子どもは大人に比べて抵抗力が弱く、ちょっとした気温の変化などの影響で、鼻水の症状があらわれます。
咳や熱などの症状とともにあわられる鼻水は風邪の可能性がありますが、いつまでも治らない鼻水は他の病気を引き起こしている場合も考えられます。
「鼻水くらい大丈夫」と放っておくと、思わぬ病気になったり重症化したりすることも少なくありません。
そうなってしまう前に、子どもの鼻水についての正しい知識を身につけておきましょう。
目次
そもそも、鼻や鼻水の持つ役割とは?
鼻にはにおいをかいだり、呼吸をしたりする以外にも大切な役割を担っています。
鼻から吸い込んだ外気の湿度や温度を調整して肺に送る、吸い込んだ空気に含まれるホコリなどの異物を取り除くといった、エアコンや空気清浄機のような役割も果たしているのです。
鼻の中は普段から粘膜に覆われ、さらに粘液で湿った状態に保たれています。
しかし、細菌やウイルス、花粉などが鼻の中に侵入し、粘膜が炎症を起こすと粘液が大量につくられるようになり、これが鼻水として流れます。
これは鼻に侵入してきた異物を洗い流そうとする、体のはたらきによるものです。
つまり、鼻や鼻水は体内に異物が入り込まないようガードする重要な役割を持っているというわけです。
ちなみに、鼻水などの粘液は1日に6リットル近くも作られるんだとか! 驚きの量ですよね。
つくられた粘液は、粘膜の表面にある繊毛のはたらきによって、喉の奥へと流されていき、私たちは無意識のうちに毎日飲み込んでいます。
しかし鼻や喉を守るためのはたらきなので、心配はいりません。
鼻水のタイプで原因が分かる!
鼻水と一概にいってもそのタイプはさまざま。どんな鼻水が出るかによって鼻水の原因や症状がわかります。
サラサラした透明な鼻水
「水様性鼻汁」とよばれ、花粉やハウスダストなどアレルゲンに対する反応の場合や、風邪の引き始めに出る鼻水です。
白血球と血液から滲み出る水分が混ざってつくられます。
色の薄い粘度の高い鼻水
「粘液性鼻汁」とよばれ、透明から薄い黄色で、出始めから数日経った頃に出る鼻水です。
また、慢性副鼻腔炎の疑いがある際にもみられます。
黄色や緑の粘度の高い鼻水
「膿性鼻汁」とよばれ、副鼻腔炎などの感染症を伴う場合にみられる鼻水で、色が濃くなるのは、白血球や細菌の死骸が含まれるためです。
粘液性鼻汁に比べ色が濃く、粘り気が強いことが特徴で、いやなにおいがする場合もあります。
注意すべき鼻水は?
片方からだけ出るような鼻水や血液の混じった鼻汁は注意が必要です。
異物が存在したり、腫瘍や特殊な感染症の可能性もありますので続くようであれば耳鼻科を受診しましょう。
子どもの鼻水が出やすいのはなぜ?
鼻はもともと複雑な構造ですが、子どもの鼻は小さく狭いため、さらに入り組んだ構造になっています。
そのため少しの鼻水でも鼻に溜まり、鼻水が頻繁に出てしまいます。
また、とくに小さい子どもは自分で鼻をかめないため、鼻水が溜まりやすいことも原因です。
鼻水によって引き起こされやすい病気
いつまでも続く鼻水を放っておくと、中耳炎や副鼻腔炎を引き起こすことがあります。
中耳炎
鼻水に含まれる細菌やウイルスが耳と鼻をつなぐ耳管を通じて耳に入り込み、中耳炎を引き起こしてしまうことが多くあります。
子どもの耳管は大人に比べて太くて水平で、細菌やウイルスが鼻から耳へ入り込みやすい構造になっています。
そのため中耳炎になりやすく、注意が必要です。
耳を痛がる、発熱、耳だれが出る、聞こえにくさなどの症状があれば中耳炎かもしれません。
放っておくと重症化したり難聴になったりするおそれもあるので、すみやかに耳鼻科を受診しましょう。
副鼻腔炎
鼻の穴は鼻腔とよばれますが、さらに奥にある顔の中の空洞部分を副鼻腔とよびます。
その副鼻腔に細菌やウイルスが侵入し、炎症を起こした病気が副鼻腔炎です。
色の濃い粘ついた鼻水が出る、鼻づまり、頭痛、顔の痛みなどがおもな症状です。
3ヶ月以上続くと慢性副鼻腔炎とよばれ、症状が長期化、慢性化してしまうことも多くあります。
慢性化すると治りにくくなるため、できるだけ早く治療を開始し、完治するまで根気強く通院することが大切です。
見えない鼻水、「後鼻漏(こうびろう)」に注意
鼻水は、鼻の前からだけではなく、後ろにも流れることがあります。
「後鼻漏」とよばれ、粘度の高い鼻水が鼻の奥から喉にかけて流れる鼻水のことです。
副鼻腔炎にかかっている場合に多くみられ、喉に違和感や不快感を覚えます。
さらに咳や痰を引き起こしたり、息苦しさを感じたり、また細菌やウイルスが耳管を通じて耳に入り、中耳炎の原因となる場合もあります。
また、後鼻漏の場合、体を横にすると鼻水が喉に流れて、痰が絡んだような咳が出ることがあります。
鼻水がなかなか止まらない場合、就寝時など体を横にしたときに咳が出ないか注意するとよいでしょう。
かぜの後に咳が続く場合は副鼻腔炎による後鼻漏が原因のことも少なくはありません。
後鼻漏の症状や治療法については以下の記事に詳しく書かれていますので、合わせてご覧ください。
鼻水は小児科と耳鼻科、どちらを受診する?
