「次亜塩素酸」とは塩酸や食塩水を電気分解して得られる成分のことです。
あまり耳慣れない成分ですが、水に溶かすことで「次亜塩素酸水」となって殺菌や消毒の効果が得られる上に安全性も高いため、今こそ知っておきたいですよね。
また、「次亜塩素酸」と聞くと、ハイターなど家庭の塩素系漂白剤を使って作れる消毒剤「次亜塩素酸ナトリウム」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、じつは別物。
混同して使うと危険な場合もあるため、注意が必要です。
今回は次亜塩素酸をテーマに詳しく解説しましょう。
目次
次亜塩素酸とは?
次亜塩素酸とは塩酸や食塩水を電気分解したもののことです。
多くの場合、水道水で希釈して「次亜塩素酸水」として使用し、殺菌や消毒のために用いられます。
次亜塩素酸水は作るプロセスから「電解水」と呼ばれることもあり、こちらの名称の方が一般的かもしれませんね。
この次亜塩素酸水、じつはカット野菜の洗浄や医療機器の消毒、農薬などとしても使われており、意外と身近な存在なんです。
最近では公共交通機関や観光施設などの空間消毒にも使われることが増えています。
厚生労働省においても次亜塩素酸水は食品添加物の認可を受けており、その安全性はしっかりと保証されています。
無色の液体で見た目には水と変わらず、わずかに塩素のにおいが感じられるくらい。
同じ消毒液であるアルコールなどと比較すると手荒れなどを引き起こしにくく、人体への影響も少ないのが特徴です。
次亜塩素酸水の特徴
つづいて次亜塩素酸水の特徴について、さらに詳しくみていきましょう。
1.高い殺菌力
次亜塩素酸水にはアルコールなどの消毒液に比べて、さらに高い殺菌力があります。
O-157やインフルエンザウイルス、ノロウイルスなどに効果があり、約10秒で不活化し殺菌できるという即効性も特徴です。
さらにセレウス菌やボツリヌス菌といった熱に強い食中毒菌も殺菌し、一般的な消毒液であるアルコールの届かない範囲まで効果を発揮します。
2.人体や環境に負荷が少ない
次亜塩素酸水は私たちの身体や、環境への負担が少ないのも特徴です。
アルコール消毒のように肌荒れを起こす心配も少なく、万が一体内に入ってしまっても残留するおそれがほぼないため、小さな子どもがいる家庭でも安心して使えます。
また2020年6月には経済産業省より、有効塩素濃度35ppm以上の次亜塩素酸水での消毒もアルコール消毒と同じく、新型コロナウイルス感染症予防に効果的であると発表がありました。
つまり、次亜塩素酸水の消毒はインフルエンザウイルスだけでなく、新型コロナウイルスにも効果があるのです。
インフルエンザと新型コロナウイルスの予防法については、以下の記事に詳しく書かれていますのでぜひご覧ください。
次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)との違い
ノロウイルスなどの対策として、家庭でハイターなどの塩素系漂白剤を薄めて消毒液を作るをご存じの方も多いのではないでしょうか。
家庭内での手軽な殺菌方法として、さまざまな公的機関でも推奨されていますよね。
これは塩素系漂白剤に含まれる「次亜塩素酸ナトリウム」を使った方法で、次亜塩素酸水と同じように殺菌や消毒の効果があります。
どちらも名前が似ているため、同じものと思ってしまいますが、次亜塩素酸水が「次亜塩素酸」を主成分とするのに対し、次亜塩素酸ナトリウムは「次亜塩素酸イオン」が主成分です。
しかし、殺菌力は次亜塩素酸の方が次亜塩素酸イオンよりも約80倍高いとの研究結果もあります。
さらに、次亜塩素酸ナトリウムは強いアルカリ性のため手荒れや金属への腐食、環境への負荷も引き起こしやすいといったデメリットも。
もちろん手袋やマスクを装着する、最後にしっかり水拭きするなど安全性を確保した上で次亜塩素酸ナトリウムを使えば、多くの場合家庭でも問題が起こることはありません。
しかし、次亜塩素酸水なら次亜塩素酸ナトリウムを使うよりも安全に、高い殺菌効果を得られるメリットがあるのです。
