花粉症の薬は、病院での処方薬・市販薬いずれもさまざまな種類があります。
不快な症状を効果的に抑えるには、医師や薬剤師に相談し、自分に合った薬を服用することがもっとも重要です。
今回は花粉症の薬をテーマに、その種類や服用のポイント、注意点などについてくわしく解説します。
目次
花粉症の薬は症状に合わせて病院で処方を
花粉症の薬には手軽な市販薬という選択肢もありますが、より効果的に症状を抑えるには、病院を受診して自分に合った薬を処方してもらいましょう。
花粉症の症状や重症度は人それぞれ異なり、自己判断で市販薬を服用しても、思うような効果が得られないケースも少なくないからです。
花粉症の市販薬には、処方薬と同じ成分が含まれていますが、販売できる容量や種類が限られています。そのため、症状を和らげるために継続的に購入すると処方薬よりもコストがかかってしまう恐れもあります。
一方、病院に受診すると、症状のタイプや度合い、患者様のライフスタイル、さらに副作用の影響も考慮した上で、医師が総合的に判断した最適な薬を処方してもらえます。
少ない副作用で早く症状を抑えたいのであれば、病院を受診し自分に合った薬を処方してもらうのがおすすめです。
花粉症の薬の種類
花粉症の薬は症状に合わせてさまざまな種類があります。1種類だけでなく、いくつか組み合わせて処方されることも珍しくありません。それぞれの特徴についてみていきましょう。
1.抗ヒスタミン薬
花粉症の薬としてもっともよく使われるのが「抗ヒスタミン薬」です。
くしゃみや鼻水、目のかゆみといった花粉症特有の症状を引き起こす「ヒスタミン」とよばれる物質の作用をブロックするはたらきがあり、飲み薬だけでなく、点鼻薬、点眼薬としても処方されます。
抗ヒスタミン薬には「第一世代」「第二世代」の2種類があり、おもに副作用の点で次のように特徴が異なります。
副作用が起きやすい【第一世代抗ヒスタミン薬】
第一世代抗ヒスタミン薬は眠気や口の渇きといった軽い副作用を引き起こしやすいという特徴を持ちます。
しかし第二世代抗ヒスタミン薬の登場で、最近では第一選択で処方されることが少なくなっています。
副作用が少なくなった【第二世代抗ヒスタミン薬】
第二世代抗ヒスタミン薬は、第一世代に比べて副作用が少ないタイプの薬です。
病院で処方される抗ヒスタミン薬は第二世代が多いですね。
近年、処方箋なしでも処方できるようになり、市販薬にも第二世代抗ヒスタミン薬を使われているものが増えています。
副作用が少なくなったとはいっても個人差がありますので、効果とのバランスをみながら使用される薬です。
2.抗ロイコトリエン薬
「抗ロイコトリエン薬」は鼻粘膜の腫れを引き起こし、鼻づまりの原因となる「ロイコトリエン」と呼ばれる物質の作用を抑えるはたらきがあります。
抗ヒスタミン薬と組み合わせて一緒に処方されることが多い薬です。
3.遊離抑制薬
「遊離抑制薬」は、ヒスタミンやロイコトリエンなどアレルギーの原因となる物質の分泌を抑える薬です。
抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬に比べて効き目が穏やかで、症状の出始めのころや比較的症状の軽い方へ処方されます。
4.ステロイド薬
「ステロイド薬」は副腎皮質ホルモンとも呼ばれ、炎症を抑えるはたらきを持つ薬です。主には点鼻薬として処方されます。
点鼻薬はそれほど副作用は無いお薬ですが、内服薬は症状が強い場合に使われ、効果的に作用する反面、副作用があるため、服用には注意が必要です。
必ず医師の指示に従って服用するようにしましょう。
5.血管収縮剤
「血管収縮剤」は、粘膜の血管を収縮させて腫れを引かせ、鼻づまりを解消す点鼻薬です。
使用後すぐ効果があらわれますが、数時間後にはまた元に戻ってしまうため、頻回に使い続けると逆に鼻づまりがひどくなってしまうこともあります。
市販の点鼻薬に含まれていることが多いため、使用の際には注意が必要です。
6.舌下免疫療法
舌下免疫療法は花粉飛散前から開始する治療で、毎日薬を使用することにより、花粉症の症状を軽減することができます。
しかしながら、花粉飛散後は開始することができないため、少なくとも前年の12月中旬には開始しておく必要があります。
また、即効性はなく、少しずつ免疫を高めていく治療です。
舌下免疫療法については、以下の記事に詳しく書かれていますので合わせてご覧ください。

7.分子標的薬治療
アレルギーと関係する血中のIgEと結びつくことで効果を発揮する治療で、いままでは喘息や蕁麻疹で使用されてきましたが、重度の花粉症に対して今後行えるようになる治療です。
現時点ではまだ、一般的な治療ではありません。
8.ゾレア皮下注射
アレルギーと関係する血中のIgEと結びつくことで効果を発揮する治療で、いままでは喘息や蕁麻疹で使用されてきました。
2020年より、重度の花粉症に対して今後行えるようになった最新の治療法です。
ゾレア皮下注射の治療法については以下の記事をご覧ください。

花粉症の薬のタイプと服用のポイント
花粉症は症状の出方や出る場所に応じて飲み薬だけでなく、点鼻薬・点眼薬が処方されます。それぞれの薬の特徴と、服用する際のポイントについてみていきましょう。
飲み薬