子どもが風邪を引いた後、鼻水の症状だけが残っている場合、小児科と耳鼻科のどちらを受診させるか迷ってしまいますよね。
小児科でも、中耳炎や副鼻腔炎などある程度の診断や治療は可能です。しかし重症化してしまっている場合などは、正しい診断や治療は難しいことがあるので、耳鼻咽喉科へ受診した方がよいでしょう。
風邪を引いたと思って小児科を受診し、中耳炎や副鼻腔炎と診断されて治療を受けた場合も、もう一度耳鼻科を受診し、完治しているかどうか診てもらうのが安心できるでしょう。
子どもの鼻水はきちんとケアしてあげよう
溜まっている鼻水は細菌やウイルスの温床となり、感染症のリスクを上げることにつながります。
また鼻がつまっていると、鼻呼吸ではなく口呼吸となり、吸い込んだウイルスや細菌は直接肺へ送り込まれてしまうため、風邪や感染症にかかりやすくなってしまいます。
それだけでなく、口呼吸では眠りも浅いため、日中の眠気を誘発し、集中力の低下なども招きます。
赤ちゃんの場合はおっぱいやミルクが飲みにくくなり、成長に影響することも少なくありません。
鼻水は放っておかず、こまめにぬぐってあげましょう。
また次のような方法で、きちんとケアしてあげることも大切です。
鼻吸い器を使う
自分で鼻をかめない小さな子どもや赤ちゃんは、鼻吸い器を使って鼻水を吸い出してあげましょう。
管を通して大人が口で吸ってあげるタイプや電動タイプなど、さまざまな鼻吸い器があるので、使いやすいものを選ぶとよいですね。
粘度の高い鼻水の場合、なかなか出てこないこともあります。
そんなときには、蒸しタオルを当てた後、入浴直後など、鼻のまわりの血行がよくなっているタイミングで使うと、吸いやすくなりますよ。
ただし強く吸いすぎると、子どもの耳を痛めてしまうこともあるので注意が必要です。
部屋を加湿する
部屋が乾燥していると鼻がつまりやすくなるので、加湿器などを上手に使って、部屋の湿度を上げることも効果的です。
適度な湿度が保たれることで、呼吸がラクになり、鼻の通りもよくなります。
鼻をかませる
自分で鼻をかめる子どもなら、こまめにかませるようにしましょう。
両方ではなく片方ずつ、優しく小刻みにかむのがコツです。
強くかむと耳や鼻の粘膜を痛めることもあるので、注意しましょう。
子どもに鼻のかみ方を教えよう
3歳を過ぎたくらいであれば、自分で鼻をかめるようになります。
簡単な練習方法を紹介しましょう。
- ティッシュを少し大きめに丸めて片方の鼻の穴につめる
- 大人がティッシュをつめていない方の鼻をふさぐ
- ティッシュを詰めた方の穴から息を出しティッシュを飛ばす
自分で鼻をかめないのは、鼻から息を出す感覚がつかめないことが原因です。
この方法なら、ティッシュを飛ばそうとすることで自然と鼻から息を出せるようになります。
ただし、丸めたティッシュが鼻の奥に詰まってしまうと危険なので、必ず大人と一緒におこなうようにしましょう。
まとめ
いつまでも止まらない子どもの鼻水を放っておくと、風邪や感染症のリスクも高くなります。
鼻水は風邪や感染症だけでなく、最近では花粉症や鼻炎が原因となっている子どもも少なくありません。
- 鼻水は体内に異物が入り込まないようにガードする役割を担う
- 鼻水の色や状態で体調や病気が予想できる
- 子どもの鼻水は耳鼻咽喉科へ受診
鼻水が止まらない、色が濃くて粘っこい鼻水が出るなどの場合には、できるだけ早くかかりつけの耳鼻咽喉科を受診しましょう。