春の気配を感じると、鼻がムズムズ、目がかゆいなどの不快な症状に悩まされる方も多いのではないでしょうか?
また最近では、春だけでなく秋やその他の季節にも花粉症になるケースが増えています。
いったいなぜ、こんなに花粉症の患者は増えてしまったのでしょうか?
今回は花粉症をテーマに、原因や詳しい症状、治療法や意外と知らない花粉症対策やセルフケアについて、詳しく解説します。
花粉症の原因やメカニズムとは?
花粉症の原因は、スギやヒノキの花粉です。
2月後半から4月半ばにかけてはスギ花粉、4月後半から5月半ばにかけてはヒノキの花粉が多く飛散します。
どちらか一方の花粉症だけならまだしも、スギとヒノキの両方の花粉症を持つ患者さんも少なくありません。
そうなると長い人では約4か月間、1年の3分の1を花粉症の症状で悩まされることになります。
想像しただけでも辛いですよね。
そんな花粉症は以下のメカニズムで発症します。
- アレルゲン(花粉)を「異物」と判断するとIgEと呼ばれる抗体が作られる
- IgE抗体は粘膜にある肥満細胞の表面に結合する
- ふたたび花粉が体内に侵入するとヒスタミンやロイコトリエンなど炎症を引き起こす物質を放出する
実をいうと花粉は、本来私たちにとって害のあるものではありません。
様々な要因で私たちの体の免疫が花粉に過剰反応してしまい、花粉を異物として判断してしまうため、様々な症状を引き起こされてしまうのです。
花粉症の患者さんが年々増加している理由
花粉症の患者さんが年々増加している理由は様々ですが主なものを3つご紹介します。
- 戦後復興のために植えられたスギが成長し花粉が飛散
- 温暖化の影響で花粉が多く産生される
- 食生活の変化や不規則な生活による免疫力低下
その他にもストレスや住環境の変化なども花粉症患者さんの増加の理由の1つとして挙げられています。
これらを見ると、花粉症は現代を生きる私たちには避けられない病になってきているようです。
花粉症は今や夏や秋にも発症する「通年病」
花粉症といえば、スギやヒノキの花粉が飛散する春から初夏にかけて発症するものとイメージしがちです。
でも、今や花粉症は夏や秋にも発症する「通年病」となりつつあります。
なぜなら、花粉症はスギやヒノキの花粉だけでなく、他にもさまざまな植物の花粉が原因となっているから。
花粉症を発症する原因となる花粉の数はなんと50種類以上もあるのです。
例えば夏から秋にかけては主にイネ科とキク科の花粉が飛散します。
カモガヤやオオアワガエリといったイネ科の花粉は、鼻や目の症状に加え皮膚のかゆみなどの全身症状が出やすいのが特徴です。
また、ヨモギやブタクサといった身近なキク科の植物の花粉も、鼻や目の症状を引き起こします。
- 春から初夏…スギやヒノキの花粉が飛散
- 夏から秋…イネ科やキク科の花粉が飛散
イネ科やキク科の植物は道端や河川敷などどこにでも生えているため、注意が必要です。
花粉症の症状
花粉症の症状といえば、くしゃみ・鼻水・鼻づまりをイメージする人が多いと思います。
でも、実は花粉症にはこれ以外の症状もあるのです。
ここでは、花粉症の3大症状とそれ以外の症状について詳しく解説します。
花粉症の三大症状「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」
花粉症の三大症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりになります。
ここでは花粉症の三大症状を1つずつ解説します。
1.くしゃみ
鼻に入ってきた異物(花粉)を外に出そうとする反応によるもの。
連続して何度もくしゃみが出るのは、アレルギー反応の特徴です。
2.鼻水
鼻に入ってきた異物を洗い流そうとする反応によるもの。
黄色いどろっとした粘度の高い鼻水ではなく、透明でさらっとしているのが特徴です。
3.鼻づまり
炎症で弱った鼻の粘膜が腫れて、鼻の通り道が狭くなることによって起こります。
他の症状に比べて、鼻づまりの症状はは後から現れることが多いのが特徴です。
その他の花粉症の症状
花粉症の症状は「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」だけではありません。
その他にも以下のような症状が表れます。
- 目のかゆみや充血
- 頭痛
- 眠気
それでは1つずつ解説します。
目のかゆみや充血
鼻だけでなく、目に花粉が入り込むことで炎症が起こりかゆみや充血を引き起こしてしまうことも。
また、涙や痛みなどの症状が現れる場合もあります。
頭痛
花粉症は、頭痛の症状を引き起こすことも少なくありません。
鼻水や鼻づまりで鼻の通り道が狭くなり、脳に酸素を取り込む量が減ってしまい、頭が重くなったり、副鼻腔内などに起こった炎症を頭痛と感じたりすることが原因です。
他にも、花粉症の症状による睡眠不足やストレスが頭痛となってあらわれることもあります。
眠気
花粉症のつらい症状が原因で夜ぐっすり眠れなかったり、眠りが浅かったりすることで、日中に強い眠気を感じてしまうことも多くあります。
花粉症の治療や薬にはどんなものがあるの?
