今や日本人の2人に1人は何らかのアレルギーを持つといわれています。
花粉症や鼻炎など身近なアレルギーの症状に悩まされる方も多いのではないでしょうか。
近年では子どものアレルギー疾患も増加傾向にあり、親子で悩むケースもあるようです。
今回はアレルギーの原因物質であるアレルゲンや発症のしくみ、代表的なアレルギー疾患などについて詳しく解説します。
目次
アレルギーの原因「アレルゲン」とは?
アレルギー反応の原因となる物質のことを「アレルゲン」や「抗原」と呼びます。
代表的なアレルゲンとしては、
- スギやヒノキなどの花粉
- ペットの毛
- ダニ
- ハウスダスト
などが挙げられます。
また、食物アレルギーのアレルゲンは非常に種類が多く、場合によっては重篤な症状を引き起こすことも。
とくに以下の特定原材料の7品目については食品表示義務が課せられています。
- 卵
- 小麦
- 乳
- そば
- ピーナッツ
- えび
- かに
ほかにも、以前は見られなかった果物や野菜などでも食物アレルギーの症状を引き起こすことが増えています。
アレルギーのしくみ
アレルギーは、もともと私たち人間が持っている「免疫機能」の誤作動ともいうべきしくみで引き起こされます。
本来の免疫反応とは、体内に侵入してきたウイルスや細菌に対してはたらくものです。
しかし、何らかの要因によって、花粉や食べ物など身体には害がないはずの物質に対しても免疫機能がはたらき、身体の外へ追い出そうとします。
その結果としてさまざまな症状を引き起こし、アレルギーとなってしまうのです。
おもなアレルギー疾患の原因と治療法
アレルギーとひと口に言っても、その疾患はさまざまです。
ここでは代表的なアレルギー疾患の原因や症状、治療法について解説します。
気管支喘息
ダニやハウスダストなどを原因として(原因が特定できないこともある)、気管支に慢性的な炎症が起こるアレルギー疾患です。
気候や運動、ストレスなどのちょっとした刺激に過敏に反応して気道が狭くなりやすく、ゼーゼーと胸から聞こえる喘鳴(ぜんめい)や息切れ、咳、胸が締め付けられるなどの症状があらわれます。
治療では気道の炎症を鎮めるための薬を長期間に渡って服用する必要があります。
発作の際には気管支拡張薬を用い、症状をおさえます。
アトピー性皮膚炎
皮膚のバリア機能が弱いなど、生まれ持った体質に加え、ダニやハウスダストなどのアレルゲンなどの環境条件が揃うことで発症するアレルギー疾患です。
強いかゆみが特徴で、 顔や首、ひじの内側やひざの裏など柔らかい部分や体幹に皮疹(皮膚にあらわれる発疹)がみられれます。
軽症の場合は乾燥してかゆがる程度ですが、かき壊して悪化してしまうことも。
皮膚がむけてしまいジュクジュクになったり、色素沈着を起こしたりすることもあります。
炎症に対してはステロイド外用薬などを用い、並行してスキンケアを保湿剤などでおこなう治療方法が一般的です。
完全に治すことを目的とするより、症状はありつつも軽く、日常生活に支障がない状態を目指して治療をおこないます。
アレルギー性鼻炎
ダニやハウスダストなどのアレルゲンが身体に侵入し、それらを排除しようと発症するのがアレルギー性鼻炎です。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりが三大症状で、風邪と間違うこともめずらしくありません。
鼻づまりを原因とした喉の乾燥や痛みや頭痛、夜なかなか眠れず睡眠の質が低下することによる不眠やイライラ、だるさなどが引き起こされることもあり、生活全般に影響するケースも多くみられます。
抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬といった、アレルギーを抑える薬や、鼻症状を抑える鼻噴霧用のステロイド薬などを使った薬物療法が一般的です。
また、症状の重症度によっては手術による治療を検討する場合もあります。
アレルギー性鼻炎の症状や治療法については、以下の記事に詳しく書かれていますので合わせてご覧ください。
花粉症
スギやヒノキの花粉などをアレルゲンとする、季節性のアレルギー鼻炎です。
季節性とはいえ、近年ではスギやヒノキの他にもブタクサやヨモギなどで症状があらわれるケースも増え、一年を通して花粉症の患者さんがみられます。
通常のアレルギー性鼻炎と異なり、結膜炎や咽頭炎など鼻のほかにも症状が出る場合が多いのが花粉症の特徴です。
