではありませんが、治療効果が出にくい傾向があるとされています。
そのため、数年にわたる舌下免疫療法よりも、症状が出たときに薬物療法を行う方が負担が少ない場合もあります。
ライフスタイルや体力もふまえ、医師と相談しながら治療方法を選ぶとよいでしょう。
治療は数年単位で続ける必要がある
舌下免疫療法のデメリットとして、治療期間が長く、根気よく続ける必要がある点が挙げられます。
服用は1日1回ですが、毎日続けるため、途中で面倒に感じてしまうこともあるかもしれません。
治療効果を得るためには、じっくりと続ける姿勢が必要です。
また、治療を始めたからといって、すぐに症状が改善するわけではありません。症状が出ている間は、薬物療法と並行して治療を行う必要があります。
治療を継続することで、徐々に薬の使用量が減ることは期待できますが、短期間で効果が出るとは限らない点も理解しておきましょう。
舌下免疫療法の治療の流れ・費用の目安
舌下免疫療法のメリットや注意点がわかったところで、ここからは、実際に治療するときの流れや期間、費用の目安について詳しくみていきましょう。
治療の流れ(全体像)
舌下免疫療法には、あらかじめ決められたスケジュールがあります。治療は、以下のような流れに沿って進められます。
1.初回の診察
初回の診察では、問診や血液検査などを行います。検査結果を医師が確認し、舌下免疫療法が可能と判断された場合のみ、治療が開始されます。
2.診察・アレルゲン初回投与
1週間後の受診が可能なタイミングで再度受診し、医師の指導のもとで治療薬の初回投与を行います。
投与後30分は病院内で安静に過ごします。体調などに変化がないことを確認した上で、診察は終了です。
3.自宅での服用
初回の治療薬投与に問題がなければ、翌日から自宅での服用を開始します。
4.増量
1週間後に再度受診し、アレルゲンを増量します。このときも病院内で投与を行います。
初回と同様に、30分間の院内安静が必要です。その後、1週間は自宅での投与となります。
ただ、問題なければ30日分の処方がされる場合もあります。
5.再来
増量から1週間後に来院していただき、診察を行います。問題がなければ、そのまま投与を継続します。(30日処方の場合、再来は省略されます)
6.定期的な受診
その後は、月に一回ほど定期的に受診し、副作用の有無などを確認しながら治療を進めていきます。
また、投与開始時の初期段階では、アレルギー反応を抑える目的で、抗アレルギー薬を同時に投与する場合が多いです。
舌下免疫療法にかかる費用の目安
舌下免疫療法では、定期的な受診と毎日の治療薬の服用が必要です。のため、費用が気になる方も多いかもしれません。
保険料が3割負担の場合、費用の目安は以下のとおりです。
- 初回(検査+診察):3,000~6,000円程度
- 月額(診察+薬30日分):1,500~3,000円(スギ約2,000円、ダニ約2,500円)
なお、舌下免疫療法はすぐに効果が出る治療ではありません。そのため、花粉症のシーズンに症状が出ることもあります。
その場合は、薬物療法と並行して治療を行う必要があるため、トータルでかかる費用が増える可能性もあります。
舌下免疫療法は子どもでも受けられるのか
近年、花粉症や鼻炎などのアレルギー疾患は発症年齢が低下しており、子どもがつらい症状に悩むケースも増えています。
2019年に実施された、日本の耳鼻咽喉科医およびその家族を対象としたアンケート調査では、5~9歳の30.1%、10~19歳の49.5%がスギ花粉症を有していることが分かっています。
この結果から、スギ花粉症の発症年齢が低年齢化していることが示されました。
以前は、舌下免疫療法の治療薬は12歳以上が適応とされていましたが、2018年に11歳以下でも使用可能な治療薬が発売されました。
この治療薬は、服用しやすい即溶性錠剤で、子どもでも比較的簡単に服用可能です。
ただし、幼い子どもの場合は服用が難しいこともあるため、おおよそ5歳以上からの治療が推奨されています。
舌下免疫療法を受けられる診療科
花粉症やアレルギー性鼻炎は耳鼻咽喉科やアレルギー科などで治療を行います。
子どもの場合には小児科で診てもらえる場合もあります。
しかし舌下免疫療法は、どこの医療機関でも受けられるというわけではありません。
これは舌下免疫療法の治療薬を処方するために医師は専門の講習を受講しなければならないため。
つまり医師が講習を受けていない場合には治療薬の処方ができず、舌下免疫療法は行えません。
そのため、あらかじめ受診を検討している病院で舌下免疫療法を行っているか確認しておくことをおすすめします。
当院では舌下免疫療法をおこなっています。ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
舌下免疫療法は、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎に対して、体質そのものの改善が期待できる、現在のところ唯一の治療法です。
治療期間は約3年と長く、毎日くすりを服用する必要があるため根気は必要ですが、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が強く、日常生活や仕事・学業に支障が出ている方にとっては、検討する価値のある治療といえるでしょう。
- 舌下免疫療法は約3年かけてゆっくり治療を行う
- 舌下免疫療法では症状の改善や薬の減量、場合によっては完治も期待できる
- 舌下免疫療法は花粉が飛散する前に治療を開始する必要がある
ただし、舌下免疫療法は即効性のある治療ではありません。
効果の現れ方には個人差があり、経過をみながら治療内容を調整する場合もあります。
そのため、自己判断で始めたり中断したりせず、医師の管理のもとで継続することが大切です。
福岡市東区名島にお住まいで、スギ花粉やダニアレルギー性鼻炎の症状にお悩みの方はあだち耳鼻咽喉科へお越しください。
あだち耳鼻咽喉科では、舌下免疫療法の治療にも対応しています。
花粉症やダニアレルギー性鼻炎の症状は、日常生活に支障が出るほどひどくなることも少なくありません。