花粉がアレルゲンとして体内に侵入し、鼻水やくしゃみ、目のかゆみなど様々なアレルギー反応を起こす花粉症。
重症化すると日常生活にも影響が出てしまいます。
花粉症が重症化する前になんとか手を打ちたいものです。
花粉症の治療や薬には以下のようなものがあります。
- 初期療法
- 舌下免疫療法
- レーザー治療
- 注射(抗IgE抗体)による治療
適切な治療や薬で花粉症の時期を快適に過ごしましょう。
花粉症は初期療法で先手を打つ
初期療法とは、花粉が本格的に飛散する前、花粉症の症状がまだ出ないうちに先手を打つ治療法です。
鼻粘膜にまだ炎症が進んでいない初期から治療をおこなうことで、症状を軽くすることができるとされています。
初期療法には以下のような治療法があります。
- 舌下免疫療法
- レーザー治療
それぞれの詳しい治療法は以下の通りです。
舌下免疫療法
「舌下免疫療法」とは、継続的にアレルゲンを含むエキスを舌の下に投与する治療法です。
体をアレルゲンに徐々に慣らしていくことで、アレルギー症状を改善したり症状を出にくくしたりする効果が期待できます。
現在のところはスギ花粉症(及びダニ)のアレルギーがある方で治療可能です。
1日1回少量の治療薬を服用することから開始し、その後も最低3年以上継続する必要があります。
2年間の治療で、約70%の患者さんが症状がなくなったり軽くなったりといった効果を感じているという研究結果も!
ただし副作用として口や舌が腫れる、のどや耳のかゆみといった症状があらわれたり、まれに強いアレルギー症状が出たりすることもあり、医師と相談しながら治療することが大切です。
舌下免疫療法の詳しい内容については以下の記事をご覧ください。
レーザー治療
レーザー治療とは、花粉飛散前に鼻粘膜をレーザーによって変性させる治療法です。
鼻粘膜を変性させることにより、一時的にアレルギー反応を起こしにい状態にすることができます。
花粉症の症状を抑えるための治療
花粉症の症状が表れたら、自己判断で市販薬を服用せず病院できちんと診察してもらいましょう。
受診をすると症状のタイプや重症度などに合わせた治療をすることができます。
花粉症のタイプは大きく3つに分けられます。
- くしゃみや鼻水だけのくしゃみ・鼻水型
- 鼻づまりの鼻閉型
- すべての症状が出る充全型
さらに、くしゃみや鼻をかむ回数など症状の強さによって、重症度を分けられます。
くしゃみ・鼻水型では抗ヒスタミン作用の強い薬を、鼻づまり型ではあわせて点鼻薬や気管支喘息で処方されるロイコトリエン受容体拮抗薬などが使われます。
また、かゆみや充血、涙が止まらないなど目の症状が強い場合には、点眼薬が処方されます。
花粉症のタイプは問診などの結果を受けて医師が判断します。
しかし、自分の症状について詳しく医師に説明できれば、より症状に合わせた適切な治療を受けることにつながります。
どういった症状がつらいのか、どんな場合に強い症状があらわれるのかなど、あらかじめまとめておいてから受診するとよいでしょう。
花粉症の治療に使われる薬については、以下の記事に詳しく掲載されていますので、ご参照ください。
注射(抗IgE抗体)による治療
症状が強い人に対しては注射(抗IgE抗体)による治療が行われます。
採血により花粉アレルギーがあり、またアレルギー反応(IgE)が高度である場合に内服治療の効果が低い場合に追加で行える治療です。
抗原と抗体がマスト細胞に付着する部分をブロックする治療で新しい治療であり2週または4週ごとに注射を行います。
花粉症対策とセルフケア
花粉症を少しでも快適に乗り切るには、病院での治療や薬の服用だけでなく、自分でできる花粉症対策やセルフケアをあわせて行うことがポイントです。
ここでは、花粉症を乗り切るための2つのセルフケアをご紹介します。
- 普段の生活で気を付けたいセルフケア
- 花粉症の症状を悪化させないためのセルフケア
それでは1つずつ解説します。
普段の生活で気を付けたいセルフケア
花粉症の症状を抑えるには、普段の生活でできるだけ花粉に触れないようにすることが大切です。
ここでは普段の生活で花粉症を抑えるの6つのセルフケアをご紹介します。
- 花粉飛散情報を確認する
- マスクやメガネを着用する
- 表面が毛羽立った上着は避ける
- 布団や洗濯物の外干しは避ける
- 窓際の掃除は念入りにする
- 帰宅後すぐ洗顔、うがい、鼻をかむ
それでは1つずつ解説します。
花粉飛散情報をチェックする
テレビやスマホを利用して、花粉情報をこまめに確認しましょう。
花粉飛散の最新情報は以下のサイトから確認することができます。
花粉の飛散が多い日は、できるだけ外出を避けることをおすすめします。
また、次のような気象条件の日はとくに花粉の飛散が多くなるので要注意です。
- 晴れ、もしくは曇り