花粉症の薬として一般的な飲み薬。治療の主となる薬のため、正しく服用することが大切です。
1.水やぬるま湯で飲む
薬は水やぬるま湯と一緒に飲みましょう。
お茶やコーヒー、清涼飲料水などで飲むと、成分の吸収を妨げるなどの影響を与えてしまうことがあります。
2.飲むタイミングを守る
アレルギーの薬は基本的には1日1回あるいは2回の内服であるものがほとんどであり、特に1回の場合は眠気の副作用や血糖上昇が効果に影響する薬もあり、就寝前に内服するものが多いです。
もし飲み忘れてしまったら、すぐ飲むのが原則ですが、すでに次の服薬の時間が近いようなら、飲まずに次のタイミングで飲む方がよいでしょう。
点鼻薬
鼻の症状が強い場合、点鼻薬が処方されます。直接局所に噴霧するため、全身への副作用を抑えて、鼻づまりや鼻の炎症に効果を発揮できます。
1.先に鼻をかむ
点鼻薬を服用する前にしっかりと鼻をかみましょう。
せっかくの薬の成分が鼻水で流れてしまわないよう、鼻の中をきれいにしておくことがポイントです。
2.鼻が通っていることを確認する
点鼻薬は、鼻が通っているときにスプレーしましょう。鼻がつまっている状態では、うまく薬が局所に届きません。
私たちの鼻は自律神経のはたらきによって左右交互につまるようになっているため、まずは通っている鼻からスプレーし、つまっている方の鼻は通るのをなるべく待ってから点鼻しましょう。
点眼薬
かゆみや充血など目の症状には点眼薬が処方されます。点鼻薬と同じく、局所に直接成分が届くため、全身への副作用を減らせます。
1.点眼後はまばたきしない
点眼後はそのまま目を閉じ、1分ほどしばらくじっとしておきましょう。何度もまばたきしてしまうと、薬の成分が流れてしまいます。
2.コンタクトレンズは外して点眼する
点眼薬には防腐剤が含まれている関係で、コンタクトレンズを装用している場合は、外してから点眼しましょう。薬の成分がレンズに悪影響を与えたり、目の障害を引き起こしたりするおそれがあります。
しかし、コンタクトを装着したまま点眼できる薬もありますので、お医者さんに相談してみましょう。
薬を使った初期療法で花粉症に先手
一般的に病気は症状があらわれてから治療しますが、花粉症においては、症状が出る前から治療する「初期療法」が認められています。
鼻アレルギー診察ガイドラインにおいても推奨され、症状が出るのを遅らせる・症状の軽減につながるといった効果が多くの方にみられます。
花粉の飛散が開始する2週間ほど前から薬物による治療を開始するのがよいとされ、抗ヒスタミン薬などが処方されます。
お住まいの地域によって飛散開始のタイミングは異なるため、そろそろ花粉シーズンかなと思ったらなるべく天気予報をチェックしておくとよいでしょう。
花粉症の薬の効果をきちんと発揮するための注意点
花粉症の薬に限りませんが、薬は誤った服用のしかたでは効果が発揮できません。場合によっては、重篤な副作用が出ることもあるため、注意が必要です。
次のような点に注意して、正しく服用しましょう。
1.症状を正確に医師に伝える
自分に合った薬を処方してもらうには、症状を正しく医師に伝えることが大切です。
どんな症状がいちばんつらいのか、どんな点に困っているかなど、詳しく伝えましょう。
また、眠気のある薬は内服したくないといった希望をつたえることも重要です。
その場で答えるのが難しいようであれば、あらかじめメモしていくのもおすすめです。
2.風邪薬との併用は避ける
花粉症シーズンは風邪をひきやすい時期でもあるため、風邪薬を飲むこともあるかもしれませんが、薬の併用は避けましょう。
なぜなら、花粉症の薬の中には、風邪薬と同じ成分が含まれているケースが多く、併用すると副作用が強まることがあるからです。
市販の風邪薬を服用した後に、病院受診する際には、医師に風邪薬を服用したことを伝えるのはもちろんのこと、市販薬の箱を提示し医師に成分表を確認してもらいましょう。
3.前シーズンに処方された薬の服用はNG
前シーズンに処方された花粉症の薬をそのまま飲んでいませんか? 薬には使用期限があるため、過ぎたものは見た目に変化がなくても服用するのは控えましょう。
4.自己判断で服用をやめない
症状が軽くなったと感じたからと、自己判断で薬を飲むのをやめないようにしましょう。
花粉症の症状は、花粉の飛散量に影響を受けます。そのため、飛散量の少ない雨の日などは、症状が軽くなることも。しかし、また晴れの日が続き、飛散量が増えると一気に症状が悪化してしまうケースも少なくありません。
基本的には花粉の飛散中は薬を継続することが推奨されます。
症状が落ち着いたと感じても、すぐ服薬をやめるのではなく、一度医師に相談するのがよいでしょう。
まとめ:花粉症は自分に合った薬を選ぼう
2月ごろから春先まで不快な症状が長く続く花粉症。
誰にでもよく効く薬はなく、それぞれの症状や体質によって薬の効果があるかどうか異なります。
飲み薬と点鼻薬と目薬を上手に組み合わせて使用することで、花粉症シーズンを乗り切りましょう。
- 病院できちんと診断を受け、自分の症状に合わせた薬を使用することが大切
- 花粉症の薬にはさまざまな種類があり、症状に合わせて処方される
- 花粉症の薬は用法・用量を守って正しく服用してこそ効果があらわれる
つらい花粉症は上手に薬と付き合って、不快な症状を抑えたいですね。