一般的にアレルギー性鼻炎と同じような薬物療法をおこないます。
また、花粉症においては原因となるアレルゲンを少しずつ体内に取り込み、体に慣れさせていく「減感作(免疫)療法」という治療方法を採用することもあります。
減感作(免疫)療法の1つである舌下免疫療法については以下の記事に詳しく書かれていますので、ぜひご覧ください。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は、ハウスダストやダニ、ペットの毛などをアレルゲンとする通年性と、スギやカモガヤ、ブタクサなどをアレルゲンとする季節性の疾患とに分けられます。
いずれの場合も目のかゆみや充血、異物感や目やに、まぶしさを感じるといった症状が特徴です。
治療は抗アレルギー点眼薬でアレルギー症状を抑えますが、治らない場合はステロイド点眼薬を使うこともあります。
また、目にあらわれるアレルギー疾患には他にもあり、とくに学童期の男子に多い「春季カタル」は重症化しやすく、注意が必要です。
激しい目のかゆみや白い糸状の目やにが多く出たり、角膜にびらんや潰瘍ができたりすることもあり、痛みを伴うことも。
通常のアレルギー性結膜炎と同じように抗アレルギー点眼薬やステロイド点眼薬、免疫調整点眼薬などを使い、場合によっては手術をおこなうこともあります。
食物アレルギー
卵や小麦、甲殻類などの特定原材料7品目のほかにも、さまざまな食材をアレルゲンとして食物アレルギーは引き起こされます。
もっとも多くみられる症状はかゆみや蕁麻疹、むくみといった皮膚症状です。
また、腸からアレルゲンが吸収されて血液とともに全身をめぐり、くしゃみや鼻水といった呼吸器症状、目の充血や口の中・唇などの違和感、腫れといった粘膜症状、下痢や吐き気、嘔吐といった消化器症状などがあらわることもあります。
小さな子どもに食物アレルギーが多いのは、消化吸収の機能が未熟なため、食べた物を異物として認識してしまうためです。
そのため、成長するにつれて、症状が出なくなる場合も多くみられます。
食物アレルギーの治療では検査によってアレルゲンを確定することが重要。さらにアレルギー専門医からの栄養食事指導を受ける必要があります。
気をつけたいアレルギー症状「アナフィラキシー」
アレルギー反応のなかで、とくに気をつける必要があるのが「アナフィラキシー」です。
アナフィラキシーとは、それらのアレルゲンを摂取してから、皮膚症状だけでなく呼吸器や消化器に強い症状があらわれる状態を指します。
要因として、特定の食物(鶏卵、乳、小麦、そば、ピーナッツなど)、蜂などの昆虫の毒や薬剤などが挙げられます。
また、血圧が低下し、意識障害を伴うケースを「アナフィラキシーショック」と呼び、場合によっては死に至ることもあり、非常に危険です。
多くの場合、アレルゲン摂取後数分ほどで症状があらわれますが、30分以上経ってからのケースも。
食物アレルギーを持ち、アナフィラキシーを起こす可能性が高い場合、「エピペン」と呼ばれる、アナフィラキシーの症状を一時的に和らげる自己注射薬を医師から処方されることもあります。
アレルギーを疑う症状が出たらどうする?
アレルギー疾患を疑われるような症状があらわれた場合、安易な自己判断はNGです
自己判断による市販薬での対処などは悪化してしまうおそれがあります。
喘息であれば呼吸器内科や子どもの場合は小児科へ、鼻炎や花粉症は耳鼻咽喉科などのように専門医の診察を受けることが重要です。
また、アレルギー疾患は「気管支喘息と食物アレルギー」などのように併発するケースも少なくありません。
そういった場合には、アレルギー疾患全般を取り扱う「アレルギー科」を受診するのもおすすめです。
まとめ
アレルギー疾患は文明病などと呼ばれることもあり、私たちを取り巻く環境の変化が原因だともいわれています。
必ずしも完治するとは限らず、生涯に渡って症状と付き合っていかなければならない場合もあります。
できるだけ早い段階で治療にとりかかり、正しい知識とともに対処するのが重要です。
- アレルギーの原因となるアレルゲンは非常に数が多い
- アレルギー反応は免疫機能の「誤作動」によって起きる
- アレルギー疾患は専門医の診断を受け治療を受けることが重要
気になる症状がみられる場合には、専門医を受診することをおすすめします。