- 前日に雨が降った
- 日中の気温が高め
- 湿度が低く乾燥している
- 強めの南風が吹いた後、北風に変わった
以上のような気象条件が重なった日や、花粉が多く飛散する昼前後や日没の時間帯の外出はできるだけ避けるとよいでしょう。
全国の花粉症の時期の詳細ついては、以下の記事に書かれていますので合わせてご覧ください。
マスクやメガネを着用する
外出時には、必ずマスクやメガネを着用しましょう。
マスクを着用することで、鼻に入る花粉量を3分の1から6分の1まで減らすことができます。
顔にフィットする花粉症用のマスクを選ぶのがおすすめです。
さらにメガネを着用すると、つけていないときの半分程度まで目に入る花粉量を減らすことができます。
花粉症用のメガネも多く販売されているので、上手に活用しましょう。
表面が毛羽立った上着は避ける
外出時には、ウールなど表面が毛羽立った上着やアウターは避けましょう。
表面の繊維に花粉がくっついてしまい、症状が悪化する原因となってしまいます。
凹凸のないナイロンなどの化学繊維やレザーなど、ツルツルとした花粉のつきにくい素材がおすすめです。
布団や洗濯物の外干しは避ける
晴れた日には布団や洗濯物を外に干したくなりますが、グッと我慢しましょう。
布団乾燥機やコインランドリーなどを上手に利用することをおすすめします。
どうしても干したいときには、花粉の飛散が少ない午前中に干しましょう。
取り込むときには、表面を軽く叩き花粉を落とし、布団の表面に掃除機をかけるとよいですね。
窓際の掃除は念入りにする
こまめに掃除機やフロアワイパーをかけましょう。
気をつけているつもりでも、花粉は室内に入り込んでしまっているものです。
とくに窓際は念入りに掃除して、花粉が家に入り込まないように水際対策をしましょう。
フローリングであれば、水拭きするとさらに効果的です。
帰宅後すぐ洗顔、うがい、鼻をかむ
帰宅したら、できるだけ早く体についた花粉を落としましょう。
まずは、玄関先で服や髪の毛を払い、部屋に花粉をなるべく入れないようにします。
部屋に入ったら洗顔、うがい、鼻をかんで花粉を洗い流します。
また、就寝前には入浴し寝室に花粉を持ち込まないことは、朝のツラい症状を引き起こしにくくするのに効果的です。
花粉症の症状を悪化させないためのセルフケア
毎日の生活習慣を見直し、規則正しい生活を送ることも、花粉症の症状を悪化させないための重要なポイントです。
ここでは、花粉症の症状を悪化させないための4つのセルフケアをご紹介します。
- 十分な睡眠、食事、適度な運動
- アルコールを飲みすぎない
- タバコを避ける
- 目を休ませる
それでは1つずつ解説します。
十分な睡眠、食事、適度な運動
自律神経の乱れは、花粉症の症状悪化の大きな原因となります。
自律神経を整えるためには、十分な睡眠や栄養バランスのとれた食事、適度な運動が大切です。
「花粉症に効果的!」などと機能性をうたったものもありますが、特定の食材ばかりを摂取するのはおすすめできません。
バランスのよい食事をきちんと食べる方が重要です。
アルコールを飲みすぎない
お酒を飲むと血管が拡張し鼻づまりや目の充血、頭痛などの症状が悪化しやすくなってしまいます。
お花見や歓迎会などお酒を飲む機会の多い季節ですが、アルコールはできるだけ避けるようにしましょう。
タバコを避ける
タバコの煙は、鼻の粘膜を直接刺激し、鼻づまりなどの症状を悪化させる原因になります。
また、自分が喫煙していなくても、喫煙している人に近づくと、タバコの煙で刺激されてしまいます。
喫煙を控えるだけでなく、タバコを吸っている人の側に近づくのも避けるようにしましょう。
目を休ませる
花粉はに刺激を与え、大きな負担がかかっている目ことも多くあります。
目の乾燥に気をつける、コンタクトレンズの使用を控える、パソコン作業は休憩を挟みながらなど、できるだけ目を休めることも心がけましょう。
まとめ
今や、日本人の4人に1人は花粉症とも言われています。
最近では年間通して花粉症の症状が出ることも多く、風邪だと思っていたら花粉症だったというケースも少なくありません。
すぐに完治させることはなかなか難しい花粉症ですが、正しい治療法や毎日のちょっとしたセルフケアで症状の軽減につながります。
- 花粉症の主な原因はスギやヒノキの花粉だが他の植物の花粉で発症することもある
- 食生活の変化や不規則な生活による免疫力低下によって花粉症の患者さんは年々増加している
- 舌下免疫療法やレーザー治療などの初期療法を行うことで花粉症の症状を緩和できる
- 花粉症はセルフケアすることによって症状を抑えることができる
まずは医師に相談して、症状に合わせた治療をおこなうとともに、規則正しい生活を心がけることで、ツラい花粉症シーズンを乗り切りましょう。