次亜塩素酸水の種類
次亜塩素酸水は含まれる有効塩素濃度やpH値によって3つに分類され、それぞれに用途も異なります。
- 強酸性次亜塩素酸水:pH2.7以下・有効塩素濃度20~60ppm
- 弱酸性次亜塩素酸水:pH2.7~5・有効塩素濃度20~60ppm
- 微酸性次亜塩素酸水:pH5~6.5・有効塩素濃度10~80ppm
強酸性次亜塩素酸水は医療機関で内視鏡などの洗浄に使われるなど、業務用がおもな用途です。管理が難しいので、一般的な消毒や殺菌には使われません。
家庭や公共機関、観光施設などで用いられるのは弱酸性・微酸性の次亜塩素酸水です。
とくに微酸性次亜塩素酸水は強酸性・弱酸性の次亜塩素酸水に比べて、比較的管理がしやすく、人体への影響も少ないため安心して使えます。
次亜塩素酸水の使い方
家庭用の次亜塩素酸水はまだあまり一般的ではないものの、近年では流通量が増えてきました。
希釈して使う大容量タイプや使いやすいボトルタイプなどさまざまあり、使いたい方法によって選べます。
使い方はアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液と同じように、殺菌したい場所に直接スプレーしたり、拭いたりすればOK。
手荒れの心配も少ないため、次亜塩素酸水を使って直接手を洗って消毒することも可能です。
また、専用の加湿器や噴霧器を使えば、空間全体の除菌にも。消臭効果もあるため、ペットやトイレ、キッチン、靴箱などの気になるニオイの対策にも使えます。
次亜塩素酸水を使う際の注意点
便利な次亜塩素酸水ですが、使う際にはいくつか注意点があります。
誤った使い方では効果が発揮できなかったり、安全性が保証できなかったりするため、正しい方法で使うことが重要です。
殺菌したい場所を掃除してから使う
殺菌したい場所は前もって汚れを拭き取っておくなどしておきましょう。
これは次亜塩素酸水は有機物に触れるとすぐに反応し、自らも分解してしまうためなんです。
菌やウイルスに触れる前に付着している汚れに反応してしまうと、せっかくの殺菌効果が十分に発揮しにくくなってしまいますよね。
まずはウェットティッシュやタオルなどで汚れを拭き取り、その後次亜塩素酸水を使って拭いたり、スプレーしたりしましょう。
保存方法に注意する
次亜塩素酸水は周囲の環境によって性質が左右されやすく、不安定なため、保存方法に注意が必要です。
医療現場などで使われる強酸性次亜塩素酸水はとくに管理が難しいため、次亜塩素酸水そのものではなく製造装置を設置し、かけ流しで使う方法が一般的。
家庭用として使える微酸性次亜塩素酸水は周囲から影響を受けにくいパッケージで市販されている場合が多く、未開封であれば比較的長期の保存が可能です。
家庭で使いかけの次亜塩素酸水を保管する場合も、遮光・密閉できる容器に入れる、涼しい場所で保管するなど心がけるようにしましょう。
次亜塩素酸ナトリウムと間違わない
次亜塩素酸水と間違い、次亜塩素酸ナトリウムを人体へ向けてスプレーしたり、加湿器に入れたりすると思わぬ被害につがなるため注意が必要です。
前述したように次亜塩素酸ナトリウムが含まれる家庭用の塩素系漂白剤を薄めて作る消毒液と、次亜塩素酸水は性質が異なります。
必ず確認してから使うようにしましょう。
まとめ
次亜塩素酸を主成分とする次亜塩素酸水は高い殺菌力を持ち、さまざまなウイルスや菌に効果を発揮します。
アルコールや次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)を使った殺菌・消毒よりも安全性も高く、子どものいる家庭でも安心して使えるのがうれしいですね。
- 次亜塩素酸水はO-157やインフルエンザウイルス、ノロウイルスに効果
- 次亜塩素酸水は人体や環境への負荷が少ない
- 次亜塩素酸水は医療機器や食材の消毒にも使われ安全性が高い
インフルエンザなどの感染症、食中毒の予防に次亜塩素酸水を上手に活用し、毎日健康に過ごしたいですね。